「セル」をめぐる冒険
2007/11/28 新潮社からスティーヴン・キングの「セル(上・下)」が発売になった。
「セル(上・下)」
スティーヴン・キング/著
白石朗/訳
藤田新策/カバー装画
2007/11/28/配本
2007/12/01/初版発行
気になる点がいくつかあるので、簡単に紹介したいと思う。
■「セル」のカバー装画
「セル」の装画は、藤田新策氏の手によるものだが、上下巻を並べると、1枚の画になるようにデザインされている。
「セル」の上下巻の表紙画像を並べて表示して見るので、確認していただきたい。
中央上部に横たわる女性の上半身と下半身が、下巻と上巻に分かれている。
また、中央の携帯電話も上巻と下巻に分断されているのが確認できる。
上下巻で1枚の画になるようにデザインされた表紙カバーと言えば、新潮文庫版「クリスティーン」(装画は岡本三紀夫)が印象的だが、藤田新策では新潮文庫版「デスペレーション」、「レギュレーターズ」、「骨の袋」そして大作「ドリームキャッチャー」(1〜4巻)が想起される。
余談だが、扶桑社ミステリー文庫の一連の細長い画も、実は1枚の画として構成されている。
と言うか、バラバラのイメージをひとつの画として描き、それを分断して各巻の表紙のカバーにしている、と言う事。
■献辞「リチャード・マシスンとジョージ・ロメロに」
本作「セル」は、リチャード・マシスンとジョージ・ロメロに捧げられている。
ジョージ・A・ロメロとは、言わずと知れた「ゾンビ」シリーズの巨匠である。
キング関係では、「クリープショー」(監督)、「クリープショー2」(脚本)、「ダーク・ハーフ」(監督・脚本)の製作に絡んでいる。
また「回想のビュイック8」の当初の監督候補でもあった。
リチャード・マシスンとは、最近ではウィル・スミス主演の「アイ・アム・レジェンド」の原作者として知られているが、「アッシャー家の惨劇」、「恐怖の振子」、「黒猫の怨霊」等1960年代のエドガー・アラン・ポー原作、ロジャー・コーマン監督作品の脚本家であるとか、スティーヴン・スピルバーグの「激突」、涙腺破壊映画「ある日どこかで」、「縮みゆく女」等数々の映画化作品の原作者として有名である。
この2人に献辞を捧げていると言う事は、おそらく「アイ・アム・レジェンド」(「地球最後の男」)と「ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド」の共通プロットが本作「セル」に登場するのではないか、と思える次第。
■「スタンド・バイ・ミー」97万部!・・・・
「セル」上巻の帯にこんな表記がある。
97万部! 「スタンド・バイ・ミー」
48万部! 「ゴールデンボーイ」
7万部! 「第四解剖室」
10万部! 「幸運の25セント硬貨」
しかし、「スタンド・バイ・ミー」は売れてますね。
映画の効果か、「新潮文庫の100冊」の効果かわかりませんが、もうすぐ100万部ですね。
おそらくキングの翻訳史上一番売れているのではないか、と思います。
で、気になるのは「新潮文庫の100冊」。
新潮社が何を考えているのか解りませんが、2007年版「新潮文庫の100冊」では「スタンド・バイ・ミー」が(2006年に)外れて、「ダーク・タワーIガンスリンガー」が入っているんです。
新潮社は「スタンド・バイ・ミー」位まで「ガンスリンガー」を売ろうとしているのでしょうか。個人的にはちょっと難しいんじゃないかな、と思います。
あと「ゴールデンボーイ」は映画「ショーシャンクの空に」人気で売れてるんだと思いますが、新潮文庫の「ゴールデンボーイ」は、イラスト版と映画「ゴールデンボーイ」タイアップ版、映画「ショーシャンクの空に」タイアップ版のと3種類あるんですから、タイミングは外れてますが、映画「ショーシャンクの空に」タイアップ版に戻したらどうでしょうかね。
新潮文庫の「スタンド・バイ・ミー」も、映画タイアップ版と藤田新策のイラスト版、新潮文庫20世紀の100冊版がありますしね。
個人的には、「スタンド・バイ・ミー」や「ゴールデンボーイ」がどれくらい売れているかより「ダーク・タワー」シリーズがどれくらい売れているのかが知りたいですね。
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