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2008/04/17

「ルインズ 廃墟の奥へ」

スティーヴン・キング絶賛の「ルインズ 廃墟の奥へ」を読了した。

「ルインズ 廃墟の奥へ」
は、ご承知のように「シンプル・プラン」で世界中を驚愕させたスコット・スミスの長編第二作目の小説である。

待ちに待ったスコット・スミスの新作だぜ、と言う観点から、「ルインズ」を手に取った方も多いだろう。

しかしながら、本作「ルインズ 廃墟の奥へ」は、「シンプル・プラン」でスコット・スミスファンになった読者の皆さんの期待に応える作品ではなかったようだ。

と言うのも、多くの読者がスミスに期待するのは「ルインズ」のようなホラーではなく「シンプル・プラン」のようなサスペンスだと思われるからである。

だからと言って「ルインズ」がつまらない作品か、と言うとそうではなく、非常に面白いホラー作品に仕上がっている。

物語は、ある男女のグループが間違った場所に行ってしまい、とんでもない目にあってしまう、と言う「悪魔のいけにえ」をはじめとした多くの作品と同様のコンセプトが使用されている。

私見だが、本作「ルインズ」が優れていると思える第一の理由は、怪異の原因や理由が説明されていない点だと言える。
ホラーの物語の中で、怪異の原因や事由が解明されてしまった時点で、その物語はホラーから単なる勢力争いの物語へ矮小化されてしまう。

例えば吸血鬼の物語があり、その吸血鬼の正体が、なんらかのウィルスに感染したただの人間だった、と言う事由が物語の中で明らかになったとしたら、あとは人間と吸血鬼(ウィルスに感染した人間)との争いがあるだけで、その物語は最早ホラーだとは言えない物語になってしまう訳だ。

また、本作「ルインズ」は極限状態におかれた人々のシミュレーション小説、と言う見方もできる。
特に、多くの小説や映画が避けて通るような出来事を真っ向から描写する勇気も感じてしまう。

余談だが、1980年代以降に、登場人物が物語の中でセックスをすると、比較的早いタイミングで殺されてしまうシークエンスが含まれたホラー映画がたくさん製作されたのをご存知だと思うが、これは「セックスをしたら死んでしまう」と言う事からエイズのメタファーになっているのだが、本作「ルインズ」でもその伝統が踏襲されているのが興味深い。

さらに余談だが下巻の314ページにサディアス・フリーモントと言う人物(?)が登場するのだが、この名前、どこかで聞いた事があるなと思う方も多いのではないかと思う。
私見だが、「ダーク・ハーフ」に登場するサディアス・ボーモントから名前が取られているのではないか、と邪推してしまう。

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