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2008/05/06

「カイバ」をめぐる冒険

新感覚SFラブサスペンス・アニメーション「カイバ」 WOWOWで絶賛放映中の新感覚SFラブサスペンス・アニメーション「カイバ」だが、スティーウン・キングの「ドリームキャッチャー」を彷彿とさせる描写が登場する。

「カイバ」
原作:湯浅政明、マッドハウス
監督・シリーズ構成:湯浅政明
キャラクターデザイン:伊東伸高
音響監督:百瀬慶一
音楽:吉田潔
アニメーション制作:マッドハウス
オフィシャル・サイト

記憶は魂か霊魂か
記憶はデータ化され蓄積できる世界
肉体が滅んでも、より良い体へ記憶を移し替え、不死となる
嫌な記憶を消去、楽しい記憶をダウンロード
しかしそれらは上流層に限られた

そんな世界を主人公カイバは記憶を失ったまま別の体に乗って旅を続けていた

(「カイバ」オープニング・ナレーションより引用)

「カイバ」の舞台は、人間の記憶をデータ化(記憶チップ化)して、別の体への乗り換えができるようになった世界。記憶の違法改ざんや、記憶の抜けた体の売買も行われている。その中で記憶を失った主人公が体を次々と乗り換えながら宇宙を巡り、記憶を取り戻していくストーリーだ。

タイトルは、脳の中で記憶に関係する部位の「海馬」が由来だ。「脳死問題の議論を見ても、科学で人間の仕組みが明らかになっていくにつれ、体がただのハードのように見られがちになった気がする。人間はそれだけではないはず、ということを問う作品を作りたかった」

格差社会やセックスなど、アニメではタブー視されがちな表現にも踏み込んだ。カイバの世界では、金持ちと貧困層は雲に隔てられて暮らす。雲の上の人間は、金で体を買って永遠に生き続けることができ、貧しい人々は体や記憶を金の代わりに奪われる。
(WOWOWのSFアニメ「カイバ」の監督 湯浅 政明(ゆあさ まさあき)より一部引用)

さて、ここからが今日の本題である。

「カイバ」では、前述のように人々の記憶をデータ化し、そのデータ化された記憶チップを他人の体に移植することができる。

また、人々の頭の中の記憶(「記憶の部屋」)を外部から覗き見る装置も一般化されているとともに、その装置を使用することにより、その人物の「記憶の部屋」に物理的に侵入することもできるのだ。

その「カイバ」の「記憶の部屋」(記憶の内部/頭の中)のイメージが、キングの「ドリームキャッチャー」に登場する「記憶倉庫」と類似するイメージで描写されているのだ。

具体的に言うと、「カイバ」における「記憶の部屋」には、--勿論対象の人物によって広さや形態に差異はあるが--、多くの棚があり、それらの棚に書籍の形態で記憶が蓄積されている。

そして「記憶の部屋」に侵入した人物は、その書籍を閲覧することにより、その人物の記憶を自らの記憶と同様に再体験することができる。

「カイバ」の「記憶の部屋」と「ドリームキャッチャー」の「記憶倉庫」のイメージは発想としてはそれほど突飛なものではなく、誰でも想像できる種類のイメージではあるが、もしかしたら、湯浅政明はキングの「ドリームキャッチャー」のビジュアル・イメージの影響を受けているのかも知れない。

ところで余談だが、湯浅政明については「マインド・ゲーム」が最高に素晴らしい。

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