コミック版「屍鬼」発売!
2008/07/04 集英社よりコミック版「屍鬼」の第一巻、第二巻が同時にリリースされた。
「屍鬼」
著者:藤崎竜
原作:小野不由美
発売日:2008/07/04
価格:460円
「屍鬼」は、ご承知のように、1998年に新潮社から出版された小野不由美のホラー小説である。
わたしは1998年当時、今は亡き、渋谷の東急文化会館の5Fの三省堂書店で「屍鬼」の上巻の1ページにタイトルと共に印刷された言葉(献辞)に驚愕したのを覚えている。
そこには、こう書かれていた。
-----To 'Salem's Lot
と。
写真上部はハードカバー版「屍鬼(上)」の1ページ目、下部は文庫版「屍鬼(一)」の3ページ目。
"'Salem's Lot"とは、ご承知のように、スティーヴン・キングの「呪われた町」の原題である。
その辺については、文庫版「屍鬼(五)」に宮部みゆきの解説が収録されているので、そちらを参照いただきたいのだが、宮部みゆきはその解説の中で、文庫版のあとがきの解説にも拘らず、文庫版ではなくハードカバーを買え、と説いている。以下該当部分を引用する。
でも、ただ凄いとか面白いとか素晴らしいとかの賛辞だけでは足らず、読むものに一種の畏怖心さえも抱かせるような、他の小説と同じ言葉で賞したくないと感じさせるような小説は、やっぱりごくごく少ないものです。
「屍鬼」は、そうした希少な小説のうちのひとつです。そしてそういう小説の持つ、まるでブラックホールみたいに読み手の魂を吸い込んでしまう求心力、曰く言い難い密度みたいなものを「書籍」の形で実体化させるためには、やっぱりハードカバーの方がいい。文庫版だと、書籍の体裁が小説の放つエネルギーを支えきれないのです。書籍の形が内容である小説に押し負けてしまって、その小説が作品内に作り出している異世界を、現世に表出しきれないのです。
正に、仰る通りである。
わたしは、結構沢山の小説を読んでいる方だと思うのだが、宮部みゆきの言うところの「ブラックホールみたいに読み手の魂を吸い込んでしまうハードカバー作品」を読んだ経験はあるか、と振り返って見て思いつくのは、宮部みゆきの言う通り「屍鬼」、そして「屍鬼」と同様のボリュームを持つ「IT」だけだった。
これらのハードカバー版は、圧倒的なボリュームとか、圧倒的な禍々しさとか、藤田新策の装画を含め美術品のような仕上がりの形態とか、魔力のような磁力のような求心力とかを備え持った、なんだかわからない魅力を持った書籍に仕上がっている、と思えてならないのだ。
コミック版の「屍鬼」の話をするところだったのだが、なんだか訳がわからない話になってきたので、この辺にしておくが、機会があれば、小野不由美の「屍鬼」を読んでいただきたい、と言うところである。
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