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2008/12/25

「此よりは荒野」をめぐる冒険

水無神知宏の「Gunning for Nosferatus 1 / 此よりは荒野」を読んだ。

で、思ったのは本作「此よりは荒野」は、スティーヴン・キングの「ダーク・タワー」シリーズの影響下にあるのではないか、と言う事。

つまり、わたしは「此よりは荒野」と言う作品は、和製「ガンスリンガー」時代の幕開けを告げるエポック・メイキングな作品に成長する作品なのではないか、と妄想してしまう訳だ。

「Gunning for Nosferatus 1 / 此よりは荒野」
著者:水無神知宏
発行所:小学館/ガガガ文庫
発行:2008/11/23 初版第1刷発行

19世紀末、アメリカ西部。近隣の村とともに家を襲われ、母と妹を亡くしたアラン・グリーンウッド。彼を助けた少女は言った。襲撃者は「不死者秘儀団」だと。
炎に包まれる家を前に、アランは復讐を誓う。

それから3年。保安官の叔父のもと、キングスウェイ市で保安官補となっていたアランは、かつての少女「屍人殺しのステラ」の二つ名で呼ばれる凄腕のガンスリンガーと再会する。その間に埋められぬ力の差を感じ、自嘲するアラン。

そんな折、街が人狼に襲撃され・・・・。いまふたりの復讐劇が幕を開ける!!

(「Gunning for Nosferatus 1 / 此よりは荒野」背表紙よりほぼ引用)

本書「此よりは荒野」は所謂ライトノベルにカテゴライズされる作品である。
しかしながら、わたしはライトノベルをほとんど読んだ事が無い。
つまり「此よりは荒野」がわたしに取っての初ライトノベルと言っても良い位の状況であることを先ずご理解いただきたい。
※ 小野不由美の「十二国記」シリーズは読んでるけど・・・・ね。

閑話休題。
先ず驚いたのは本書
「此よりは荒野」舞台設定である。
舞台は、人狼や吸血鬼、夢魔が跋扈する19世紀末のアメリカ西部。そして主人公は拳銃使い(ガンスリンガー)。

つまり、本作のコンセプトは、「ダーク・タワー」同様、西部劇とファンタジーの融合なのである。
わたしは寡聞にして知らないのだが、国内の作品で西部劇とファンタジーの融合を真正面から描いた作品は--おそらく、--ないのではないか、と思う。

次に驚いたのは本書「此よりは荒野」地の文である。

翻訳物を読んでいる読者諸氏なら、おそらく気付いていただけると思うのだが、本書の地の文は、例えば英語で書かれた物語を、無理矢理日本語に翻訳しているような印象を与えることに成功している。
つまり、翻訳物を読んでいる読者の方々にとって本書は、翻訳物のパロディとしても楽しめる構造を持っているのだ。

また、ライトノベルの範疇を超えた「格調高い」地の文も楽しめる、と言うオマケ付きである。
ライトノベルをほとんど読んだ事がないわたしに、ライトノベルの範疇がわかるかどうかは別として、本書の地の文は、小説として評価できるレベルに達していると思う。

またアクション・シークエンスのリズムと言うか圧倒的なスピード感には舌を巻く思いである。

一方、本書の会話文は残念ながらライトノベル特有の語調で、わたしとしては著者の後頭部を後ろから蹴り飛ばしたくなるような恥ずかしい会話が続く。
しかしながら、これはライトノベルの宿命とも言えるもので、そうしなければ出版させてもらえない、言わばライトノベルのルールみたいなものなので、割り引いておく。

とは言うものの、前述のように地の文が翻訳物を意識しているのならば、逆説的に、恥ずかしいセリフの応酬を、脳内で一旦英語に翻訳してから読み進める、と言う読書法もあり、だと思う。

ちょっと持ち上げ過ぎのきらいは否定できないが、騙されたと思って読んでみると結構楽しい思いが出来るのではないか、と思う。

余談だが、主人公アランは父親の顔を忘れてはいないぞ。

なお、コチラで本書「此よりは荒野」の冒頭部分の試し読みが出来る。
関心がある方は先ずこちらでお試しいただきたい。

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コメント

ウェスタンとファンタジーの融合では菊地秀行の「ウェスタン武芸帳」シリーズも面白いですよ。
西部に沖田総司、恐竜に大サソリ、はては棺桶の伯爵まで、ぞろぞろ出てきます。ただ。1980年代のソノラマ文庫なので入手が難しいかもしれません。

漫画だと白泉社の「ブラスナックル」が迫力です。ベルゼルクの西部版って感じですが、主人公はボクサーで怪物殴り殺します。

投稿: KEAMONATOR | 2008/12/26 14:15

> スティーヴン・キングの「ダーク・タワー」シリーズの影響下

宮部みゆきや小野不由美も、スティーブ・キングのオマージュ作品を書いてるそうなので、そういうこともあるかもしれないですね。

西部劇+ファンタジーなら、ゲームのRPGで「ワイルドアームズ」というのがありますね。たしか、ノベライズもされてたはず。これは、なんとなくそれを彷彿とさせるような作品でした。

この作品、ネットでは結構評判いいので、打ち切りにならないためにも、売れてくれると嬉しいですね。

投稿: ub7637 | 2009/01/04 14:46

KEAMONATORさん、こんにちは、コメントありがとうございました。

そうですか、日本にもいろいろあるんですね。ちよっと調べたんですが、残念ながら、「ウェスタン武芸帳」も「ブラス・ナックル」も絶版扱いのようですね。


ub7637さん、こんにちは、コメントありがとうございました。

宮部みゆきや小野不由美と一緒に並べて語られるとは、「此よりは荒野」の作者も喜んでいる事でしょう。

>打ち切りにならないためにも、売れてくれると嬉しいですね。

そうですね、出来れば是非続けて欲しいと思っています。

ビジュアル的にも上手くやれば、アニメ化の芽もあるのではないか、とも思ってしまいます。

これからもよろしくお願いします。

投稿: tkr | 2009/01/04 22:56

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