「僕らのミライへ逆回転」をめぐる冒険
今日は、2008/02/22のエントリー「ミシェル・ゴンドリーとジャック・ブラックが映画の先達に捧げたコメディ」で紹介した「僕らのミライへ逆回転」(「Be Kind Rewind」)に関する余談。
「僕らのミライへ逆回転」
監督・脚本:ミシェル・ゴンドリー
出演:ジャック・ブラック(ジェリー)、モス・デフ(マイク)、ダニー・グローヴァー(フレッチャー)、ミア・ファロー(ファレヴィチ)、メロニー・ディアス(アルマ)、シガーニー・ウィーヴァー(ミス・ローソン)
トラブルメーカーのジェリー(ジャック・ブラック)とつぶれかけたレンタルビデオ店(Be Kind Rewind)の店員マイク(モス・デフ)は幼なじみ。
ある日突然、店のビデオから映像が消える事件が発生。何と、発電所で感電し超強力な電磁波を帯びてしまったジェリーが全ビデオを駄目にしてしまったのだ。
慌てた二人は苦肉の策で、「ゴーストバスターズ」「ラッシュアワー 2」など消えた映画を自作自演で作り直す羽目に。
しかし、驚くことにその手作りリメイク映画が町の人たちの間で大評判となり、店には長い行列が・・・・。立ち退きを迫られていた店長(ダニー・グローヴァー)は、これを見てビックリ仰天。が、この騒ぎを聞きつけてハリウッド映画の弁護士(シガーニー・ウィーヴァー)が乗り込んできた! (DVDの紹介文章よりほぼ引用)
以前のエントリーでお知らせした通り、本作「僕らのミライへ逆回転」でジェリーとマイクが勝手にリメイクする作品のひとつに、スティーヴン・キング原作、ブライアン・デ・パルマ監督の「キャリー」が含まれているのだ。(とは言ってもほんの数秒である)
本作で感じるのは、「僕ら映画ファンは映画を愛することは出来るが、映画は僕らを決して愛してはくれない」と言う事。
映画を愛してしまった映画ファンは、「永遠の片思い」を選択してしまっている、と言う事である。
この切ない現実に映画ファンが気付かされたのは、何と言っても、ミア・ファロー主演、ウデイ・アレン監督の「カイロの紫のバラ」(1985)であろう。
「カイロの紫のバラ」では、映画の登場人物が観客であるミア・ファローにあろう事か話しかけ、あまつさえスクリーンから飛び出してしまう、と言う物語が描かれている。
映画の登場人物と過ごしたミア・ファローは、エピローグでスクリーンを見つめる訳だが、そのミア・ファローの輝く表情は、現実を見つめ映画を最早ただの娯楽としてしか見ていない。
そう考えた場合、本作「僕らのミライへ逆回転」にミア・ファローがキャスティングされているのは、圧倒的に素晴らしい。ミア・ファローの、そして「カイロの紫のバラ」の映画的記憶を利用した素晴らしい効果をあげている。
映画では明確に描かれていないのだが、ミア・ファローが「僕らのミライへ逆回転」で演じたミス・ファレヴィチは、一説によると認知症を患っているキャラクターとして描かれている。
もしかしたら、「カイロの紫のバラ」のウェイトレスが年老いて「僕らのミライへ逆回転」のミス・ファレヴィチになったのではないか、つまり同一人物なのではないか、とさえ思えてしまう。
物語は予定調和的で大きなサプライズはないが、映画ファンの涙腺を破壊する効果は絶大である。おそらく、もう劇場で観る事は難しいと思うが、3月にDVDが出るのでそちらで是非本作「僕らのミライへ逆回転」を堪能していただきたい。
因みに、ミシェル・ゴンドリー監督作品はとしては「エターナル・サンシャイン」が最高にオススメである。
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