「パッセンジャーズ」をめぐる冒険
2009/03/15 東京新宿「新宿武蔵野館」で「パッセンジャーズ」を観た。
本作「パッセンジャーズ」はキングファンに取って、興味深い部分があるので、今日はその辺のお話をしてみたいと思う。
「パッセンジャーズ」
監督:ロドリゴ・ガルシア
脚本:ロニー・クリステンセン
出演:アン・ハサウェイ(クレア・サマーズ)、パトリック・ウィルソン(エリック・クラーク)、デヴィッド・モース(アーキン)、アンドレ・ブラウアー(ペリー)、クレア・デュヴァル(シャノン)、ダイアン・ウィースト(トニ)
若きセラピストのクレア(アン・ハサウェイ)は、飛行機事故で奇跡的に生き残った5人の乗客のセラピーを担当することに。しかし他の生存者とまるで様子の違うエリック(パトリック・ウィルソン)はグループ・カウセリングを拒否して個別カウンセリングを要求した上、薄気味悪い言動でクレアを困惑させる。
そんな中、事故の状況を巡って生存者たちの証言と航空会社の公式説明との食い違いが表面化し、さらに生存者たちが次々と謎の失踪を遂げる事態に。航空会社への不審を強めたクレアは、懸命に事故の核心に迫ろうとするのだが・・・・。
本作を観て、先ず印象的だったのはデヴィッド・モースのキャスティングである。
デヴィッド・モースと言えば、キングファン的には、「アトランティスのこころ」(2001)、「グリーンマイル」(1999)、「ランゴリアーズ」(1995)でお馴染みの俳優だが、非常に興味深いのは、本作「パッセンジャーズ」でデヴィッド・モースは「ランゴリアーズ」と同様に旅客機のパイロットを演じているのだ。
ところで、「ランゴリアーズ」と言う作品についてだが、その根本には、一般的なある出来事のひとつの解釈が描かれている、と言える。
そして、物語のキーの1つとなるパイロットを演じているのがデヴィッド・モースなのだが、彼は「パッセンジャーズ」でも同様に物語の1つのキーとなるパイロットを演じている。
「パッセンジャーズ」と言う作品で、デヴイッド・モースが「ランゴリアーズ」同様に、物語のキーとなるパイロットを演じている、と言うことは、製作者サイドは、「パッセンジャーズ」を観る上で「ランゴリアーズ」を参照しろ、と言っているに他ならないのだ。
と言うのも、本作「パッセンジャーズ」では、「ランゴリアーズ」で提示されたような、ある一般的な出来事に対する1つの解釈を描いているのだ。
もう一点はアンドレ・ブラウアーの起用である。
アンドレ・ブラウアーと言えば、「ミスト」(2007)のブレント・ノートン役で強烈な印象を与えてくれた俳優だが、リメイク版の「死霊伝説」(2004)でマット・バークを演じてもいる。
アンドレ・ブラウアーを起用することにより「パッセンジャーズ」では何をどう表現しようとしていのかは、デヴイッド・モースほど顕著ではないが興味深い共通点がある。
アンドレ・ブラウアー演じるキャラクターは、主人公をある方向へ導こうとする存在として描かれているのだ。
あと余談だが、本作「パッセンジャーズ」では、アラン・パーカーの傑作「バーディ」(1984)の映画史に残るシークエンスをそのまま再演しているのだ。
これも上記同様に「パッセンジャーズ」を理解する上では「バーディ」を参照しろ、と言うことである。
「バーディ」では、ベトナム戦争のショックで心を閉ざしてしまった青年バーディ(マシュー・モディーン)と彼を立ち直らせようとするベトナム帰還兵アル(ニコラス・ケイジ)を描いているのだが、「パッセンジャーズ」では、飛行機事故で躁状態になってしまったエリック(パトリック・ウィルソン)と彼を理解し癒そうとするセラピストのクレア(アン・ハサウェイ)が描かれている。
「バーディ」と「パッセンジャーズ」の対比は非常に興味深いものがある。
「バーディ」で言うところのベトナム戦争のメタファーとして、「パッセンジャーズ」では飛行機事故が出てくる訳だが、ここで言う飛行機事故は言わずもがなだが、アメリカ同時多発テロ事件のメタファーに他ならない。
これ以上書くとネタバレになってしまうので、この辺にしておくが、「パッセンジャーズ」は結構おもしろい作品に仕上がっている。
特に日本の文化に合致するある出来事の描き方は非常に興味深い。
機会があれば、是非劇場で確認していただきたい。
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