« スティーヴン・キングが「シャイニング」の続編を執筆!続編も映画化か? | トップページ | 黒い鏡ーゴッドフリート・ヘルンヴァインの世界ー »

2009/11/28

「シークレット・ウインドウ」

「シークレット・ウインドウ」 なぜ追われる、なぜ終われない。
始まりは、ひとつの盗作疑惑だった。


 郊外の別荘で新作を執筆中の人気作家モート・レイニー(ジョニー・デップ)。

 だが彼は、妻エイミー(マリア・ベロ)との離婚調停と言う大きな問題を抱え、執筆活動に行き詰っていた。
 妻エイミーとテッド(ティモシー・ハットン)の不倫現場のモーテルに踏み込み、離婚調停の問題を顕在化させたのは、他ならないモートその人であった。

 そんなある日、モートのもとにジョン・シューター(ジョン・タートゥーロ)と名乗る謎の男が訪ねてくる。
 その男は唐突に、自分の小説がモートに盗作された、と言うのだった。
 身に覚えの無いモートは、全く取り合わないが、シューターがポーチに一方的に置いていった原稿の内容は、モートの短篇小説「秘密の窓」と全く同じモノだったのだ。
 そして・・・・。


 おそらく本作
「シークレット・ウインドウ」は、スティーヴン・キング原作作品の映画化と言うより、 ティム・バートンの「シザーハンズ」以降、「妹の恋人」「ギルバート・グレイプ」 「エド・ウッド」「ラスベガスをやっつけろ」「ブロウ」といった、ハリウッドでも作家性の高い作品に好んで出演し、 近年は「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」で大ブレイクし、2003年アカデミー賞 主演男優賞にもノミネートされたジョニー・デップの出演作品として評価される作品だろう。

 また本作は、
「永遠に美しく…」「ジュラシック・パーク」「カリートの道」「ザ・ペーパー」「ミッション:インポッシブル」 「スネーク・アイズ」「パニック・ルーム」「スパイダーマン」等の脚本を手がけた名脚本家デヴィッド・コープの2作目の監督 作品として(事実デヴィッド・コープ監督作品としては、初めて評価される作品となるかもしれない)も評価できる作品とも言える。

 しかし、これらは逆説的に言うと、本作
「シークレット・ウインドウ」は、キング作品の映画化を前面に 押し出し、結果的には残念な結果に終わるような作品ではなく、一般の映画作品として評価できる作品に仕上がっている、と言えるのだ。

 さて、そのデヴィッド・コープ自ら手がけた脚本は、基本的には原作である
「秘密の窓、秘密の窓」の基本プロット に準じており、−−と言うより、キングの原作自体がプロットや伏線を生かしつつ映画にしやすい完成度の高い小説に仕上がっているのかも知れないのだが、−− また、微に入り細に入り、カッチリ破綻無く組まれた見事な脚本を楽しむことが出来る。
 特に、ジョニー・デップ演じるモート・レイニーの内面との対峙部分や、ラストの独白的シークエンスは秀逸であろう。

 また演出については、冒頭のモートの飼猫がジョン・タートゥーロが演じるジョン・シューターの足元に絡みつくあたりや、モートが 自動車を落とすシークエンス、勿論モートの内面との対峙、エピローグ的エピソード等、きっちりと振付けられたアクションを観ているような、 脚本と演出の一体感が楽しめる。

 キャストは、モート・レイニーを演じたジョニー・デップは、
「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち」 同様若干オーバーアクト気味な感は否めないが、内面に問題を抱える人気作家を見事に演じている。
 誰も居ない部屋での独白や表情や指先等のユーモラスな動きは、−−勿論これはジュニー・デップの売りであり、個性だと言われると返す言葉が無いが、−− リアリティを求める観客に取っては、やはりオーバーアクトだと言わざるを得ない。

 また、謎の男ジョン・シューターを演じたジョン・タートゥーロは何と言っても南部訛りの台詞回しが印象的である。わたしは寡聞にしてテキサス訛りと、 ミシシッピ訛りの区別はつかないが、ミシシッピ出身のジョン・シューターの訛りは、スタンリー・キューブリックの
「博士の異常な愛情  または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」のコング少佐(スリム・ピケンズ)を髣髴とさせる。

 あと印象に残るのは、モート・レイニーが雇うアクティブな弁護士ケンを演じたチャールズ・ダットンだろう。容貌は勿論、金にうるさい、−−コンタルティン グ料をカウントする時計のシークエンス−−、出来る弁護士像が印象的だった。

 物語の結末とエピローグについては、賛否があると思うが、余韻の残る素晴らしい幕切れではないかと思う。
 しかし、物語の結末を指し示すセリフが、何度も何度も出てくるのには、若干興ざめの印象を否定できない。もう少し観客の記憶を信用し、 暗にほのめかす程度で良かったのではないかとわたしは考える。

 とは言っても、本作
「シークレット・ウインドウ」は、全体的に見た場合、誰にでもオススメ出来る、 秀作だと言えるだろう。
 また、ジョニー・デップ目当てで劇場に足を運んだ人に、スティーヴン・キングを知らしめる役割を果たしてくれる、素晴らしい作品になるのかも知れない。

邦題     「シークレット・ウインドウ」
原題    
"SECRET WINDOW"
製作会社     Grand Slam Productions 、Pariah Entertainment Group
製作総指揮     エズラ・スワードロウ
製作     ギャヴィン・ポローン
監督     デヴィッド・コープ
脚本     デヴィッド・コープ
原作    スティーヴン・キング 
「秘密の窓、秘密の窓」「ランゴリアーズ」所収/新潮社刊、新潮文庫刊)
撮影     フレッド・マーフィ
美術     ハワード・カミングス
編集     ジル・サビット
音楽     フィリップ・グラス、ジェフ・ザネリ
出演
 ジョニー・デップ、ジョン・タートゥーロ、マリア・ベロ、ティモシー・ハットン、チャールズ・ダットン
配給     コロムビア・ピクチャーズ、ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント
製作年     2004年アメリカ映画
北米公開日     2004/03/12
日本公開日     2004/10/16
指定、他     PG−13(北米)、カラー、96分、DTS、DOLBY DIGITAL、SDDS、1:2.35

| |

« スティーヴン・キングが「シャイニング」の続編を執筆!続編も映画化か? | トップページ | 黒い鏡ーゴッドフリート・ヘルンヴァインの世界ー »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「シークレット・ウインドウ」:

« スティーヴン・キングが「シャイニング」の続編を執筆!続編も映画化か? | トップページ | 黒い鏡ーゴッドフリート・ヘルンヴァインの世界ー »