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2010/04/29

「ハード・ケース・クライム」をめぐる冒険

「007/サンダーボール作戦」 ツイッター上で映画評論家の添野知生さんと、「007/サンダーボール作戦」「007/黄金銃を持つ男」「007/死ぬのは奴らだ」等の「007」シリーズやオードリー・ヘップバーンの「ティファニーで朝食を」「おしゃれ泥棒」、ジェーン・フォンダの「バーバレラ」、そしてもちろん1950年代~1960年代にかけて1,400冊以上のペイパーバックの表紙を手がけたイラストレイターロバート・マッギニスの話をしていた際、たまたまだがスティーヴン・キングが「コロラド・キッド」とロバート・マッギニスの話をしている映像をYoutubeで見つけた。

この映像は、CBSの、おそらく2005年のインタビュー映像で、「コロラド・キッド」やかつてのパルプフィクション、ペイパーバックの事を語るスティーヴン・キングや、「ハード・ケース・クライム」と言うレーベルでかつての犯罪小説のペイパーバックを復活させた実業家と作家という二足の草鞋を履くチャールズ・アルダイのインタビュー映像はもちろん、なんとロバート・マッギニス本人のインタビュー映像やイラストの制作風景、--なんと、右手にルーペ、左手に絵筆で作品を描いている、--、が含まれている。

いかがだっただろう。興味深い映像だったのではないだろうか。

「タイム・マガジン2008/09/26」チャールズ・アルダイ ところで、この映像にも登場するチャールズ・アルダイだが、前述のように「ハード・ケース・クライム」レーベルでかつての犯罪小説のペイパーバックを復活させた実業家であり、作家でもある。

写真は2008年9月26日の「タイム・マガジン」の記事「The Next Chapter」
リード・コピー「シングルモルトとダブルクロス(裏切り)」が笑える。
また、壁にはキングの「コロラド・キッド」のポスターが貼られている。

「ハード・ケース・クライム」オフィシャル・サイト

「ハード・ケース・クライム」というレーベルについては新潮社(新潮文庫)から非売品のプレミア・ブックとして2006年に刊行された「コロラド・キッド」の巻末に収録されている吉野仁氏の解説が詳しいが、「コロラド・キッド」自体、一般に流通している書籍ではないので、手にする機会が少ないと思う。

「コロラド・キッド」
著者:スティーヴン・キング
訳者:白石朗
解説:吉野仁
発行:新潮社(新潮文庫/非売品)
初版:平成18年6月1日

そんな訳で、吉野仁氏の解説のうち、「ハード・ケース・クライム」に関する部分を引用する。

「ハード・ケース・クライム」は、かつてアメリカで量産されたペイパーバックによる犯罪小説(ミステリー、ハードボイルド)を現代に蘇らせようという目的で2004年に創設された叢書なのだ。
すでにこのシリーズの新作のうち2作が邦訳されている。うち1作のドメニック・スタンズベリーの「告白」(ハヤカワ・ミステリ文庫)はアメリカ探偵作家クラブ賞最優秀ペイパーバック賞を受賞した。
そして、同賞の最優秀処女長編賞のノミネートには、もう1作、リチャード・エイリアス「愛しき女は死せり」(ハヤカワ・ミステリ文庫)が挙がっていた。なにを隠そう、このリチャード・エイリアスこそが、IT企業のCEO(最高経営責任者)にして、「ハード・ケース・クライム」の創設者、本名チャールズ・アルダイなのだ。
(略)
そしてもうひとつの大きな特徴としてカヴァーに当時活躍したイラストレイターの絵を採用したり、いかにもペイパーバック・オリジナル黄金時代の表紙絵を髣髴とさせるイラストを用いている。映画007のポスターイラストなどでも知られるロバート・マギニスなどはその筆頭といえる画家だ。

いかがだろう、かつての犯罪小説を現代に復活させたリチャード・アルダイのスピリットは理解していただけたであろうか。

さて、件のチャールズ・エイリアスだが、ちょっと複雑なのだが、リチャード・アルダイではなくチャールズ・アルダイ名義でも小説を発表しているのだ。
現在のところ邦訳は出ていないようなだが「Fifty-to-One」と言う作品が、「ハード・ケース・クライム」レーベルから出版されている。

興味深いのはその表紙である。
それでは、グレン・オービックが手がける表紙の画像を見ていただこう。
「Fifty-to-One」チャールズ・アルダイ
お気付きだろうか。
机の上に散らばっているペイパーバックのど真ん中にあるのは、なんとスティーヴン・キングの「コロラド・キッド」なのである。

余談だけど、「コロラド・キッド」「Fifty-to-One」をはじめとして、様々な作品の表紙を飾るイラストレイターグレン・オービックは凄いぞ。前述のロバート・マッギニスもびっくりだぞ。

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