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2010/05/28

目覚めを知らない悪夢~『Alan Wake』とモダンホラーの世界 PART1

「アラン・ウェイク」 今日もXbox360のゲーム「アラン・ウェイク」のお話。
しかも、スティーヴン・キング指数が高いよ。
ファミ通.COM、2010年5月27日の記事より。

目覚めを知らない悪夢~『Alan Wake』とモダンホラーの世界 PART1

記録のため、全文を引用する。

“胡蝶の夢”という説話をご存知だろうか?
 中国の思想家・荘子の残した説話で、“自分が蝶になって空を飛んだり蜜を吸った楽しんだところで目が覚める。果たして自分が夢の中で蝶になったのか? それとも蝶が今夢の中で自分になっているのか?”という内容だが、ズバリ断言すると『Alan Wake』は、こんな説話を地で行く内容のモダンホラーのゲームである。この“モダンホラー”という言葉も重要だ。
 ホラー映画と一口に言っても、実に様々なジャンルが存在する。血飛沫タップリのスプラッター、ヨーロッパには伝統のモンスター映画や“ジャッロ”と呼ばれる残虐サスペンスがあり、幽霊や超常現象や悪魔信仰だってあるのだが、中でも現代社会を舞台にしてサスペンスフルな事件や怪現象を等身大の設定の主人公が体験するタイプが“モダンホラー”としてジャンル分けされている。
 その旗手は何と言ってもスティーブン・キング! アメリカを代表する小説家であり、モダンホラーの生みの親とも言われているし、氏の作品はベストセラーが多く、何本も実写映画化されているので、ご存知の読者も多いだろう。『ショーシャンクの空に』『グリーンマイル』『スタンド・バイ・ミー』などが最も有名な作品だが、キングの目玉はやっぱりホラー小説。残念ながらキングのホラー小説の映画化は正直言って駄作が多いのだか、『Alan Wake』の世界観は、とてつもなくスティーブン・キング的なものだ。しかもホラー小説の方の。
キングのホラー小説の映画化は『IT』『炎の少女チャーリー』(主演ドリュー・バリモア!)や『地獄のデビルトラック』(日本公開時の邦題)など、マジでどうしようもない作品が多いが、だからこそキング原作の映像化の難しさを物語っている。それだけに映像化に成功した作品の面白さは、どれもホラー映画史に残る名作ばかり。『キャリー』『シャイニング』『デッドゾーン』『ミザリー』などは、恐怖映画としては超一級品であることに間違いない。
 『Alan Wake』は、そんなキングによる一級品のエッセンスを惜しげもなく投入し、さらにアメリカン連続ドラマの手法を取り入れた意欲的なタイトルと表現したくなる出来映えで、誤解を恐れずに表現するなら“遊ばせるモダンホラー”。目的はモダンホラー小説の世界の主人公になりきることであり、モダンホラー色の強いゲームは過去にも色々登場していたが、ここまで徹底してモダンホラーを題材として引用し、再現したのは初めてではないかと思う。
 ちなみにゲームの中には、実際キング作品から引用された台詞も登場するが、よりによってそれが『地獄のデビルトラック』が元ネタだとわかった時には、さすがの筆者も驚きを隠せなかった。“わかってる”連中の作るゲームは違うねぇ!
 ちなみに筆者が最も好きなキング作品は……『地獄のデビルトラック』も当然フェイバリットだけど、やはりキングが別ペンネームのリチャード・バックマン名義で発表し、アーノルド・シュワルツェネッガー現カリフォルニア州知事主演で映画化された『バトルランナー』が最高すぎると思う。近未来の殺人テレビショーを舞台に、オペラを歌いながら登場する殺人鬼のスーパースター、ダイナモや、電飾オムツ姿のチェンソー怪人バズソーなど尋常じゃないキャラがオンパレード! 最後はシュワちゃんが殺しを喜ぶみのもんたのような番組司会者をブッ殺して映画はズバッと終わる。ちなみに日本では正月映画として公開されたのだが、正月早々映画館まで足を運んだのも筆者の忘れ難い思い出になっている(できれば忘れたい)。

いつも通りの展開で話が横道に逸れてしまったので本題に戻ろう。すでに公式サイトで日本語版も配信中の実写ドラマ“ブライトフォールズ”も、かなり手の込んだプロモーションだ。鑑賞してもらえればわかると思うが、その世界は完全に連続サスペンスドラマである。このドラマを観ながら、そのままゲームの中に完全に入り込み、主人公アラン・ウェイクになりきって閉鎖的な田舎町で発生する怪事件に挑む……。このスムーズな流れの演出も洋ゲーらしくて見事で、北米におけるプロモーション展開を見れば、まさにアメリカ人にしか作れないモダンホラーのゲームではないかと思う。

 『Alan Wake』の世界を構築する要素として、もう1つ重要な作品がある。デヴィッド・リンチ製作総指揮による連続ドラマ『ツイン・ピークス』だ。ゲームの内容の大きなウェイトを占めるのが、この『ツイン・ピークス』の影響力なのだ。謎めいた言葉を残す登場人物、湖に沈んだ女の死体、そしてシンボリックな小高い山と、それだけしか観光産業のない閉鎖的な田舎町などなど、設定の時点で『Alan Wake』と被る部分は多く、このタイトルが『ツイン・ピークス』『X-FILE」などの怪奇ドラマを意欲的かつ確信犯的に再現しようとしているのが理解できる。しかもハンパな情熱ではないのがヒシヒシと伝わってくるではないか! 『ツイン・ピークス』は日本でもアメリカ製ドラマとしては久々のヒット作となり、ビデオレンタル屋では高回転率を常にキープ。リンチ独特の思わせぶりな演出や伏線の連続にかつてトリコになった人も多かったはずだ。『ツイン・ピークス』の存在がなければ、その後の『X-FILE』『24』も存在しなかったであろう、アメリカンドラマのエポックメイキング作品である事実を忘れてはならないし、『Alan Wake』を遊ぶ前に、もしくはプレイの合間に鑑賞すれば、ゲームもドラマも相乗効果で面白くなることを保証しておきたい。

『Alan Wake』は、スランプに陥ったベストセラー作家のアラン・ウェイクが、妻とともにブライト・フォールズと呼ばれる田舎町で静養するために到着するところから物語は始まる。ブライト・フォールズは風光明媚な土地だが、そこでアランが謎の老婆と接触したことで、物語は不穏な方向へと転がりはじめる。湖畔の小島に建つ小さなバンガローを借りた晩に事件は発生し、妻は湖に転落して行方不明。救出に飛び込むアランだったが、なぜか目覚めると事故車の中に。しかも到着してから一週間も経過していた。一体自分の身に何が起きて、妻は一体どうなったのか?警察に事情を話しても信じてもらえず、しかも夜になるとアランの周辺に奇怪な事件が連続で派発生。人間ではない何者かに絶えず襲撃されるアランは、単身で妻の居所を探すために調査を始めるのだったが……。

これが物語の導入であり、この時点でゲームはチュートリアル程度を終わらせただけ。ここからは長く険しいサスペンスドラマが展開し、夢とも現実とも区別できない異様な世界に、次第にアランは足を踏み入れてしまう。そしてプレイヤー自身もまた、最初に引用した“胡蝶の夢”の世界に迷い込んでしまう。アランは書いた覚えのない自分の最新作の小説と、そっくり同じ殺人事件が現実に次々と発生している事態を知り困惑するが、一方では小説を書くためにジレンマに苦しむアランと、嬉々として新作を執筆しまくるアランが存在し、それが夢か現実かもわからない(ちょっとこの辺の展開はキングの『ミザリー』の影響も感じる)。一見すると難解なストーリーではあるが、シナリオが非常に練り込まれているので次の展開が楽しみになる。実際にゲームもドラマ仕立てで進行し、ステージにはオープニングや前回までのあらすじ(前にクリアしたステージの解説)、そして1ステージをクリアするごとにエンディングテーマが流れる徹底ぶりを評価したい。

まずは元ネタ解説から開始したが、『Alan Wake』を構成する要素は、決してこれだけでは終わらないし、モダンホラーでアドベンチャー要素の強いゲームだが、実はアクションシューターとしても非常に完成度が高いので、次回更新のPART2では戦闘システムやサバイバル術にも迫りつつ、『Alan Wake』と日本を結ぶ驚きの元ネタについても解説したいので、更新を刮目して待て!

「アラン・ウェイク」

て、言うか、圧倒的にやりたくなってきちゃったんですけど。「アラン・ウェイク」

ゲームの導入部分は例えばキングの「骨の袋」や最近翻訳が出た「悪霊の島」にも通じるような気もするし、で、島の家はもしかしてセーララフスじゃねえの。

しかし、この記事のライター:マスク・ド・UHはキング作品に詳しいですな。
PART2の記事も楽しみです。

感覚的にはホラー版「アンチャーテッド」かな、と・・・・。

て、言うか、誰かXbox360くれ!

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コメント

tkrさん、こんにちは。Xbox 360本体とこのゲーム、是非一緒に買ってください(笑)。tkrさんならば、きっとキング妄想が全開で働くと思いますよ。
まだ「エピソード2」の途中までですが、遊びながら私も「これはキング+ツイン・ピークスだ!」と思いました。なにしろゲーム本編冒頭のモノローグ、一番最初の単語が「スティーヴン・キング」ですからね。ベストセラーホラー作家が主人公という点で、既にキングの呪縛からは逃れられませんから、開き直った感じもします。田舎町が舞台でしかも山岳地帯のホラーゲームって珍しいと思います。話は面白いのに画面が妙に地味なのも、キングの小説っぽいです。

私のblogでも紹介しましたが、限定パッケージは作り込みも半端でなかったです。アマゾンでは随分前に転売屋に買い占められてしまいましたが、町のお店ではまだ置いてあるところもあるようです。機会がありましたらそちらもどうぞ。

投稿: Horka | 2010/05/28 09:36

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