« 「瞳の奥の秘密」もキングの影響を・・・・ | トップページ | 「TOP 100 KILLER THRILLERS」 »

2010/08/16

『映画監督:古厩智之 [第88回] 「100805 何かの奴隷」』

2010年8月5日に、ハリウッド・チャンネルで公開された映画監督:古厩智之の連載コラム「業界通信」にスティーヴン・キングに関する言及があるので紹介する。

映画監督:古厩智之 [第88回] 「100805 何かの奴隷」

記録のため、全文を引用する。

ひさしぶりに渋谷の街を歩いた。午後11時。
キャッチも、呼び込みも、マッサージのお姉さんも、ギャルたちもいちにち最後の元気を発散させている頃。

いやあ…そんなひとたちがみんな『キーチ!』とか『ワールドイズマイン』なんかのマンガ家、新井秀樹の描くその他大勢のキャラにそっくりでびっくりしました。
いやいや。普段、多摩地区ののんびりしたところに住んでいるからなのはわかってはいるのですが。
渋谷の彼らの「大切なのは今この瞬間だけ!」という感じにやられました。
すげーなあ。反感買うのを承知で叫びたくなってしまう。「バカ!」と。

えーと、えーと。そんな事を言いたいのではなくて、何かねえ、人間て環境の奴隷だなぁって凄く思うのです。

こないだ某刑務所の見学に行きました。秋からのドラマの参考のためです。
先月、拘置所(未決囚=基本的には裁判中で刑が確定してない人が入るところ)を見学には行ったのですが…まずはそこよりは刑務所はなごみましたね。

以前行った拘置所は超近代的な建物で庭などなく巨大なビルの中に舍房(いわゆる牢屋)があって、窓には全部覆いがされていて殆ど外が見えなかった。それが辛かった…。外の世界が全く見えないというのは、あれは大変苦しい物ですね。心を遠くに飛ばすゆとりやきっかけがない。何よりあれが大変だと思いました。

その点、今回の刑務所は建物自体は新しいのですが、昔からの敷地に建っているので池があったり花壇があったり、それよりなにより舍房から工場やら別棟への移動のときには空が見える! その日は小振りながらも入道雲が出ていて。あれを見られるだけでいろんなことに耐えられる…と思いました。

しかししかし。刑務所の見学を進めるうちに思ったのですが、人間というものはたくましそうに見えて弱い。服役囚のみなさんが刑務所内の工場で働いてるところを見たのですが…すごーく中身がない感じがしました。そう言うとまた誤解を招くな。容れ物だけになってる感じ…とでもいいましょうか…。弱く、イノセンスな感じがした。

廊下を歩くときは「1、2、1、2」と行進させられる。僕ら見学者が通ったらそちらを見ないように壁を向いて立たされる。発言するときは挙手をして許可を求める…。
そんなこんなのいろいろが体にしみついてそれだけになってる感じ。言うことを聞く体だけになってるような…。いや、“だけ”ではないのだけれど、そこが目立っている。

スティーブン・キングの小説、確か『グリーンマイル』に僕が大好きなシーンがあります。何十年も刑務所に服役していてやっと外に出た老人。彼がスーパーで言うんです。手を挙げて「トイレに行ってもいいでありますか!?」。勿論、誰も彼に許可なんて与えない。だから彼はどこにも行けなくなって身動きできなくなってしまう。そして願うのです。もう絶叫に近く。「塀の中に戻してくれ!」と…。

人間は簡単に何かの奴隷になってしまうと思うのです。刑務所の中にいなくてもそれは同じで…。
例えば凄く愛しいと思う女の人を前にして、彼女の言うことを何でも聞いてやらなきゃと思ってしまう。
自分がなくなってしまう。そんなんでも同じ。
勿論、夜の渋谷の街を闊歩している彼らも同じ。
それを横目で見ている(つもりになってる)僕も同じ…。

人間は簡単に何かの奴隷になる。体がそう出来ている。
そこに凄く共感します。そのことはずっと子供の頃からよく知ってる感覚な気がするのです。

秋からのドラマ。そんな感覚も少し織り交ぜていければいいなと考えてます。

映画監督:古厩智之
1968年長野県生まれ。大学在学中に撮った短編映画「灼熱のドッジボール」で92年ぴあフィルムフェスティバル・グランプリを受賞。94年に同賞スカラシップで初の長編「この窓は君のもの」を監督。「まぶだち」(01)でロッテルダム映画祭グランプリを受賞。他に「ロボコン」(03)、「さよならみどりちゃん」(05)、「奈緒子」(08)など。小池徹平主演「ホームレス中学生」(08)のヒットも記憶に新しい。

余計なお世話だが、古厩智之が言ってるのは、「グリーン・マイル」ではなく、「ショーシャンクの空に」ではないかな、と思っちゃう。

|

« 「瞳の奥の秘密」もキングの影響を・・・・ | トップページ | 「TOP 100 KILLER THRILLERS」 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/174263/49163711

この記事へのトラックバック一覧です: 『映画監督:古厩智之 [第88回] 「100805 何かの奴隷」』:

« 「瞳の奥の秘密」もキングの影響を・・・・ | トップページ | 「TOP 100 KILLER THRILLERS」 »