「ヒア アフター」もキングの影響を!?
さて、今日も全ての事象はスティーヴン・キングの影響を受けている、と言うキングファンの妄想的エントリー。
今日、俎上に乗せるのは、2011年2月19日に、日本公開された映画「ヒア アフター」。
「ヒア アフター」
監督:クリント・イーストウッド
脚本:ピーター・モーガン
出演:マット・デイモン(ジョージ)、セシル・ドゥ・フランス(マリー・ルレ)、フランキー・マクラレン(マーカス/ジェイソン)、ジョージ・マクラレン(マーカス/ジェイソン)、ジェイ・モーア(ビリー)、ブライス・ダラス・ハワード(メラニー)、マルト・ケラー(ルソー博士)、ティエリー・ヌーヴィック(ディディエ)、デレク・ジャコビ(本人)
パリで活躍するジャーナリストのマリー(セシル・ドゥ・フランス)は、恋人ディディエ(ティエリー・ヌーヴィック)との休暇を楽しんでいた東南アジアで、津波にのまれて死にかける。無地に帰国してからも、呼吸が停止した時に見た不思議な光景《ビジョン》が忘れられず、仕事も手につかず、自分が見たものが何かを突き止めようと調査を開始する。
かつて霊能者として活躍していたサンフランシスコのジョージ(マット・デイモン)は、死者との対話に疲れ、今は工場で働いている。人生を変えようと通い始めた料理教室で知り合ったメラニー(ブライス・ダラス・ハワード)に好意を寄せている。
ロンドンで母と双子の兄ジェイソン(フランキー・マクラレン/ジョージ・マクラレン)と暮らすマーカス(フランキー・マクラレン/ジョージ・マクラレン)は、突然の交通事故で兄を亡くす。母と引き離され里親に預けられたマーカスは、もう一度兄と話したいと霊能者を訪ね歩く。(オフィシャル・サイトよりほぼ引用)
さて、今日の本題だが、本作「ヒア アフター」のどの辺がキングの影響を受けているのか、と言う話なのだが、次の点がとっても気になる。
ジョージ・ロネガンはジョン・スミスなのか
予告編を見た時点で気になっていたのだが、本作「ヒア アフター」の主人公である引退した霊能者ジョージ・ロネガンは、「デッド・ゾーン」のジョン・スミスの影響を受けているキャラクターに思えてならないのだ。
件の元霊能者ジョージ・ロネガン(マット・デイモン)の霊能力は、死者のビジョンを見ること、つまり手を触れた人の亡くなった近親者のビジョンを得ることにより、死者とその手を触れた近親者とのコミュニケーションの仲立ちをする、というものである。
手を触れてビジョンを得る、と言う点と、そもそもその現象を《ビジョン》と呼んでいることも興味深い。
兄を亡くした弟
交通事故で双子の兄ジェイソンを亡くした弟マーカス。
ジェイソンは活発で行動的な正確で、マーカスはおとなしく思索的な性格として描かれている。
そして、彼らの関係を印象づけるアイテムとして兄ジェイソンのキャップ(野球帽)が効果的な役割を担っている。
この時点で既にお気付きだと思うのだが、兄を亡くした弟と兄が残したキャップと言えば、どうしても「スタンド・バイ・ミー」のゴードン・ラチャンスとその兄デニーが想起される。
また、兄ジェイソンは変な笑いをするキャラクターとして描かれているのだが、これもまた「スタンド・バイ・ミー」のテディ・デュシャンの笑いを想起させる。
ロンドンブックフェア
本作「ヒア アフター」では、ロンドンブックフェアが重要なシークエンスの舞台背景として描かれている。
そこで印象的なのは、キングの版元であるサイモン&シュスター社のブースが何度も画面に登場するのだ。
そして、ジョージとマーカスが話をする場面では背景に、ウィリアム・ゴールディングの「蠅の王」("Lord of the Flies")の書影が登場する。これは多分、普通の人は全然気付かないと思うので、写真をはっておく。
お分かりだろうか、ジョージとマーカスの間の背景の左上の赤い表紙が「蠅の王」である。
「蠅の王」と言えばキングのお気に入りの小説であり、キングが創造したキャッスルロックの語源の元ネタとも言われている。
また、ジョージ・ロネガンはチャールズ・ディケンズファンとして描かれており、ジョージは毎晩、デレク・ジャコビによるディケンズ作品のオーディブックを聴くキャラクターとして描かれている。
ディケンズとキングと言えば、「グリーン・マイル」の分冊形式の出版形態はディケンズの前例にならったものだとキングは明言している。
また、オーディオブックのナレーターとして著名なフランク・ミューラーの件もあるように、キングはオーディオブックの普及にも貢献している。
若干妄想気味だと思うが、このあたりもキングファンに対する目配せではないのかな、と思ってしまう。
まあ、本作「ヒア アフター」と、キングの「デッド・ゾーン」や「スタンド・バイ・ミー」との共通点が多いのは、おそらくわたしの妄想のせいではないと思う。
実際、幾つかのプロットにキング作品が影響を与えているのではないか、と思える。
作品自体は、公開直後なので内容については割愛するが、非常に良い作品に仕上がっている。
何故、イーストウッドが本作のメガホンを取ったのか、と言う疑問は残るものの、最近のイーストウッドのカラーに仕上がっているので、イーストウッドも前向きに本作に取り組んだのだと思う。
音楽は例によって、簡単な単音のメロディの繰り返しなので、個人的にはいただけないと思うが、それ以外は非常によく出来てると思う。
特に、東南アジア、パリ、ロンドン、サンフランシスコを舞台にしたグローバルな物語の語り方は大胆でしかも周到に考えられていると思う。
伏線も見事だし、枝葉の部分、例えば料理教室やオーディオブック等のプロットも素晴らしい。
関心がある方は是非劇場で「ヒア アフター」を堪能していただきたいと思う。
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