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2011/05/29

「アジャストメント」もキングの影響を!?

「アジャストメント」 さて、今日も全ての事象はスティーヴン・キングの影響を受けている、と言うキングファンの妄想的エントリー。

今日、俎上に乗せるのは、2011年5月27日に、日本公開された映画「アジャストメント」

「アジャストメント」
監督・脚本:ジョージ・ノルフィ
原作:フィリップ・K・ディック 「アジャストメント」(「アジャストメント--ディック傑作短篇選」に収録)
出演:マット・デイモン(デヴィッド・ノリス)、エミリー・ブラント(エリース・セラス)、アンソニー・マッキー(ハリー)、ジョン・スラッテリー(リチャードソン)、マイケル・ケリー(チャーリー)、テレンス・スタンプ(トンプソン)

将来有望な若手政治家デヴィッド(マット・デイモン)は、ある日エリース(エミリー・ブラント)という美しいバレリーナと《運命的》に出逢い、一目惚れする。
しかし次の瞬間、突如現れた《アジャストメント・ビューロー(運命調整局)》と呼ばれる男たちによって、彼は拉致されてしまう。

彼らの目的は、本来《恋に落ちる予定ではなかった》デヴィッドとエリースを引き離し、《運命の書》に記述された運命に従わせること。混乱するデヴィッドに突き付けられたのは、「この世のすべての運命は、ビューローがすでに決めた運命から逸脱しないよう常にモニターされ、操作されている」という、信じがたい現実の《裏側》だった。

超人的な能力で運命を操作する彼らに対し、愛する女性と再会すべく必死の抵抗を試みるデヴィッド。
彼はやがて、ビューローの真の目的と、その背後に潜む更に巨大な力の存在に気付き始めるが・・・・。

(オフィシャル・サイトより引用)

さて、今日の本題だが、本作「アジャストメント」のどの辺がキングの影響を受けているのか、と言う話なのだが、わたしには本作「アジャストメント」がスティーヴン・キングの「デッド・ゾーン」の影響を受けている、と思えてならないのだ。

と言う訳で、本日のエントリーでは、必然的に「アジャストメント」「デッド・ゾーン」の内容や結末に触れることをお断りしておく。

映画「アジャストメント」に登場するデヴィッド・ノリス(マット・デイモン)は、ブルックリンのスラム街出身で、早くに家族を亡くしたが、24歳で下院議員となったやり手政治家として描かれており、映画の冒頭でノリスはニューヨーク州の上院議員選挙に出馬している。

当初は当選確実だと言われていたノリスだったが、自らが飲酒の末に起こしたスキャンダルによりニューヨーク州上院議員選挙に敗北する。

デヴィッドがその敗北宣言の草稿を独りで練っている際、エリース(エミリー・ブラント)と運命的に出逢い恋に落ちる。
そして、デヴィッドはエリースからの影響を受けた草稿による上院議員選敗北宣言で会見を行い、政治家生命を生き存えることになる。

その後、デヴィッドとエリースは運命上、再会してはならないはずだったのだが、アジャストメント・ビューローのハリー(アンソニー・マッキー)のミスにより再会してしまう。
その影響で、デヴィッドはアジャストメント・ビューローがデヴィッドの事務所で行っていた工作現場を目撃してしまうことになる。
アジャストメント・ビューローの異常な工作を目の当たりにしたデヴィッドは事務所から逃亡する、追うアジャストメント・ビューロー。

一時はその場から離脱する事に成功するデヴィッドだったが、最終的には超人的な方法でデヴィッドを追いつめるアジャストメント・ビューローに拉致されてしまう。
その結果、アジャストメント・ビューローの秘密の一部を知ったデヴィッドは、その秘密を口外しない事、そしてエリースと2度と会わない事を約束させられ、彼女の連絡先を破棄された上、解放される。

しかし、エリースを忘れられないデヴィッドはエリースとの偶然の再会を期待し、3年間同じバスに乗り続けていた。

3年後。
デヴィッドは偶然エリースを発見することになる。
このままでは運命が、デヴィッドとエリースの将来が変わってしまう。

アジャストメント・ビューローのデヴィッドとエリースに対する、彼らの運命に対する介入が再び始まる・・・・。

そんなアジャストメント・ビューローの目的は、デヴィッドとエリースを引き離し、デヴィッドを上院議員に、そして最終的には合衆国大統領に就任させようとしているのだ。

そう、アジャストメント・ビューローは、太古の昔から人類の滅亡を防ぐため、キーとなる人類に対し様々な介入を行っていたのだった。

この辺まで話を進めると、賢明な読者諸氏は今日のエントリーの方向性に薄々勘付いていらっしゃるのではないかと思う。

それでは「アジャストメント」に影響を与えているとわたしが考える「デッド・ゾーン」はどのような物語だったのかと言うと、次期大統領候補であるグレッグ・スティルソン上院議員が、大統領就任後、世界中を巻き込む全面核戦争の口火を切る核ミサイルの発射ボタンを押すことを知ったジョン・スミスが、グレッグ・スティルソンの大統領就任を阻もうとする物語である。

一方、「アジャストメント」は、人類を滅亡から少しでも遠ざけるためにデヴィッド・ノリスがを将来的に大統領に就任させるため、アジャストメント・ビューローがデヴィッドの運命の微調整を行おうとする物語である。

ある人物を大統領にさせないために誰かが極秘裏に運命に介入する物語と、ある人物を大統領にするために誰かが極秘裏に運命に介入する物語。

どうでしょう。
「アジャストメント」「デッド・ゾーン」の類似性って、なんだか高いと思いませんか。

ところで、もし、本作の原作であるフィリップ・K・ディックの「アジャストメント」が映画同様に大統領候補者へのアジャストメント・ビューローの介入を描いているとしたら、キングはディックの原作の影響を受けて「デッド・ゾーン」を書いたのかも知れない。と思われる。

劇場を出たわたしはその足で書店に向かった。
ディックの原作を確認する必要があるのだ。

書店で原作をゲットしたわたしは自宅に帰る地下鉄の中、原作「アジャストメント」を読了した。

ディックの原作「アジャストメント」では、主人公は不動産業者であり、アジャストメント・チームは、その不動産業者に介入することにより、カナダ西部の未開発森林地域を開発させ、そこにある人類学的遺跡の研究に世界中の科学者を巻き込み、最終的には世界から戦争を一掃する一助となる事を目的としていた。

つまり、映画「アジャストメント」で、次期大統領候補となる上院議員に対するアジャストメント・ビューローの介入を描いているのは映画のオリジナルのプロットである、と言える。

そう考えた場合、映画「アジャストメント」「デッド・ゾーン」の影響下にあり、「デッド・ゾーン」の裏返し的な構造を持っている作品である、と言う事が確信される。

果たしてこれはわたしの妄想だろうか。

余談だけど「アジャストメント」のドアの使い方も興味深いですよ、「ダーク・タワー」シリーズ的にですが。

ところで、映画「アジャストメント」のデヴィッドは、自らの運命を変えるために、《運命の書》を書いた存在に迫ろうとする。
つまり、デヴィッドは《運命の書》を書いた存在に自らの《運命の書》の書き換えを迫るのである。

この辺りのプロットについてはフレドリック・ブラウンの「ミミズ天使」(「天使と宇宙船」に収録)のそれに酷似している。

因みに、ディックの「アジャストメント」の発表は1954年。
ブラウンの「ミミズ天使」の発表はなんと1943年。

そう考えると、ディックの「アジャストメント」はブラウンの「ミミズ天使」の影響を受けているのかも知れない。

関心がある方は、是非チェックしていただきたいと思う。
「ミミズ天使」は素晴らしい作品だよ。

勿論映画「アジャストメント」も興味深い作品ではあるので、劇場で確認していただきたいと思う。

テレンス・スタンプが最高ですよ。

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