ウェスト・メンフィス3を描いた作品がアカデミー賞ドキュメンタリー部門最有力候補!
2012年1月21日にシネマトゥディが伝えるところによると、ウェスト・メンフィス3事件を18年間も追いかけたドキュメンタリー作品がアカデミー賞ドキュメンタリー部門の最有力候補にあがっている模様。
このウェスト・メンフィス3事件は以前のエントリー『ジョニー・デップ、実在の猟奇的殺人犯、3人の8歳児殺害事件の再審を訴える』でお伝えした通り、1993年にアーカンソー州で3人の8歳の男の子が猟奇的な方法で殺害され、ずさんな捜査を行った警察が近辺に住んでいたティーンエイジャーの少年3人を逮捕したという事件。なお、この3人はメタリカなどのへヴィメタルやスティーヴン・キングの小説を好んでいたことが殺害の動機とされ、警察に自白を強要されたものと、当時は言われていた。
アカデミー賞ドキュメンタリー部門最有力候補!3人の8歳男児殺害はえん罪か?「パラダイス・ロスト3:パーガトリー」
記録のため全文を引用する。
[シネマトゥデイ映画ニュース] 映画「メタリカ:真実の瞬間」や「クルード~アマゾンの原油流出パニック~」などで注目されたジョー・バーリンジャー監督が、新作「パラダイス・ロスト3:パーガトリー(原題)/ Paradise Lost 3: Purgatory」について語った。
同作は、1993年にアーカンソー州ウェスト・メンフィスで3人の8歳の男児が殺害され、3人のティーンエイジャー、通称ウェスト・メンフィス3(ダミアン・エコールズ、ジェイソン・ボールドウィン、ジェシー・ミスケリーJr)を容疑者として逮捕、後の裁判でその3人に有罪判決が下された。だが、後に不十分な証拠や自白強要などから、犯人に仕立て上げられたという冤罪説が浮上し、さらなる捜査を通してDNA鑑定が行われ、真犯人とこのウェスト・メンフィス3のDNAが一致しないことがわかっていく。ところが、このDNA鑑定の証拠をもとに再審が可能か否かを決定する前に、なんとこの3人が釈放されてしまうという異例の出来事が起きる。
アメリカを騒然とさせた事件を18年間も追いかけたドキュメンタリー作品。これまで同事件を追いかけて、すでに映画「パラダイス・ロスト:ザ・チャイルド・マーダーズ・アット・ロビン・フッド・ヒルズ(原題) / Paradise Lost : The Child Murders at Robin Hood Hills」(1996年)と「パラダイス・ロスト2:レヴェレーションズ(原題) / Paradise Lost 2 : Revelations」(2000年)の2作を製作し、今作が3作目。
この映画の制作経緯について「僕と共同監督のブルース・シノフスキーの処女作品「ブラザーズ・キーパー(原題)/ Brother's Keeper」(1992年)を観たチャンネルHBOのプロデューサー、シーラ・ネヴィンズが、この“ウェスト・メンフィス3事件”が書かれたN.Yタイムズの記事を送ってくれたんだ。当時、その記事を読んだときは、悪魔崇拝をする少年たちの殺人事件で、彼らの有罪も明らかだと思っていた。だから、僕らも3人の8歳の男児を殺してしまうような、一般の生活とかけ離れた腐敗した少年たちを描くつもりでいたんだ……」と述べ、それがまさか全3作品、18年も追いかけることになる事件になるとは、その当時全く思っていなかったそうだ。
そして共同監督ジョーとブルースは、ウェスト・メンフィス3が逮捕されてから、初公判が行われるまで8か月間、現地で犠牲者の家族のインタビューなどをしていた。ところが、ようやく刑務所でのウェスト・メンフィス3の取材許可が下りて、実際にウェスト・メンフィス3から話を聞き出してから、ジョーとブルースの見解が変わっていく。「特に、ウェスト・メンフィス3の一人、ジェイソン・ボールドウィンは(当時16歳にしては)発言する言葉が非常に聡明で、彼が使用していたサバイバルナイフで、3人の子どもを刺したということだが、ジェイソンの手首の細さを見てて、何かおかしいと思っていたんだ。そのうえ、犯罪現場には全く血痕がなく、プロの殺し屋でもない3人の少年たちが、3人の子どもを殺害して全く血痕が残っていないといことも、僕が首をかしげた犯罪証拠の一つだったんだ」と明かしたが、さらに悪魔崇拝やスティーヴン・キングのファンであることが、裁判で重要参考として取り上げられること自体が間違っているとも指摘した。
えん罪が浮上した後のDNAの検査で、ウェスト・メンフィス3が真犯人と一致しないという新事実が発覚するが、状況の悪くなったアーカンソー州政府は、Alford Plea(釈放する代わりに、自分たちが有罪を認めること)という司法取引を突きつけることになる。これは、この裁判の裁判官だったデヴィッド・バーネットが現在はアーカンソー州の上院議員になり、立場の悪くなった彼がAlford Pleaという酷な司法取引を突きつけたのではないか。「個人的にこのAlford Pleaこそが、犯罪のようなものだと思っている。アーカンソー州自体が、この司法取引を恥ずべきだと思う。この司法取引にデヴィッド・バーネットが直接かかわっているとは思わないが、このAlford Pleaこそがアーカンソー州の病原菌で、政治にかかわる重要な位置にいる人物たちが、真実を明かすことよりも、自分たちを守るためにこういった司法取引をすることは実に嘆かわしいことだ」と苦言を呈した。
この映画は現在、アカデミー賞ドキュメンタリー部門の15作品にリストアップされていて、批評家の間ではアカデミー賞ドキュメンタリー部門の最有力候補とささやかれている究極の一本だ。 (取材・文・細木信宏/Nobuhiro Hosoki)
いやぁ、これは楽しみですね。
是非アカデミー賞を受賞し、日本でも公開して欲しいですね。
以前のエントリーでもお話ししましたが、例えば、スティーヴン・キングの作品の影響や、J.D.サリンジャーの作品の影響だとか、猟奇的なホラー映画の影響だとかで殺人事件を起こしたりしてしまう、と言うマスコミの短絡的な思考には辟易としてしまいます。
これを機にこのような作品がたくさん公開され、マスコミの短絡的な思考に終止符を打って欲しいな、と思う今日この頃です。
余談ですが、どこかの映画祭で北野武は、「こんなにたくさんの暴力映画を撮ることにより、あなたは世界中に悪い影響を与えているのではないか」という質問をしたフランスメディアに対し、「世界中のほとんどの映画は、わたしの映画のように暴力を描くのではなく、愛や平和を描いている。しかし世界は一向に平和にならないし、悲惨な事件がたくさん起きている。だとしたら俺の映画なんか世界に何の影響も与えないんだよ」と答えたのを思い出します。
(これは、北野武の発言の正確な引用ではありません。念の為)
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