「エクソシスト」で「ホーンズ 角」を読み解くヒント
さて、皆さん、ジョー・ヒルの「ホーンズ 角」はもう読み終わったかな、と言う訳で、今日はジョー・ヒルの「ホーンズ 角」に関する余談。
「ホーンズ 角」
著者:ジョー・ヒル
訳者:白石朗
出版社:小学館(小学館文庫)
内容:「ハートシェイプト・ボックス」「20世紀の幽霊たち」などで着実のその地位を確立してきたモダンホラーの貴公子、ジョー・ヒルの最高傑作が誕生した。フランツ・カフカの「変身」に匹敵するプロローグから、息も尽かせない地獄の描写が、壮絶のラストシーンまで続いている。長編ホラーの歴史を変える、著者渾身の一撃!
さて、今日の本題。
「エクソシスト」で「ホーンズ 角」を読み解くヒント
さて、「ホーンズ 角」のどの辺が「エクソシスト」なのか、と言う話なのだが、本書の巻末に掲載されている霜月蒼氏の解説「悪魔を憐れむ歌」でも「エクソシスト」からの引用が紹介されている。
ほかにも、メリン(Merrin)の名の綴りが「エクソシスト」に登場する神父メリン(Merrin)と同じだったり、クライマックスのある場面がアルフレッド・ベスターの名作SF「虎よ、虎よ!」を思わせたりと、意味ありげなモチーフはあちこちに見ることができる。読者それぞれの発見(それが邪推にすぎなくても)によって、本書の味わいはずっと豊穣となるはずだ。そういった多様な読みを刺激する種が、あちこちに仕掛けられているというわけである。
ここで、霜月蒼氏は、「ホーンズ 角」のメリンについての言及に触れているが、実は「エクソシスト」にとってもっと重要なキャラクターが「ホーンズ 角」で引用されている。
そのキャラクターとは「エクソシスト」で悪魔に取り憑かれる少女リーガン(Regan)。
一方「ホーンズ 角」に登場するリーガン(Regan)はメリンの姉で20歳で亡くなっている。
リーガンは進行の早い珍しい種類の乳癌をわずらって、二十歳で死んだとのことだった。発見から死去まで、わずか四ヵ月だった。(p242)
そしてそのリーガンは死期が近づくと、メリンに汚い言葉を吐きかけるようになった。
「あの子はすごく苦しんでいたよ」デイルはいった。その次に吐いた息は妙な具合に震えていた。「その苦しみのせいで、あることないことをしゃべっていてね。ほとんどは口先だけの言葉だったと思う。あの子は根っからの善人だった。わが子ながらきれいだった。だからそういった面を思い出そうと努めはするんだが、思い出されてくるのは死期が近づいたころのあの子のことばかりだ。体重はかろうじて三十五、六キロになっていて、そのうち三十キロは憎しみの念だった。とても許せない言葉を、メアリーに吐きかけていたよ」(p609〜)
ここで「エクソシスト」を思い出してみよう。
皆さんご存じのように悪魔に取り憑かれたリーガンは汚い言葉を吐き続ける。
事実、IMDbの「エクソシスト」のMemorable quotes(記憶すべき引用/印象的なセリフ)の多くが四文字ワードで満ちている。
つまり、癌に冒されると、まるで悪魔に取り憑かれたかのように汚い言葉を吐き続ける、と言う事なのだ。
そう、「ホーンズ 角」では、癌を悪魔のメタファーとして使用している。
癌に冒されることは、悪魔に取り憑かれること。
そして、それを踏まえて「エクソシスト」のラストを基に「ホーンズ 角」の物語を考えると・・・・
ねっ、結構面白いでしょ。
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