「バードマン」もキングの影響を!?
今日は、全ての事象はスティーヴン・キングの影響を受けている、と言うキングファンの妄想的エントリー。
本日、遡上に乗せるのは、 アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督作品「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」。
2015年5月3日 TOHOシネマズシャンテで「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」を観た。
「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」
監督:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
脚本:アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ、ニコラス・ヒアコポーネ、アレクサンダー・ディネラリス・Jr、アルマンド・ポー
撮影:エマニュエル・ルベツキ
出演:マイケル・キートン(リーガン)、ザック・ガリフィナーキス(ジェイク)、エドワード・ノートン(マイク)、アンドレア・ライズブロー(ローラ)、エイミー・ライアン(シルヴィア)、エマ・ストーン(サム)、ナオミ・ワッツ(レズリー)、リンゼン・ダンカン(タビサ)あらすじ:かつて主演した大人気スーパーヒーロー映画「バードマン」のイメージが払拭できずに、その後は鳴かず飛ばずの俳優人生を送るリーガン。私生活でも離婚に娘サムの薬物中毒と、すっかりどん底に。そこで再起を期してレイモンド・カーヴァーの『愛について語るときに我々の語ること』を原作とする舞台を自ら脚色・演出・主演で製作し、ブロードウェイに打って出ることに。ところが、大ケガをした共演者の代役に起用した実力派俳優マイクの横暴に振り回され、アシスタントに付けた娘サムとの溝も深まるばかり。本番を目前にいよいよ追い詰められていくリーガンだったが・・・・。
さて、「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」のどの辺がキングの影響を受けているのか、と言う話だが、先ず印象的なのはリーガンの楽屋の前の廊下に敷かれているのがスタンリー・キューブリック監督作品「シャイニング」の舞台となったオーバールック・ホテルのカーペットの柄と酷似している。
ただし、そのカーペットの配色は暖色系から寒色系に変えられている。
リーガンは何度か登場するオーバールック・ホテルのカーペットの上を歩く度に少しずつおかしくなっていくのだ。
また、「バードマン」は「シャイニング」同様、一つの建物が舞台となっている。
リーガンにとってこの劇場はジャックにとってのホテルと同じで、ある種の触媒として機能しているのではないでろうか。
カーペットの配色が暖色系から寒色系に変わっているのは、ホラー映画とコメディ映画への変調の所以だろう。
そう考えた場合、「バードマン」の字幕が白ではなく黄色い文字だと言うことの謎も解けてくる。
当初は字幕の色は黄色だと言われていたが、実際は黄色よりは緑に近い色が使われている。ここで思い出すのは、キューブリックが日本版「シャイニング」に入れたぼかしの色が緑なのである。
これは偶然なんだろうか。
またタイトルやクレジットの "I" だが、"I" の上に点があり "i" のようになっているのも印象的である。
これは映画のタイトルだけではなく、全てのクレジットで、つまりエンド・クレジットの全ての "i" がそうなっている。まあ "j" もそうなっているのだが。
これも「シャイニング」への暗喩であろう。
ご覧のように、「シャイニング」も「バードマン」と同様に "I" が "i" になっている。
因みに「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」の原題は" Birdman : Or (The Unexpected Virtue of Ignorance)"である。
これは「博士の異常ない愛情 または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」("Dr. Strangelove or : How I Learned to Stop Worrying and Love the Bomb")に酷似している。これもキューブリック作品に対する暗喩であろう。
また物語のメインプロットだが、「バードマン」の物語のメインプロットは、俳優がなんとかして舞台をものにしようとして七転八倒する物語である。同様に「シャイニング」はご承知のように、作家がなんとかして戯曲をものにしようと七転八倒する物語だと言える。
そして「シャイニング」でジャック・トランスが執筆していた小説は、All work and no play makes Jack a dull boy. の繰り返しである。
これはサムがトイレットペーパーに書いていたものと酷似している。
またサムは「シャイニング」のダニー同様に感受性の優れた人物として描かれている。
ラストシーンを考えるとサムは "かがやき" を持っているのかも知れない。
余談だが「シャイニング」的には、リーガンの元妻シルヴィアは、結婚記念日に自宅のベッドで不倫しているのを目の当たりにして、バスルームに閉じこもった、と言うエピソードを語っている。
また、リーガンの酒の問題や、暴力的な部分も「シャイニング」のジャック・トランスを踏襲している。特に腕を振り回して歩くリーガンはジャックそっくりである。
また、全編に及ぶステディカムによる撮影も「シャイニング」への言及だと考えられる。
つらつらと書き連ねているが、「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」は大変な傑作である。
キングの影響を受けているかどうかはともかく、是非劇場で観ていただきたい。
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