「ヴァンパイアvsザ・ブロンクス」もキングの影響を
さて、本日も全ての事象はスティーヴン・キングの影響を受けている、と言うキングファンの妄想的エントリー。
本日、俎上に乗せるのは2020年10月2日にNetflixで配信が開始された「ヴァンパイアvsザ・ブロンクス」(2020)。
「ヴァンパイアvsザ・ブロンクス」
監督・脚本:オズ・ロドリゲス
出演:ジェイデン・マイケル(ミゲル)、ジェラルド・W・ジョーンズ三世(ボビー)、グレゴリー・ディアス四世(ルイス)、サラ・ガドン(ヴィヴィアン)、クリフ・“メソッド・マン”・スミス(ジャクソン神父)、シェー・ウィガム(フランク・ポリドリ)、ココ・ジョーンズ(リタ)、アダム・デヴィッド・トンプソン(アレクシス)
本作「ヴァンパイアvsザ・ブロンクス」の物語は、ニューヨークのブロンクスにヴァンパイアのコロニー構築を目的として移住を企むヴァンパイア軍団とブロンクスに住む3人の少年たちが対決する物語。
しかもこの物語で描かれるヴァンパイアは、ブラム・ストーカーの「吸血鬼ドラキュラ」に登場する吸血鬼の設定をそのまま現代に持ち込んだものだと言える。
それではそもそもブラム・ストーカーの「吸血鬼ドラキュラ」 の物語はどのような物語だっのたかと言う話だが、端的に言うとトランシルヴァニアに住む吸血鬼がロンドンに合法的に移住しようとする物語。
そう考えた場合、本作「ヴァンパイアvsザ・ブロンクス」の物語は「吸血鬼ドラキュラ」の基本プロットと吸血鬼の生態の設定を踏襲した上で、現代のニューヨークのブロンクスにクラシックなヴァンパイアが移住しようとする物語である。
そのヴァンパイアは当然ながら日光やニンニク、聖水や聖体(聖餅)、十字架に弱く、鏡には映らないし、招待されないと建物に入ることができない。
ところで、ここで興味深いのは、「ヴァンパイアvsザ・ブロンクス」 に登場するヴァンパイアたちは、フランク・ポリドリと言う男が経営するムルナウ不動産にブロンクス内の不動産を次々と買収させ、その不動産の跡地にヴァンパイアのコロニー(映画ではネスト)を構築しようとするのだ。
因みに、フランク・ポリドリが経営するムルナウ不動産のロゴマークには、串刺し公として知られ「吸血鬼ドラキュラ」のドラキュラのモデルの1人と言われているヴラド・ツェペシュの肖像画を図案化したイラストが使用されている。
また、フランク・ポリドリのポリドリは、世界最初の吸血鬼小説と言われる「吸血鬼」の作者ジョン・ポリドリからの引用であり、さらにムルナウ不動産のムルナウはドイツの映画監督F・W・ムルナウの引用である。ご承知の通りF・W・ムルナウは「吸血鬼ノスフェラトゥ」(1922)を監督している。
また、本作「ヴァンパイアvsザ・ブロンクス」には、登場人物がスティーヴン・キングの小説である「呪われた町」を読むシーンがある。
ご承知の通り「呪われた町」はキング自らが「吸血鬼ドラキュラ」 の文学的イミテーションだと語る作品で、アメリカの田舎町セイラムズ・ロットに吸血鬼が移住しようとする物語である。
つまり本作「ヴァンパイアvsザ・ブロンクス」は、ジョン・ポリドリ、F・W・ムルナウ、ブラム・ストーカー、スティーヴン・キング等に対するリスペクトに満ちたヴァンパイア映画だと言うことができる。
ところで本作「ヴァンパイアvsザ・ブロンクス」は、あえてジャンル分けをするとしたら、ティーン向けホラーコメディ作品であり、その雰囲気は「グーニーズ」(1985)やもちろんNetflix的には「ストレンジャー・シングス 未知の世界」(2016-2019)に近いと言える。
本作「ヴァンパイアvsザ・ブロンクス」は、3人の少年たちが知恵と勇気で700年以上生きているヴァンパイア軍団に対峙する物語なのだ。
本作は繰り返しになるがティーン向けのホラーコメディ映画ではあるが、観るべきところはたくさんある楽しい作品に仕上がっている。
関心がある方はぜひ。
「呪われた町」もぜひ。
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