カテゴリー「「ハイスクール・パニック」」の3件の投稿

2008/03/05

「ひぐらしのなく頃に」が殺人事件を引き起こしたのか?

2008/02/12に、livedoorニュースで、興味深いインタビュー記事が掲載されたので紹介する。

「ひぐらしのなく頃に」が殺人事件を引き起こしたのか?――東京大学特任講師・吉田正高氏に聞く

同インタビュー記事のリードを引用する。

未成年の少年少女が斧やナイフで家族を殺すというショッキングな事件が相次いでいる。そのたびに問題とされるのが、残虐な場面を含むアニメや漫画の影響だ。ときにはアニメ番組が放送休止になる場合もあるが、「過剰反応ではないか」との声もある。最近、事件との関連で注目された「ひぐらしのなく頃に」について、アニメやゲームなどのサブカルチャーに詳しい東京大学大学院情報学環の吉田正高・特任講師に聞いた。

――2007年9月に京都府京田辺市で16歳の少女が父親を斧で殺害するという事件が起きましたが、その影響でアニメ番組の「ひぐらしのなく頃に」「School Days(スクールデイズ)」が放送休止に追い込まれました。また08年1月上旬に青森県八戸市で、18歳少年が母親と弟と妹を殺害する事件が起きたときは、「ひぐらしのなく頃に」と思われる漫画本が警察に押収され、事件と漫画の関連性が取り沙汰されました。

実際に起きた殺人事件の報道に触れ、スティーヴン・キング作品をはじめとしたホラー小説、またホラー映画やホラーコミック、ホラーアニメはもとより、猟奇的な、また残虐な殺人シーンがたまたま含まれている作品を好む人々が、なんとも居心地の悪い気持ちを味わうことがある。

と言うのも、メディアは実際に起きた殺人事件の原因を短絡的に犯人が好んでいた作品や犯人の嗜好に結びつけ、その殺人事件があたかもその作品や作家の影響下にある、と言う論をセンセーショナルに唱える事があり、またその場合は、場合によってはその作品やその作品の作家が槍玉に上がり、作品や作家のバッシングや放映や上映の中止、不買運動が起こることもままある。

キング関連では、米国内で頻発するスクール・シューティングに悩んだキングが、スクール・シューティングを題材にした作品である「ハイスクール・パニック」の絶版を自ら決め、更に自分の作品リストからも外してしまったことも興味深い出来事だと思える。

一般的な論調である、ホラー作品と殺人事件には因果関係がない(猟奇的殺人事件における「環境決定論」の否定)、と考えるむきが大半を占めると思われるのだが、キング自身が、もしかして自作を読んだ少年少女が、スクール・シューティングを起こしてしまうような可能性が少しでもあるのならば、「ハイスクール・パニック」を絶版にしてしまおう、と言う論理には個人的に賛同しづらいが、一人の大ベストセラー作家が、スクール・シューティングの頻発に対し、少しでも影響力があるのならば、歯止めをかける側に回ろうと考えた点が非常に興味深い。

今回紹介したインタビュー記事の論調は、ホラー作品と殺人事件には因果関係がない、と言うありきたりの論理から、マスコミの批判まで及んでいるが、とりたてて目新しい点はない、と言えよう。

折角なので、キング関連のインタビュー部分を引用する。

吉田 私が視聴していたテレビ埼玉なんて、(アニメ「ひぐらしのなく頃に」が)13話で打ち切られて、いきなり「パタリロ西遊記!」になりましたからね……。でも、「ひぐらしのなく頃に」が事件の引き金になったかといえば、そんなことはないと思うんですよ。環境が犯罪を作り出すという「環境決定論」自体がそもそも間違っていると思いますし、人間の行動ってそんなに単純なものじゃないでしょ?

   鉈(なた)とか斧で人を殺す作品なんてほかにもたくさんあります。たとえばスティーブン・キングの「シャイニング」とかそうだし、ドストエフスキーの「罪と罰」だって斧で人殺しをする話ですよ。八戸の事件にしても、「ひぐらしのなく頃に」の漫画は累計で数百万部も売れているのだから、数ある本の中にあってもおかしくはない。一つの作品を見ただけで思い詰めて人を殺してしまうというのは、常識的には考えにくいでしょう。

余談ですが、スティーヴン・キングの「シャイニング」は鉈や斧で人は殺しませんね。
斧が出てくるのはスタンリー・キューブリックの「シャイニング」ですね。

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2008/02/25

「ハイスクール・パニック」

「二年前のことだ。そのころから、ぼくのあたまはおかしくなりはじめた・・・」

プレイサーヴィル・ハイスクールの最上級生である、ぼく(チャーリー・デッカー)は五月のある晴れた一日、教室で二人の教師を父のピストルで射殺した。あっというまのできごとだった。警官隊に包囲された、ぼくとクラスメートたちが体験する、まるで白昼夢のような、しかし緊迫した時間・・・。モダンホラーの巨匠スティーヴン・キングが高校生の不安な心の世界を鮮やかに描いた、異色の青春サスペンス小説!

「良い授業は一生のたからもの」

本作が書きはじめられたのは、キングがハイスクールの最上級生だったころ − チャーリー・デッカーと同年齢 − で、当時は "Getting It On" というタイトルで、「キャリー」が出版される2年前に、実際に出版されそうになった作品である。実際は、リチャード・バックマン名義で、1977年に出版された。

チャーリー・デッカーは知性と癇癪をあわせ持った少年である。デッカーは校庭の芝生にリスを見つけたある日、比較的大きな癇癪を起こす。知性に裏付けされていたであろう癇癪を。
教師を射殺し教室に立て篭もったデッカーは、教師や警官を論理的に愚弄し、ある生徒をクラスメイトの協力で破壊し、最終的には故意に警官に自分を射撃させる。故意にである。予定調和的な終焉を、ある意味裏切る印象的な結末である。

本作を読み返して感じたのは、これはキングによる「ライ麦畑でつかまえて」ではないか。ということである。デッカーとホールデンの奇妙な対比と相違に心が奪われる。ホールデンは、崖から落ちそうでそれに気付かない少年達を陰ながら助けることを望み、自らはある意味崩壊する。デッカーは自らの知性と癇癪で、多くの自覚しない生徒を救い、一人の生徒を破壊し、自らの崩壊を望むが、それも叶わない。

「シャイニング」では、J・アーヴィング的なアプローチがなされ、「ハイスクール・パニック」では、JD・サリンジャー的なアプローチが、そして「呪われた町」はブラム・ストーカーの文学的イミテーションであるとキングは自ら言い放つ。作家として独り立ちした頃の野心的なキングの文学への傾倒が見え隠れするような印象を受ける。

本作は、軽く目をつぶれば、非常に良く出来た小説である。「教育とは何か」「優れた教育者には何が必要か」という事柄を考えさせられる、良い小説である。全ての教育に携わる人達に読んで欲しい秀作である。

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2008/02/15

「ハイスクール・パニック」をめぐる冒険

先ずは、HARADAさんの「スティーヴン・キングの話」のエントリー「静かに葬られつつある"ハイスクール・パニック"」をご覧下さい。

ご承知のように、キングは「ハイスクール・パニック」を自身の出版リストから外し、絶版にしています。

わたしの記憶では、キングが「ハイスクール・パニック」を出版リストから外したのは、1998年か1999年の事だったと思います。当時、Shiroさんのサイト"Addicted to Stephen King"の掲示板で「ハイスクール・パニック」の絶版問題について、いろいろな話をした記憶があります。

キングは当時「もし、万が一、ほんのわずかでもこの作品がSchool Shootingに影響を与えた 可能性があるのであれば、私はこの作品を世に出したままにはしておきたくない」と言うステーツメントを発表していました。

さて、ここからが今日の本題です。

ところで、「ハイスクール・パニック」の原題はご承知のように、"RAGE"と言いますが、"RAGE"と言うキーワードで思い浮かぶ作品があります。

因みに、その作品をキングは2007年のベストムービーの第9位にあげています。

そうです。その作品の名は「28週後...」
フアン・カルロス・フレスナディージョ監督、ダニー・ボイル製作総指揮の大変素晴らしいホラー映画です。

折角なので、「28週後...」のシノプシスを紹介しましょう。

感染すると凶暴性を引き起こし他の人間に襲いかかる恐るべき新種ウイルス"RAGE(レイジ)"が猛威をふるったイギリス。ウイルス感染発生から5週後に最後の感染者が死亡、11週後には米軍主導のNATO軍が派遣され、ようやく再建が始まった28週後のロンドン。スペイン旅行中で難を逃れたタミーとアンディの姉弟も無事帰国し、軍の厳重な監視下に置かれている第1街区で父親ドンと感動の再会を果たす。しかしその場に母アリスの姿はない。彼女は、田舎のコテージに立て籠もっていた時、ドンの目の前で感染者に襲われてしまったのだった。母を恋しがる姉弟は、母の写真を取り戻すため第1街区を抜け出し我が家へと向かう。するとそこで姉弟は思いがけず生きているアリスと再会する。やがて軍医スカーレットの診断で、アリスがウイルスに感染しながらも発病していないキャリアだと判明、ワクチン開発への期待が膨らむが…。

どうでしょう。
わかりましたか?
そうです。なんと「28週後...」(「28日後...」含む)は、スティーヴン・キングの「ハイスクール・パニック」の影響を受けているのです!
(ちょっと妄想気味でしょうか・・・・)

そしてキングは、自作である「ハイスクール・パニック」の影響下にある作品「28週後...」を評価している、と言う複雑な状況になっているのです。

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