「十の罪業 BLACK」をめぐる冒険
今日は「十の罪業 BLACK」に関する余談。
「永遠」
ジェフリー・ディーヴァー著
土屋晃訳
本作「永遠」は、数学者にして、金融犯罪/統計担当の刑事タルボット・シムズと、巨漢を誇る絵に描いたような直情型の殺人課刑事グレッグ・ラトゥーアのバディ・ミステリーであり、タルとラトゥーアの凸凹コンビの登場篇といったようなエピソード。
ジェフリー・ディーヴァーと言えば日本では「ボーン・コレクター」をはじめとしたリンカーン・ライムシリーズで有名だが、本作「永遠」では新たなコンビの誕生が楽しめる。
物語は、数学と統計を愛するタルボット・シムズが、連続する不可解な自殺の真相に迫る、と言う物語で、中盤に若干問題はあるものの、非常に面白い物語が展開する。
感覚的に、ジャック・ケッチャムの「ロード・キル」に似ているような印象を受けた。
個人的にはこんな感じの小説は大好きである。
「彼らが残したもの」
スティーヴン・キング著
白石朗訳
中編が大前提の「十の罪業」の中で、ある意味異色の短編である。
物語は、アメリカ同時多発テロ事件における「生存者の罪悪感」をコンセプトとしたファンタジックな物語である。
本作「彼らが残したもの」で興味深いのは、映画に関する言及が多い事。
特にスタンリー・キューブリックの「ロリータ」に関する言及が多い。
ジョー・ヒルの「20世紀の幽霊たち」を読んだ今としては、キングはジョー・ヒルの影響を受けている、とも思えてしまう。
感覚としては、「アトランティスのこころ」の一遍のような印象を受ける。
「生存者の罪悪感」の贖罪の物語としては非常に面白く感動的なのだが、このようなアメリカ同時多発テロ事件から派生する物語を面白い、と言うことに罪悪感を感じてしまう。
例えば近年の日本人が、横山秀夫の「クライマーズ・ハイ」を手放しに面白い、と言うのがはばかれる、のと同様である。
アメリカ同時多発テロ事件や、日本航空123便墜落事故が実際の出来事ではなく、フィクションであったら、どんなに良いだろう、と思えてならない。
今日はここまで。
「十の罪業 RED」
「憎悪」エド・マクベイン〈87分署〉
「金は金なり」ドナルド・E・ウェストレイク〈ドートマンダー〉
「ランサムの女たち」ジョン・ファリス
「復活」シャーリン・マクラム
「ケラーの適応能力」ローレンス・ブロック〈殺し屋ケラー〉
「十の罪業 BLACK」
「永遠」ジェフリー・ディーヴァー
「彼らが残したもの」スティーヴン・キング
「玉蜀黍の乙女(コーンメイデン)——ある愛の物語」ジョイス・キャロル・オーツ
「アーチボルド——線上を歩く者」ウォルター・モズリイ
「人質」アン・ペリー
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