ゲーム『アラン・ウェイク』冒頭のスティーヴン・キングの言葉の引用はわずか1ドルで権利が譲渡された
2023年6月23日にEurogamer.netが伝えるところによると、2010年にリリースされたサイコロジカルアクションスリラーゲーム『アラン・ウェイク』の冒頭で主人公アラン・ウェイクが引用するスティーヴン・キングの言葉は、わずか1ドルでその権利が譲渡された模様。
なお、これは2023年10月にリリースされる『アラン・ウェイクII』のプロモーションの際に、ゲーム製作会社レメディー・エンターテインメントのクリエイティブ・ディレクター サム・レイクが明らかにした模様。
Stephen King gifted Alan Wake's opening quote to Remedy for just $1
なお、『アラン・ウェイク』(2010)冒頭のアラン・ウェイクのモノローグは次の通り。
"Stephen King once wrote that 'Nightmares exist outside of logic, and there's little fun to be had in explanations; they're antithetical to the poetry of fear.'
"In a horror story, the victim keeps asking 'why?' But there can be no explanation, and there shouldn't be one. The unanswered mystery is what stays with us the longest, and it's what we'll remember in the end. My name is Alan Wake, I'm a writer."
ちなみにこのスティーヴン・キングの言葉は、2008年のEntertainment Weeklyの記事からの引用。
"Stephen King: Why Hollywood can't do horror"
引用された部分("Nightmares exist outside of logic, and there's little fun to be had in explanations; they're antithetical to the poetry of fear.")の引用元が含まれているパラグラフは次の通り。
One more problem: Big movies demand big explanations, which are usually tiresome, and big backstories, which are usually cumbersome. If a studio is going to spend $80 or $100 million in hopes of making $300 or $400 million more, they feel a need to shove WHAT IT ALL MEANS down the audience’s throat. Is there a serial killer? Then his mommy didn’t love him (insert flashback). A monster from outer space? Its planet exploded, of course (and the poor misunderstood thing probably needs a juicy Earth woman to make sexy with). But nightmares exist outside of logic, and there’s little fun to be had in explanations; they’re antithetical to the poetry of fear.
ここでキングが語っているのは、ホラー映画において、恐怖の存在がそうなった原因を観客に説明してしまうと、その物語はホラーではなく単なる勢力争いの物語に矮小化されてしまう、と言うよくある問題について面白おかしく語っています。
この記事でキングは自身が感じる恐怖の本質がどこにあるのかを明らかにしていて非常に興味深いです。
また、キングが最も怖い瞬間として記憶しているのはこの記事によると、ジョージ・A・ロメロの『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(1968)で、ヒロインであるバーバラ(ジュディス・オーディア)が白髪のゾンビに追われて自動車に閉じこもるのですがが、すでにゾンビにやられてしまった兄ジョニー(ラッセル・ストライナー)が自動車のキーを持っていたことに気付き、そのゾンビは地面にしゃがみこみ、石を見つけてて弱々しく車の窓をたたき始めるところであったり、『ストレンジャーズ/戦慄の訪問者』(2008)で、ベッドの下に隠れようとするリヴ・タイラーがベッドの下は自分には狭すぎることに気付くところであったりするのが非常に興味深い。スティーヴン・キング作品でそれに似たような瞬間の描写が多々あるのが思い出されます。
話を戻しますが、スティーヴン・キングは若い映像作家に1ドルで自分の作品の映画化権を譲渡すること【ダラー・ベイビー】で知られていますが、今回の1ドルで自らの言葉を引用する権利を譲渡するのも、その一環なんでしょうね。
ダラー・ベイビー(Dollar Baby)またはダラー・ディール(Dollar Deal)とはスティーヴン・キングが学生や映画監督志望者を対象に自身の短編小説の映画化権を1ドルで与えるというもの、またそれによって製作された映画作品のこと。
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