『人間にとってもっとも「うつくしいこと」』直木賞作家 朱川湊人もキング好き!?
文藝春秋のサイトに掲載された直木賞作家朱川湊人のインタビューによると、朱川湊人もスティーヴン・キングファンらしい。
< 著者インタビュー >
『人間にとってもっとも「うつくしいこと」』
朱川湊人(しゅかわみなと 作家)
聞き手/「本の話」編集部
キングファン的に興味深い部分を引用する。
――表題作にもなっている「あした咲く蕾」は、人間の普遍的な想い、愛するものが命を失おうとしていると、自分の命を分けてでも救いたいという気持ちがテーマになっています。スティーヴン・キングの「ペット・セマタリー」は、死んだものを甦らせる話ですが、これはまさにホラーに主眼をおいた小説です。同じところから出発しても、朱川さんとキングはまったく違った味わいの小説になっています。
朱川 僕もキングは大好きです。「ペット・セマタリー」は不思議な小説で、奇怪なことが起きるまでが本当に怖いんです。ゲージという下の子供が生き返るまでが怖くて、その後は普通のホラー小説なんですよ。もちろん好きな小説です。
――小学校、中学校でプレハブ校舎はあちこちにありました。
朱川 子供が多い時代でしたから、きちんとした校舎を建てるのが間に合わなくってということですよね。少子化のこれからはありえないものですね。
小説にこういう言葉がたくさん出てくるので、世代によっては「朱川さんの言っていることは古くてぜんぜんわからない」という人もいるようです。まあ、そういう方は時代小説のような気持ちで読んでいただけるといいかもしれません(笑)。僕の作品で『わくらば日記』(角川書店刊)というのがあります。昭和三十二年くらいからのことを書いているんですが、僕も調べたり人に聞いたりして、自分の頭の中で時代をつなげて書き進めています。インターネットで書評ブログなどをみると、古い話なんでピンと来ないという意見があります。
それはそれで仕方のないことですね。それは、時代小説や海外の小説も同じだと思います。スティーヴン・キングの小説には、その世代しか知らないようなキーワードがよく出てきます。ましてや、僕ら日本の読者は国が違うわけですから何のことやら、ですね。アメリカのキングの同世代が読めば、ああこれこれ、ということなんでしょう。キングに「アトランティスのこころ」という作品があります。この中にはそういうキーワードがいっぱい出てくるんです。日本の読者もある程度想像してわかるかもしれないけれど、アメリカ人のようにはわからないはずです。僕自身、スティーヴン・キングの信奉者なんですけれど、そういうある世代だけには直撃するようなことを書きたいというのはありますね。
――キングも朱川さんの作品も特定の単語の背景はわからなくても小説として面白く読めます。
朱川 それはいつも心がけています。この時代のこれがわからなかったら作品の価値がわからないということは極力ないようにしています。
――「スメラギの国」は長篇ですが、朱川さんは長篇をお書きになるのはお好きなんですか。
朱川 僕はスティーヴン・キングが好きなので、長篇を書こうとすると彼のように、やたら長く書いちゃうんですよ。そこが欠点ですね。他社で刊行予定で千枚を超えているものがあります。あと今進めているもので六百枚を超えているものもあります。一人称だと長篇は書きにくいじゃないですか、だから複数の視点から書くんですが、そうするとものすごく長くなるんです。
――人称の話が出ましたが、朱川さんの作品は一人称が多いですね。
朱川 三人称で書くこともありますが、過去を振り返る話では一人称が一番書きやすいですね。
作家ではキングも好きですが、僕は太宰治も好きなんですよ。一人称の作品ですね。中学のときにはまりまして、その影響があります。だから、太宰のように女性の一人称を使うのにも何の抵抗もないです。
いかがだろうか。
3ページにわたる長めのインタビュー記事なのだが、思いのほかキングに関する話題が多く驚いた。
キングの作品が好きだ、と言う話だけではなく、キングの作風に関する言及等も興味深い。
また、ホラーと不思議の話とか、ジャンル小説に対するアンチテーゼとか、私小説的なアプローチとか・・・・。
まあ、これ以外にも非常に興味深い話が語られているので、是非読んでいただければ、幸いである。
朱川湊人が自らをスティーヴン・キングの信奉者だと語るのには驚いた。
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