「セル」
「セル」
監督:トッド・ウィリアムズ
原作:スティーヴン・キング
脚本:スティーヴン・キング、アダム・アレッカ
出演:ジョン・キューザック(クレイ)、サミュエル・L・ジャクソン(トム)、イザベル・ファーマン(アリス)、オーウェン・ティーグ(ジョーダン)、クラーク・サルーロ(シャロン)、アンソニー・レイノルズ(レイ)、エリン・エリザベス・バーンズ(デニス)、ステイシー・キーチ(アーダイ校長)
映画「セル」はホラー映画としてたいへん面白かった。
昨今のホラー映画の問題点は、なぜそのようなことが起きているのか、その原因が明確に描かれてしまい、それ以降は、ある種の善と悪とのただの勢力争いを描くことに終始してしまっている。
一方「セル」は、怪異の原因を明確に描くことが行われていないのだ。
小説「セル」はリチャード・マシスンとジョージ・A・ロメロに捧げられていることもあり、映画「セル」物語としてはリチャード・マシスンの「地球最後の男」を近代的に転回したものだと考えることができる。
しかしながら本作は尺が短く、本来描かれるべきだったクレイ等の "携帯人" 殺戮の道程がほとんど描かれないため、その傾向が伝わってこない。
と言うのも、原作ではクレイ等がアーダイ校長と出会うまでに、クレイ等は "携帯人" の生態を少しずつ理解し、その旅の途中で "携帯人" を殺戮し続けているのだ。
そこで「地球最後の男」のテーマ、怪物を退治し続ける自分こそが怪物だったのだ、が立ち上がってくる、はずだった。そこが残念でならない。
世界観はポスト・アポカリプス感が非常に心地よい。
また、いかれた世界を生き抜くいかれたキャラクター達が好印象である。
「マッドマックス 怒りのデス・ロード」に感じられなかった "マッド" な部分が噴出している。
興味深いのは、いかれたキャラクターばかりを演じているサミュエル・L・ジャクソンが知性的で論理的な真っ当な人物を演じている点である。他のキャラクターはある種いかれたキャラクターばかりなのにも関わらず、である。
特に、後半部分に登場するアンソニー・レイノルズ演じるレイが強烈な印象を残す。
またもう少し尺があれば、ステイシー・キーチ演じるアーダイ校長の狂気性、マッド・サイエンティスト的な側面がもう少し描けたのではないか、と思えてならない。
本作「セル」はスティーヴン・キング印の地雷臭はするものの、素晴らしい作品に仕上がっている。上映終了間近だとは思うが、機会があれば是非。
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