2021年6月27日

Netflix「クイーンズ・ギャンビット」の原作小説の翻訳は2021年6月発売

Photo_20210627110801 世界中で大ヒットを続けているNetflixのテレビムービー「クイーンズ・ギャンビット」(2020)の原作小説の翻訳「クイーンズ・ギャンビット」が2021年6月24日に新潮社から出版される模様。

「クイーンズ・ギャンビット」
著者:ウォルター・テヴィス
翻訳者:小澤身和子
出版社:新潮社 新潮文庫刊
発売日:2021年6月24日

内容紹介:孤児院で育った少女ベス。用務員にチェスを習い天賦の才を開花させた彼女は、やがてウィートリー夫人に引き取られ、各地の大会で強豪プレイヤーを相手に次々優勝、男性優位のチェス界で頭角を現す。孤児院で与えられた安定剤と、アルコールへの依存とも闘いながら、ベスはついにソ連の大会で最強の敵ボルゴフに挑む――。世界的な大ヒットドラマの原作となった、天才少女の孤高の挑戦を描く長編。

なお、ウォルター・テヴィスは「ハスラー」(1959)、「地球に落ちてきた男」(1963)、「モッキンバード」(1980)等で知られる小説家。寡作の作家だが多くの作品が映像化されている。

なお小説「クイーンズ・ギャンビット」は1983年発表作品。
テレビムービー「クイーンズギャンビット」は2020年作品。全7話。

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2021年6月26日

ジョー・ヒルのチャリティイベントがすごい

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2021年6月17日にハーパーコリンズ・ジャパンから短篇集「怪奇疾走」が発売されたばかりのジョー・ヒルだが、彼がスケルトン・クルー・スタジオ(Skelton Crew Studio)と行なっているチャリティイベントがすごい。

現在のところ、全74種類のジョー・ヒルのサイン本がチャリティイベントの一環として販売されている模様。

なお、このチャリティイベントでは収益の100%が、Redfearn Hill Charity Fundに寄付され、教育、環境、社会等のさまざまな用途に資金を提供する模様。

Skelton Crew Studio LLC Joe Hill Charity Event 

スケルトン・クルー・スタジオのジョー・ヒルのチャリティイベントのページ

JOE HILL 2021 CHARITY EVENT 8: SIGNED FULL THROTTLE PB 

ジョー・ヒルの「怪奇疾走("FULL THROTTLE")」のペーパーバックのチャリティイベントのページ。

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驚いたことに、「ファイアマン(下)」(小学館文庫)のサイン本まで販売されている。

なお、日本国内でもジョー・ヒルのサイン本を購入することが出来るが支払いはPayPalのみ。

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2020年11月28日

なんとシャーリイ・ジャクスン原作の「ずっとお城で暮らしてる」はWOWOWストレート

日本公開が待たれていたシャーリイ・ジャクスン原作の映画「ずっとお城で暮らしてる」(2019)だが、なんと劇場公開されずWOWOWストレートになってしまった模様。

「ずっとお城で暮らしてる」
監督:ステイシー・パッソン
製作:ジャレッド・ゴールドマン、ロバート・ミタス
原作:シャーリイ・ジャクスン
脚本:マーク・クルーガー
出演:タイッサ・ファーミガ(メリキャット)、アレクサンドラ・ダダリオ(コンスタンス)、クリスピン・グローヴァー(ジュリアン)、セバスチャン・スタン(チャールズ)

あらすじ:地方にある大きな屋敷。18歳のメリキャットは6年前ヒ素を盛って両親などの家族を殺したと思われている姉コンスタンスを愛し、事件以来車いすに乗るようになった伯父ジュリアンと3人で暮らしている。姉妹は同じ村の住民たちからは忌み嫌われているが、メリキャットは魔法を信じることで現実逃避をしがちだった。ある日いとこのチャールズが屋敷を訪れしばらく滞在することになった。コンスタンスは彼と親しくなっていくが・・・・。

シャーリイ・ジャクスンの「ずっとお城で暮らしてる」は日本国内でもカルト的な人気を誇る作品なだけに劇場公開されないのは非常に残念だが、昨今の新型コロナウィルスの影響を考えると、劇場公開はともかく、日本国内で放送されることだけでも幸運だと考えるべきなのかも知れない。

今回の「ずっとお城で暮らしてる」 だが予告編を観る限り、姉妹の年齢層が少し高く見えるような印象を受ける。

WOWOWでの放送予定は次の通り。

2021年1月28日(木)21:00 WOWOWシネマ 日本国内初放送

 

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2020年11月17日

リチャード・マシスンの「二万フィートの悪夢」の3度目の映像化作品「三万フィートの戦慄」が独占日本初放送

Twilightzone_20201116153101 2020年11月23日からスーパードラマTVで独占日本初放送される「トワイライト・ゾーン」(2019)の第2話として、リチャード・マシスンの短篇「二万フィートの悪夢」("Nightmare at 20,000 Feet")の3度目の映像化作品「三万フィートの戦慄」("Nightmare at 30,000 Feet")が11月30日に独占日本初放送される。

「二万フィートの悪夢」
著者:リチャード・マシスン
訳者:尾之上浩司
出版社:早川書房 ハヤカワ文庫NV「運命のボタン」に収録。
初出:"Alone by Night"(1961) "Nightmare at 20,000 Feet"

「三万フィートの戦慄」
監督:グレッグ・ヤイタネス
原作:リチャード・マシスン
脚本:マルコ・ラミレス
出演:アダム・スコット、クリス・ディアマントポロス、ケイティー・フィンドレイ

あらすじ:ジャーナリストのジャスティン(アダム・スコット)は取材のため、飛行機でワシントンDCからテルアビブへ向かおうとしていた。空港から妻に電話すると渡航に反対だと言う。実はジャスティンは以前、イエメンでの取材で精神的ショックを受けPTSDに苦しんでいた。精神科医から教わった「過去は過去」という言葉を呪文のように唱えジャスティンは機内に乗り込む。

さて先ほどお話ししたように今回の「トワイライト・ゾーン」(2019)の第2話「三万フィートの戦慄」はリチャード・マシスンの短篇小説「二万フィートの悪夢」の3度目の映像化である。 

1度目の映像化は、日本国内では「未知の世界」または「ミステリー・ゾーン」と言うタイトルで放送された"Twilight Zone"(1959-1964)の第123話(シーズン5 第3話)「二万フィートの戦慄」("Nightmare at 20,000 Feet")。

Nightmareat20000feet1963 「二万フィートの戦慄」("Nightmare at 20,000 Feet") (1963)
監督:リチャード・ドナー
原作:リチャード・マシスン
脚本:リチャード・マシスン
出演:ウィリアム・シャトナー、クリスティン・ホワイト

あらすじ:6か月の入院を終え、退院したばかりの男(ウィリアム・シャトナー)は、飛行機で家路につく。だが、窓の外を見ると、翼の上に生き物が乗っているのを目にする。男は驚いて妻(クリスティン・ホワイト)に話すのだが・・・・。

本作「二万フィートの戦慄」(1963)は、クリーチャーの造形は残念ながら今ひとつなのだが、ウィリアム・シャトナーの鬼気迫る演技が大変素晴らしく、現在までも非常に評価が高い作品である。

Nightmareat20000feet1963_2 「宇宙大作戦」("Star Trek")(1966-1969)においてエンタープライズ号のカーク船長を演じたウィリアム・シャトナーの狂気に満ちた演技が素晴らしい。特にこの目がギラギラとした感じが素晴らしい。

興趣をそぐのでクリーチャーの写真は紹介しないが、ウィリアム・シャトナーの演技が良い分、クリーチャーの造形といい動きといい、もうちょっとなんとかならなかったのか、と思えてならない。

さて2度目の映像化だが、これはなんとスティーブン・スビルバーグ、ジョン・ランディス製作の映画「トワイライトゾーン/超次元の体験」(1983)の第4話「2万フィートの戦慄」("Nightmare at 20,000 Feet") (1983)。

Nightmareat20000feet1983 「2万フィートの戦慄」("Nightmare at 20,000 Feet") (1983)
製作:スティーブン・スピルバーグ、ジョン・ランディス
監督:ジョージ・ミラー
原作:リチャード・マシスン
脚本:リチャード・マシスン
出演:ジョン・リスゴー、アビー・レーン、ドナ・ディクソン、ジョン・デニス・ジョンストン、クリスティナ・ニグラ、チャールズ・ナップ、ダン・エイクロイド

あらすじ:飛行機恐怖症のジョン・ヴァレンタイン(ジョン・リスゴー)は、飛行中の旅客機内でパニックに襲われていた。気遣うスチュワーデスに大丈夫だと言ったものの、恐怖感は鎮まらない。落ち着くための喫煙は咎められ、新聞を開けば見出しは「史上最悪の飛行機事故」。周囲の客は彼の神経をいら立たせ、外では雷鳴が轟き、稲光が走る。気分転換に窓の外を覗いた彼は、異様なものを目にする。

Nightmareat20000feet1983_2 本作「2万フィートの戦慄」(1983)は映画「トワイライトゾーン/超次元の体験」(1983)のトリを飾る作品でもあり、これまた評価が高い作品である。オリジナル版のウィリアム・シャトナー顔負けの鬼気迫る演技のジョン・リスゴーが素晴らしい。

また、オリジナル版にあった若干おかしな点を修正し、かつクリーチャーの造形も動きも素晴らしい作品に仕上がっている。

また例によってクリーチャーの写真は紹介しないが、本作「2万フィートの戦慄」(1983) では映画史に残る素晴らしいクリーチャーの仕草が楽しめる。

さて今日の本題3度目の映像化は、前述のように「トワイライト・ゾーン」(2019)の第2話「三万フィートの戦慄」("Nightmare at 30,000 Feet")。

Nightmareat30000feet 「三万フィートの戦慄」("Nightmare at 30,000 Feet")
監督:グレッグ・ヤイタネス
原作:リチャード・マシスン
脚本:マルコ・ラミレス
出演:アダム・スコット、クリス・ディアマントポロス、ケイティー・フィンドレイ
ホスト:ジョーダン・ピール

あらすじ:ジャーナリストのジャスティン(アダム・スコット)は取材のため、飛行機でワシントンDCからテルアビブへ向かおうとしていた。空港から妻に電話すると渡航に反対だと言う。実はジャスティンは以前、イエメンでの取材で精神的ショックを受けPTSDに苦しんでいた。精神科医から教わった「過去は過去」という言葉を呪文のように唱えジャスティンは機内に乗り込む。

今回の「トワイライト・ゾーン」(2019)の特筆すべき点は米CBSの配信サイトCBS All ACCESSで配信限定で製作されている点とホスト役として「ゲットアウト」(2017)、「アス」(2019)等のジョーダン・ピールが全エピソードに登場する点。

イメージとしては「世にも奇妙な物語」のタモリのようなホスト役をジョーダン・ピールがつとめていると考えるとわかりやすいと思う。

さらに驚いたことに、今までは高度2万フィートだったのに、今回はなんと高度3万フィートになってしまっている。

そして、もちろんわたしはまだ本編を観ておらず、予告編を観る限りなので確かな事は言えないのだが、どうやら今回の「三万フィートの戦慄」はウィリアム・シャトナーのオリジナル版、ジョン・リスゴーのリメイク版とは全く異なったアプローチをしているようなのだ。

これはたいへん楽しみな状況である。

関心がある方はぜひスーパードラマTVで。

放送予定は次の通り。

2020/11/30(月) 22:00
[二]「トワイライト・ゾーン」第2話「三万フィートの戦慄」/"Nightmare at 30,000 Feet"

2020/11/30(月) 24:00
[字][5.1ch]「トワイライト・ゾーン」第2話「三万フィートの戦慄」/"Nightmare at 30,000 Feet"

Photo_20201117193101 最後にわたしが体験した「二万フィートの悪夢」 を紹介する。

あの日はちょっとヤバかった。

 

 

 

 

 

 

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2020年10月28日

「世界の終わりの天文台」を映画化した「ミッドナイト・スカイ」は2020年12月23日よりNetflixで配信開始

Midnightsky リリー・ブルックス=ダルトンの「世界の終わりの天文台」をジョージ・クルーニーが映画化した「ミッドナイト・スカイ」だが、2020年12月23日よりNetflixで配信が開始されることが決定した。

「ミッドナイト・スカイ」
監督・製作:ジョージ・クルーニー
脚本:マーク・L・スミス
原作:リリー・ブルックス=ダルトン 「世界の終わりの天文台」(創元海外SF叢書)
出演:ジョージ・クルーニー(オーガスティン)、フェシリティ・ジョーンズ(サリー)、デビアン・ビチル(サンチェス)、カイル・チャンドラー(ミッチェル)、デビッド・オイェロウォ(アドウォール)

「世界の終わりの天文台」
著者:リリー・ブルックス=ダルトン
訳者:佐田千織
装画:加藤直之
装幀:岩郷重力+WONDER WORKZ。
出版:東京創元社(創元海外SF叢書)

物語:どうやら、人類は滅亡するらしい。最後の撤収便に乗らず、北極圏の天文台に残ることを選んだ孤独な老学者オーガスティンは、取り残された見知らぬ幼い少女とふたりきりの奇妙な同居生活を始める。一方、帰還途中だった木星探査船の乗組員サリーは、地球からの通信が途絶えて不安に駆られながらも、仲間たちと航行を続ける。終末を迎える惑星の片隅で、孤独な宇宙の大海の中で、長い旅路の果てにふたりは何を失い、何を見つけるのか?終わりゆく世界を生きる人々のSF感動作。

「世界の終わりの天文台」翻訳は2018年1月に刊行されている。当時SNSで結構話題になっていたこともあり書店で探したのだが、本書は海外SFコーナーではなくなぜか自然科学のコーナーにあったのを覚えている。


ジョージ・クルーニー主演『ミッドナイト・スカイ』予告編 - Netflix 

「ミッドナイト・スカイ」のNetflixでの配信開始は12月。それまでの間に機会があればぜひ原作も。

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2020年10月 4日

創元推理文庫の名作ミステリ新訳プロジェクトでフレドリック・ブラウンの「シカゴ・ブルース」が!

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2020年9月30日 創元推理文庫の名作ミステリ新訳プロジェクトの一冊としてフレドリック・ブラウンの「シカゴ・ブルース」が刊行された。

「シカゴ・ブルース」
著者:フレドリック・ブラウン
訳者:高山真由美
装画:安藤巨樹
出版:東京創元社 創元推理文庫刊

内容紹介:シカゴの路地裏で父を殺された18歳のエドは、おじのアンブローズとともに犯人を追うと決めた。移動遊園地(カーニバル)で働く変わり者のおじは刑事とも対等に渡り合い、雲をつかむような事件の手がかりを少しずつ集めていく。エドは父の知られざる過去に触れるが──。少年から大人へと成長する過程を描いた巨匠の名作を、清々しい新訳で贈る。アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀新人賞受賞作。 解説=杉江松恋

海外小説ファンの中には、その読書人生の冒頭にフレドリック・ブラウン作品があった人が多いと思う。

かく言うわたしも例外ではなく、わたしの読書人生が始まった頃、フレドリック・ブラウンのSFやミステリーをよく読んでいた。わたしのブラウンとの出会いは小学5年生の頃だと思う、当時気になっていた女の子に「天使と宇宙船」「SFカーニバル」を借りて読んだのが初めてだった

そこから小遣いをためてはフレドリック・ブラウンのSF短編集を皮切りに、SFだけではなくミステリーに触手を伸ばして行ったのを覚えている。20201004-130822

そのフレドリック・ブラウンのミステリーの代表作の一つが「シカゴ・ブルース」(1947)である。

手元には写真の通りSFしかないのだが、わたしが読んだのは、実家のどこかにあると思うが、1971年に創元推理文庫に入った青田勝訳の「シカゴ・ブルース」だった。

わたしの読書人生のスタート地点に存在した1947年作品「シカゴ・ブルース」が、いま時を経て2020年に高山真由美の新訳で読めるとは、なんとも感慨深い。

本書の解説は杉江松恋。

その解説の冒頭の一文に様々な思いが去来する。 

これは、エド・ハンターがトロンボーンを手に入れるまでの物語である。

こんな解説の一文に泣かされてどうするのだ。

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2020年5月 8日

「魔界探偵ゴーゴリ」

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ロシア国内興収No.1の映画「魔界探偵ゴーゴリ」三部作を観た。

  • 「魔界探偵ゴーゴリ」三部作とは、ロシアの文豪ニコライ・ゴーゴリがダークヒーローとなり難事件に挑むミステリーで、ロシア版シャーロック・ホームズ×ハリー・ポッターともいわれている。

    「魔界探偵ゴーゴリ 暗黒の騎士と生け贄の美女たち」(2017)
    「魔界探偵ゴーゴリⅡ 魔女の呪いと妖怪ヴィーの召喚」(2018)
    「魔界探偵ゴーゴリⅢ 蘇りし者たちと最後の戦い」(2018)

監督:イゴール・バラノフ
出演:アレクサンダー・ペトロフ(ゴーゴリ)、オレグ・メンシコフ(グロー)、ユリア・フランツ(オクサーナ)、セルゲイ・バディク(ヴァクーラ)、イフゲニー・スティチキン(ビンク)、アルチョム・トカチェンコ(ダニシェヴェスキー伯爵)、タイーシャ・ヴィルコヴァ(リザ)

1829年、サンクトペテルブルク。
駆け出しの作家ニコライ・ゴーゴリは腕の立つ探偵グローと知り合い、2人は若い美女だけが狙われる連続猟奇殺人事件の捜査の為にウクライナの小さな村、ディカーニカへ出発する。
探偵グローは2つの理由からゴーゴリを同伴者として選んでいた。1つはゴーゴリがディカーニカの近くで生まれ土地勘を持っていたこと、もう1つはゴーゴリが神秘な力を持ち、異世界の者と繋がることができたから。ゴーゴリは自分でもコントロールができない悪夢の力によって、容疑者として浮かび上がった“黒騎士” と事件の真相に近づいていく。そして自分が何者なのか、起源を明らかにしていくが・・・・。

先ず驚いたのは、物語の基本プロットは探偵グローと記録官吏ゴーゴリのバディものなのだが、その二人の吹替えがBBCの「SHERLOCK(シャーロック)の吹替えと同様の森川智之(ゴーゴリ)、三上哲(グロー)で、しかもスコアもBBCの「SHERLOCK」の雰囲気を踏襲していると思われ、かつゴーゴリやグローと警察署長ビンクとの掛け合いも「SHERLOCK」の雰囲気を醸し出している。

もちろん「魔界探偵ゴーゴリ」はBBCの「SHERLOCK」を意識しているのだとは思うが、その手法に全く違和感がなくおそらく日本のファンの中には「魔界探偵ゴーゴリ」「SHERLOCK」の二次創作のような印象で受け取っているファンもいるのではないか、と思える。

またキャラクターも見事にキャラ立ちしており、ゴーゴリの文学というメインカルチャーの文脈ではなくサブカルチャーとしての文脈やライトノベル、中二病的な感覚も感じられる。

このあたりと本作「魔界探偵ゴーゴリ」三部作の今後の行く末を考えると「文豪ストレイドッグス」の方向性も見えてきている。

また物語の構成としては、まあ想定内だが本作「魔界探偵ゴーゴリ」三部作は、ニコライ・ゴーゴリの様々な実在の著作からの引用や言及が頻繁に行われている。

例えば冒頭では、ゴーゴリがV・アロフ名義で自費出版したガンツ・キュヘリガルテン」を回収し焼き捨てるシーンがあったり、中盤以降には「鼻」のない男が出てきたり、本筋とは関係ないが「外套」を修理しようとしているエピソードが語られ、また「魔界探偵ゴーゴリⅡ 魔女の呪いと妖怪ヴィーの召喚」 ではタイトルにもなっている通り「ヴィー」の有名なシークエンスがそのまま引用されている。

もちろん「魔界探偵ゴーゴリ」三部作の舞台となるのはディカーニカであり 「ディカーニカ近郷夜話」からの引用も多く、驚いたことに今回の事件を基に著されたと思われる短篇集「ディカーニカ近郷夜話」の朗読会サイン会を実施している描写まである。

これは逆説的にこの「魔界探偵ゴーゴリ」事件の経験がゴーゴリが著作を著す原因になっている、という構造も楽しめる。

さて本作だが、前述の通り物語の基本プロットは、サンクトペテルブルクの著名な探偵グローと駆け出しの作家の記録官吏ゴーゴリが小さな村ディカーニカで起きている超自然的な連続猟奇殺人事件を捜査する、と言う物語だが、それにリアリティを付与する美術が大変素晴らしい。

キャストについてはロシア人俳優についてはあまり詳しくないのだが、ゴーゴリにしろグローにしろビンクにしろ脚本も相まってかキャラ立ちが顕著なのが興味深い。

また、ホームズとワトソンに対比するキャラクターは本作ではグローとゴーゴリなのだが、主役はグローではなくあくまでもゴーゴリであり、今後の物語の行く末を考えた場合のグローとゴーゴリの関係性が非常に興味深い。

関心がある方は是非!

特にゴーゴリの著作好きの方、BBCの「SHERLOCK」好きの方へ。

余談だが、ゴーゴリの外見はゴーゴリの肖像画に寄せている。

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ニコライ・ゴーゴリの肖像(F.A.モレル筆・1841年)

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ゴーゴリ(左)とグロー(右)

 

 

 

 

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2019年12月14日

「トイ・ストーリー4」のウッディは人魚姫だったのか

ちょっと前の話だが2019年7月日本公開の「トイ・ストーリー4」(2019)を観て驚いた。これじゃまるでウッディは人魚姫みたいじゃないか。

「トイ・ストーリー4」のウッディのどのあたりが人魚姫なのか、と言う話なのだが、その前に気になるアンデルセンの「人魚姫」をモチーフとしたと思われる作品を何点か紹介したい。アンデルセンの「人魚姫」の物語はみなさんご存知ですよね。物語の紹介は割愛します。

先ずは「ジョゼと虎と魚たち」(2003)。

「ジョゼと虎と魚たち」のヒロインであるジョゼは足が不自由で、言葉使いが悪く関西弁を話す。

なぜジョゼは足が不自由で言葉使いが悪いのか。
それはジョゼが元々は人魚姫で王子様に出逢うために、魔法で魚の尻尾を足にしてもらい、きれいな言葉を失ったから。

続いて「シェイプ・オブ・ウォーター」(2017)。

「シェイプ・オブ・ウォーター」のヒロインであるイライザは言葉が不自由で手話で会話をする。

「シェイプ・オブ・ウォーター」の予告編やポスターを観て、どうやら人間が半魚人のようなクリーチャーと恋をする物語だと言うことがわかる。監督のギレルモ・デル・トロは「大アマゾンの半魚人」をモチーフにして、半魚人と人間の女性はなぜ恋に落ちないのか、そのあたりを含めて、この物語を発案している。

なぜイライザは言葉が不自由なのか。
それはイライザが元々は人魚姫で王子様に出逢うために、魔法で魚の尻尾を足にしてもらい、言葉を失ったから。

なんと、その解釈は驚くべき事にあたってしまう。

さて「トイ・ストーリー4」(2019)のウッディである。

「トイ・ストーリー4」の物語を「人魚姫」的に解釈すると、ウッディは持ち主がいないおもちゃと言う生き方を選択したボー・ピープに憧れ、トーキング・ボックス、つまり声を失う事で自由(ここでは足のメタファ)を手に入れる。

私はかねがね、海外の作品を解釈する上で、「聖書」「オズの魔法使い」「スター・トレック」の知識が不可欠だ、という話を折あるごとにしているが、近年は「人魚姫」の知識が必要な時代になって来たようである。

「ジョゼと虎と魚たち」「シェイプ・オブ・ウォーター」「トイ・ストーリー4」の3本は素晴らしい作品である。
機会があれば「人魚姫」の事を考えながら観てみていただきたい。

 

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2019年5月 1日

「スパイダーマン:スパイダーバース」は「初秋」なのか

Spiderverse

2019年3月8日に日本公開された「スパイダーマン:スパイダーバース」を観た。

本作「スパイダーマン:スパイダーバース」 は、ピーター・パーカー亡き後新たなスパイダーマンになる決意をしたマイルス・モラレスと他の次元(スパイダーバース)に存在する多くのスパイダーマンたちの物語。

主人公のマイルス・モラレスはブルックリン生まれの13歳。マイルスは遺伝子操作された蜘蛛に噛まれスパイダーパワーを手に入れる。キングピンに倒されたピーター・パーカーの遺志を継ぎスパイダーマンとして生きる決意をするのだが、いかんせんスパイダーパワーの経験やノウハウに乏しい。

一方、ピーター・パーカーを倒したキングピンは失った家族を復活させるため、異次元への扉を開き家族を召喚しようとしていた。

その異次元への扉を通って何人ものスパイダーマンがマイルスの世界にやってくるのだが・・・・

さて、今日の本題だが「スパイダーマン:スパイダーバース」 のどのあたりが「初秋」なのか、と言う話なのだが、まあこの時点で既におわかりの方もいらっしゃると思うのだが、キーワードとしては、異次元からやって来たスパイダーマンの1人の名前がピーター・B・パーカーである、と言うところ。

ピーター・パーカーに対する異次元のスパイダーマンと言うことで、Bをつけてピーター・B・パーカーと言うのは十分理解出来るのだが、なぜわざわざBにしたのか。「スタートレック」におけるNCC-1701に対してのNCC-1701Aと言うように、Aで良かったのではないか、フィクションならAにするだろ、と言う気がする。

そう考えた場合、これはロバート・B・パーカーへの言及だとしか思えない。尤もピーター・B・パーカーと言われれば、多くの人はロバート・B・パーカーを想起するのではないだろうか。もちろんホンヤクモンスキー的には。

そしてロバート・B・パーカーと言えば私立探偵スペンサーシリーズだろうし、スペンサーシリーズの代表作はなんといっても「初秋」だろう。

そんな「初秋」のあらすじは次の通り。

 離婚した夫が連れ去った息子を取り戻してほしい。スペンサーにとっては簡単な仕事だった。が、問題の少年、ポールは彼の心にわだかまりを残した。対立する両親の間で駆け引きの材料に使われ、固く心を閉ざして何事にも関心を示さない少年。スペンサーは決心する。ポールを自立させるためには、一からすべてを学ばせるしかない。スペンサー流のトレーニングが始まる。人生の生き方を何も知らぬ少年と、彼を見守るスペンサーの交流を描き、ハードボイルドの心を新たな局面で感動的に謳い上げた傑作。(「BOOK」データベースより)

厳しい冬が来る前、つまり初秋にスペンサーは少年ポールを鍛える事を決意する。

一方「スパイダーマン:スパイダーバース」では中年に差し掛かりお腹も出はじめたピーター・B・パーカーは、マイルスがスパイダーマンとして一人前になるように、つまり異次元から来たスパイダーマンたちがこの世界からいなくなったとしてもスパイダーマンとしてヴィランたちに対峙し、スーパーヒーローとして活躍できるようにマイルスを鍛えるのだ。

「スパイダーマン:スパイダーバース」はそんな物語なのである。ロバート・B・パーカーの「初秋」を読んだ上で「スパイダーマン:スパイダーバース」を観て欲しい。

 

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2018年3月 7日

越前敏弥 翻訳家人生を語る

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東京大学大学院人文社会系研究科・文学部のサイトで翻訳家 越前敏弥 のインタビュー記事が公開された。

文学部卒業生インタビュー #009
"翻訳"という仕事にめぐり合う 越前敏弥さん

翻訳と言う仕事を考える上で非常に興味深いインタビュー記事。

関心がある方は是非。

翻訳百景(文芸翻訳者・越前敏弥のブログ)

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