「非公認戦隊アキバレンジャー」はA・E・ヴァン・ヴォークトの影響を!?
さて、今日は全ての事象は翻訳小説の影響を受けている、と言うホンヤクモンスキーの妄想的エントリー。て言うか重妄想的エントリー。
今日、俎上に乗せるのは、特撮テレビドラマ「非公認戦隊アキバレンジャー」。
「非公認戦隊アキバレンジャー」
監督:田崎竜太、鈴村展弘
アクション監督:大橋明
原作:八手三郎
脚本:荒川稔久、香村純子
音楽:川井憲次
出演:和田正人(赤木信夫/アキバレッド)、日南響子(青柳美月/アキバブルー)、荻野可鈴(萌黄ゆめりあ/アキバイエロー)、内田真礼(葉加瀬博世)、穂花(マルシーナ)、森田美位子(本位田さやか)、愛川こずえ(三田こずこず)、矢尾一樹(ドクターZ)
あらすじ:秋葉原では今、「スーパー戦隊シリーズ」と美少女アクションアニメ「にじよめ学園ズキューーン葵」が人気を二分している。この2つのキャラクターを基に、〈戦隊カフェひみつきち〉店長の葉加瀬博世は新しいヒーローを作り出した。
彼女はこの街のカルチャーを愛する三人の若者、赤木信夫・青柳美月・萌黄ゆめりあをスカウトし、「ズキューーン葵」のフィギュアを模した変身アイテム〈モエモエズキューーン(MMZ-01)〉を渡し、3人組のヒーロー「非公認戦隊アキバレンジャー」に変身させる。彼らは秋葉原の平和を乱す敵〈邪団法人ステマ乙〉を相手に日夜戦うが、その戦いは現実世界で起こっているものではなく〈モエモエズキューーン〉によって彼らの妄想が増幅された結果、妄想の世界で展開されているものだった。しかし・・・・ (Wikipediaよりほぼ引用)
さて、ここからが本題。
「非公認戦隊アキバレンジャー」のどの辺が翻訳小説の影響を受けているのかと言うところだが、先ずはこの画像を見ていただきたい。
オープニングに登場する「非公認戦隊アキバレンジャー」のロゴ。〈非公認戦隊〉の〈非〉と、〈アキバレンジャー〉の頭文字である〈A〉が図案化されている。
いかがだろう。
賢明な読書子の皆さんは既にお気付きのことかと思いますが、この「非公認戦隊アキバレンジャー」のロゴは、どうみても〈非(ナル)A〉(〈非A〉)のロゴに見えてしまう。
〈非(ナル)A〉と言えば、もちろんA・E・ヴァン・ヴォークトの「非(ナル)Aの世界」「非(ナル)Aの傀儡」「Null-A Three」を思い出す。
これはどう考えも偶然ではないだろう。
因みにA・E・ヴァン・ヴォークトの「非(ナル)Aの世界」のあらすじは次の通り。
時は二五六〇年、宇宙はいくつもの帝国から成り、〈銀河系連盟〉が結成されている。地球には〈ゲーム機械〉があり、それがつかさどるゲームに合格した人が政府の要職につき、あるいは金星行きの資格を獲得する。〈非A〉人ギルバート・ゴッセンは〈機械〉市にやってきたが、いつのまにか銀河系的規模の大陰謀に巻きこまれてしまったのである。
ところで、「非公認戦隊アキバレンジャー」の前半部分の物語は、アキバレンジャーの面々は、秋葉原を守る〈非公認戦隊〉として、悪の組織〈ステマ乙〉を駆逐していくうちに、その活動がテレビ化され、スーパー戦隊に公認されることを目指している。
これは、「非(ナル)Aの世界」の冒頭のプロットと類似していると言えるだろう。
なんらかのイニシエーションを体験し、新たなステージへ向かおうとする登場人物たち。しかし、その新たなステージとは!
秋葉原に現れる怪人たちをアキバレンジャーは追いつめる。
左から月島アルパカ、萌黄ゆめりあ(アキバイエロー)、赤木信夫(アキバレッド)、青柳美月(アキバブルー)。
「非公認戦隊アキバレンジャー」はその妄想力で秋葉原の平和を守っている。
しかし、物語はシリーズ前半のアキバレンジャーを〈非公認戦隊〉を〈公認戦隊〉にする、と言う単純な物語構造が徐々に変化し、メタ構造になっていく。
現実世界と妄想世界、そして妄想世界の現実世界、更に現実世界の妄想世界が様々に絡み合って行く。
〈ステマ乙〉の幹部マルシーナ(右)は妄想の世界から現実の世界へと出て来てしまう。
そんな中、妄想世界でしか変身できなかった赤木信夫はついに現実世界でアキバレッドに変身する。
物語は、妄想世界と現実世界の壁が崩壊し、新展開へと向かう。
そんな様々な趣向の新展開のなか、赤木信夫は物語の創造主の存在と、その力に気付き、物語を創造主のものから自分たちの物語へと変化させるため、造物主への接触を図り、造物主の物語構造を破壊し始めるが、圧倒的な造物主の構成力を知り愕然とする。
運命は変えられないのか!
造物主への接触はかなうのか!
この辺りはフレドリック・ブラウンの「ミミズ天使」のプロットに類似していると思えてならない。
ヴァン・ヴォークトとブラウンかよ!
なんて素敵なんだ!
とにかく「非公認戦隊アキバレンジャー」は大変素晴らしい作品だった。
勿論〈公認戦隊〉つまり〈スーパー戦隊もの〉の素晴らしいパロディになっていると共に、SFマインド溢れるプロットとツイスト、そして素晴らしいアクション、魅力的なキャラクターが楽しげに画面の中を動き回る、素晴らしい作品に仕上がっている。
機会があれば是非観ていただきたい作品である。
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