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2012年9月 8日

「遊星からの物体X ファーストコンタクト」をめぐる冒険

2012年8月23日 東京有楽町TOHOシネマズ日劇で「遊星からの物体X ファーストコンタクト」を観た。

「遊星からの物体X」予告編

「遊星からの物体X ファーストコンタクト」(以下「ファーストコンタクト」)は、最近はやりの前日譚映画、つまり「遊星からの物体X」〈エピソード0〉にあたる作品。

もう、最高に素晴らしい。

何が素晴らしいって、この映画、愛に満ちている。
「遊星からの物体X」(以下「物体X」)への愛が画面から溢れてるよ。

ところで皆さん、例えば皆さんが映像作家として伝説的な映画の続編なり前日譚を製作する事になったらどうしますか?

おそらく多くの映像作家は、原典となるその伝説的な作品と、今回自分が製作する作品を比較され、否定的な事を言われてしまうのはわかりきったことであるため、なんとか前作を超えるように、前作と異なったコンセプトや新たな視点を導入したり、新しい技術を導入したり、作品の方向性を模索するだろう。

そんな状況の中、「ファーストコンタクト」の制作者は、なくとしても前作を超えるのだ、と言う自我を抑え、愛すべき作品である「物体X」の物語を踏襲する事を選んだのだ。

例えば、リドリー・スコットの「エイリアン」の続編となる「エイリアン2」を製作したジェームズ・キャメロンは、そのキャッチコピーである〈今度は戦争だ!("This time it's war!")〉通りに、〈ホラー映画〉から〈アクション映画〉へと作品の方向性を転化させ、その結果「エイリアン2」は作品としては成功した。

そんな中での「ファーストコンタクト」である。

てな訳で、今日は「ファーストコンタクト」(2011)の「物体X」(1982)への愛をひもといてみよう。

今日のエントリーは、「ファーストコンタクト」を観て「物体X」に関心を持った皆さんへ、「物体X」の素晴らしさをちょっとだけお知らせする、と言う感じになると思います。

◆オープニング・クレジット
「遊星からの物体X」(1982)より
「遊星からの物体X」(1982)のオープニング・クレジット。

「ファーストコンタクト」のオープニング・クレジットを観てびっくりした。
先ずはクレジットのフォントが「物体X」のフォントとそっくりだった。
ついでに、宇宙から観た地球が映るカットも「The Thing」のタイトルの出現もそっくり。

また、本編の中で、エンニオ・モリコーネの「物体X」のエンドタイトルが一部使用されていて、その使い所も素晴らしい。

強いて難点を言えば「ファーストコンタクト」はどうせ過去の物語なんだから、円盤が墜落するカットもあって良かったと思う。

◆美術
「遊星からの物体X」(1982)より
ノルウェー隊はエイリアンが閉じ込められていた氷の塊を発見、それを基地内に持ち込んだ。
「遊星からの物体X」(1982)より

本作「ファーストコンタクト」は、繰り返しになるが「物体X」で描かれた物語の直前3日間の出来事を描いた物語である。

ご存じのように「物体X」の物語は、南極観測隊ノルウェー基地からアメリカ基地へ逃げて来た犬を保護するところから始まる。

従って、「ファーストコンタクト」の舞台のほとんどはノルウェー基地であり、「ファーストコンタクト」で描かれるノルウェー基地は、「物体X」でマクレデイが様子を探ったノルウェー基地とこれまたそっくり。

「2010」(1984)の制作チームが「2001年宇宙の旅」(1968)を死ぬ程観て、ディスカバリー号のセットを再構築した、と言う話を思い出す。

「遊星からの物体X」(1982)より
ノルウェー隊が氷の塊を持ち込んだ部屋と、その部屋への階段。
「遊星からの物体X」(1982)より

特に「物体X」で、ノルウェー隊が、エイリアンが閉じ込められていた氷の塊を持ち込んだ部屋の間取りとその部屋への通路からの階段が「ファーストコンタクト」で見事に再現されている。笑っちゃう位そっくり。

◆伏線
「遊星からの物体X」(1982)より
ノルウェー基地を調べるマクレディは壁に突き刺さったままの斧を発見する。
「遊星からの物体X」(1982)より

そして「物体X」で描かれる印象的なシーンやカットが「ファーストコンタクト」への見事な伏線として描かれている。

特に印象的なシーンは「物体X」でマクレディが発見する壁に突き刺さった斧を発見するが、「ファーストコンタクト」では、何故その斧が壁に突き刺さったままなのかが描かれている。

◆見た事あるぞ
「遊星からの物体X」(1982)より
ノルウェー基地を調べるマクレディらは恐ろしい方法で自殺を図った隊員を発見する。
「遊星からの物体X」(1982)より

これも見事に再現されている。同じカットを使い回ししたんじゃないの、と思える程の再現度。

「遊星からの物体X」(1982)より
マクレディらはノルウェー基地から顔が繋がったような恐ろしい生き物の死体を持帰る。
「遊星からの物体X」(1982)より

これもびっくり。何故顔が繋がったような恐ろしい姿の生き物の死体があるのか「ファーストコンタクト」では描かれている。

もちろん、様々なクリーチャーの造形や動きも「物体X」への愛に満ちているよ。

「遊星からの物体X」(1982)より
マクレディらは中央のハッチが開いたままの円盤状の宇宙船らしき構造物を発見する。
「遊星からの物体X」(1982)より

「物体X」で描かれた円盤状の宇宙船らしき構造物は、サイズが随分大きくなって、モールドが追加され、見せ場も増えているが、中央のハッチが開いた状態で「ファーストコンタクト」に登場する。

「遊星からの物体X」(1982)より
マクレディらは氷の中から何かを切り出した跡を発見する。
「遊星からの物体X」(1982)より

当然、「ファーストコンタクト」には、氷の中に閉じ込められているエイリアンらしき生物を発見し、切り出し、運ぶ描写もあるよ。

「遊星からの物体X」(1982)より
「遊星からの物体X」(1982)より

「遊星からの物体X」(1982)より
「遊星からの物体X」(1982)より

「ファーストコンタクト」でのノルウェー隊のヘリコプターの再現度は強烈。
「物体X」の冒頭のシーンをそのまま使っているんじゃないの、と疑う程。

◆やはり同じ事を
「遊星からの物体X」(1982)より
「遊星からの物体X」(1982)より

「遊星からの物体X」(1982)より
「遊星からの物体X」(1982)より

「物体X」より「ファーストコンタクト」で使っている機材が少し新しいような気がするが、疑心暗鬼の中、誰が人間なのか、そして誰がエイリアンに乗っ取られているのか、検査が始まる。

「物体X」と異なったアプローチが楽しい。

◆ここまでやるんだったら
「遊星からの物体X」(1982)より

「遊星からの物体X」(1982)より

ここからはちょっと残念な事。
ここまでやるんだったら、「物体X」でノルウェー隊が、墜落した円盤状の宇宙船のサイズを計り、映像的にサイズがわかるよう、隊員が円盤の周りに並んで立つカットがあるのだが、ここが「ファーストコンタクト」にはなかった。

これは残念だった。

また、前述の通り、「ファーストコンタクト」冒頭の地球のカットに、円盤が墜落するカットがあれば良かったなと思った。

そして、エンドクレジット。
エンドタイトルが静謐なエンニオ・モリコーネっぽいスコアにすれば良かったのに、エンドタイトルの後半が「ZOMBIO(ゾンバイオ)/死霊のしたたり」(1985)のテーマに似た、と言うか「サイコ」(1960)にも似た感じはちよっと違うかなと思った。

とにかく、「遊星からの物体X ファーストコンタクト」は素晴らしい作品である事は間違いない。

機会があれば、是非。

「遊星からの物体X ファーストコンタクト」
監督:マシーズ・ヴァン・ヘイニンゲン・Jr
原作: ジョン・W・キャンベル・Jr 「影が行く」 「遊星からの物体X」
脚本: エリック・ハイセラー
プロダクションデ ザイン: ショーン・ハワース
出演:メアリー・エリザベス・ウィンステッド(ケイト・ロイド)、ジョエル・エドガートン(カーター)、ウルリク・トムセン(サンダー・ハルバソン博士)、アドウェール・アキノエ=アグバエ デレク(ジェイムソン)、エリック・クリスチャン・オルセン(アダム・フィンチ)、トロンド・エスペン・セイム(エドバード)

@tkr2000
@honyakmonsky

先日のエントリー『「クトゥルフ神話への招待」と「影が行く」』で紹介したけど、2012年9月現在「物体X」の原作本が2種類出てますよ。

余談だけど、「遊星からの物体X」の復刻版DVDが2012年11月にリリースされますよ。

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