「ディミター」講義 第三講
ここ最近、ウィリアム・ピーター・ブラッティの「ディミター」を読んでいる。
「エクソシスト」で有名なウィリアム・ピーター・ブラッティのミステリーである。
「ディミター」
著者:ウィリアム・ピーター・ブラッティ
訳者:白石朗
出版社:東京創元社(創元推理文庫)
あらすじ:1973年、宗教弾圧と鎖国政策下の無神国家アルバニアで、正体不明の人物が勾留された。男は苛烈な拷問に屈することなく、驚くべき能力で官憲を 出し抜き行方を晦ました。翌年、聖地エルサレムの医師メイヨーと警官メラルの周辺で、不審な事件や〈奇跡〉が続けて起きる。謎が謎を呼び事態が錯綜する中 で浮かび上がる異形の真相とは。『エクソシスト』の鬼才による入魂の傑作ミステリ!
まだわたしは「ディミター」を最後まで読んだ訳ではないのだが、なんとなく、次の映画のお話をしなくてはいけないような気がする。
「ある愛の詩」
監督:アーサー・ヒラー
原作・脚本:エリック・シーガル
音楽:フランシス・レイ
出演:ライアン・オニール(オリバー・バーレット四世)、アリ・マッグロー(ジェニー)、レイ・ミランド(オリバー・バーレット三世)、ジョン・マーリー(フィル)、キャサリン・バルフォー(オリバー夫人)、ラッセル・ナイプ(トンプソン)、トミー・リー・ジョーンズ(ハンク)、ウォーカー・ダニエルズ(レイ・ストラットン)あらすじ:オリバーが最初にジェニーに出会ったのは大学の図書館だった。名家の四世とイタリア移民の娘という余りにも身の上の違う2人だったが、彼らは次第に惹かれ 合っていった。父の反対を押し切ったオリバーは、ハーバードの法律学校へ入る少し前にジェニーと結婚。送金は中止されるが、学費や生活費の為にジェニーは 働き、貧しいながらも幸せな日々を送っていた。やがてオリバーは優秀な成績で卒業、法律事務所へ勤めるため、2人はニューヨークへ移る。そんな新しい生活 が始まろうとしていたその時、オリバーは突然医者からジェニーが余命短い事を知らされる……。
さて、なぜこんな話をしているか、と言うと、「ディミター」のp322にとっても気になる一文があるのだ。
サミアはキッチンの小さな丸テーブルを前にすわり、慎重な手つきで日記を書いていた。明るい青インクをつかい、小さいが丸みを帯びた優美な文字で、《愛とは本当のところなんなのか?》と書きつける。体は疲れ、気分はふさいでいた。
《愛とは本当のところなんなのか?》
この問いの答えは、どう考えても《愛とは決して後悔しないこと》("Love means never having to say you're sorry")だろう。
そう、これは皆さんご承知のように映画「ある愛の詩」(1970)の名台詞である。
因みにこの訳文《愛とは決して後悔しないこと》は、《君の瞳に乾杯》("Here's looking at you, kid.")や、《お楽しみはこれからだ》("You ain't heard nothin' yet!")等で有名な高瀬鎮夫の訳。
そして、そんな訳で「ディミター」には、前述の問い《愛とは本当のところなんなのか?》から派生する「ある愛の詩」への言及だと思えるシーンが何ケ所かあるのだが、個人的にはp344あたりの描写が興味深い。
ちょっと違うと思うけど、「ある愛の詩」のオリバーとジェニーが雪の中で戯れているシーンを思い出した。
ところで、先日のエントリー『「ディミター」講義 第一講』と『「ディミター」講義 第二講』でお話ししたように、ウィリアム・ピーター・ブラッティは映画に対する思い入れが人一倍強く、自らの作品には映画に対する言及や暗喩が非常に多い。
「カサブランカ」(1942)、「第三の男」(1949)ときて「ある愛の詩」(1970)とは、映画ファンならずとも興奮しますよね。
「ディミター」講義 第一講
「ディミター」講義 第二講
「ディミター」講義 第四講
「ディミター」講義 第五講
そんな「ディミター」は2013年1月26日(土)開催予定のネタバレ円卓会議【ディミター】のお題になっています。
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