「ディミター」講義 第二講
ここ最近、ウィリアム・ピーター・ブラッティの「ディミター」を読んでいる。
「エクソシスト」で有名なウィリアム・ピーター・ブラッティのミステリーである。
「ディミター」
著者:ウィリアム・ピーター・ブラッティ
訳者:白石朗
出版社:東京創元社(創元推理文庫)
あ らすじ:1973年、宗教弾圧と鎖国政策下の無神国家アルバニアで、正体不明の人物が勾留された。男は苛烈な拷問に屈することなく、驚くべき能力で官憲を 出し抜き行方を晦ました。翌年、聖地エルサレムの医師メイヨーと警官メラルの周辺で、不審な事件や〈奇跡〉が続けて起きる。謎が謎を呼び事態が錯綜する中 で浮かび上がる異形の真相とは。『エクソシスト』の鬼才による入魂の傑作ミステリ!
まだわたしは「ディミター」を最後まで読んだ訳ではないのだが、なんとなく、次の映画のお話をしなくてはいけないような気がする。
「第三の男」
監督:キャロル・リード
製作:キャロル・リード、デヴィッド・O・セルズニック、アレクサンダー・コルダ
原作・脚本:グレアム・グリーン
音楽:アントン・カラス
出演:ジョセフ・コットン、オーソン・ウェルズ、アリダ・ヴァリ、トリヴァー・ハワード、バーナード・リー、ジェフリー・キーン、エルンスト・ドイッチェあらすじ:第二次大戦後、米英仏ソの四ヶ国による四分割統治下にあったオーストリアの首都ウィーン。
アメリカの売れない小説家ホリー・マーチンスは、親友ハリー・ライムから仕事を依頼したいと誘われ、意気揚々とウィーンにやって来た。
ライムの家を訪ねるマーチンスだが、門衛はライムが自動車事故で死亡したと彼に告げる。ライムの葬儀に出席するマーチンスは、そこでイギリス軍のキャロウェイ少佐と知り合う。少佐はライムが闇取引をしていた悪人だと告げたが、信じられないマーチンスはライムへの友情から事件の真相究明を決意する。
事件の関係者を調査するマーチンスは、ライムの恋人であった女優のアンナ・シュミットと出会う。マーチンスと彼女は二人で事件の目撃者である宿の門衛に話を聞き、現場に未知の〈第三の男〉が居たことをつきとめる。しかし貴重な証言を残した門衛は何者かに殺害され、マーチンスがその下手人だと疑われてしまう。また、国籍を偽っていたアンナもパスポート偽造の罪でソビエト連邦のMPに連行されてしまう。
進退に窮したマーチンスは、アンナの下宿の近くで〈第三の男〉と邂逅する。
いかがでしょう。
なにか思い当たる節はありませんか?
そうです。その通りです。
もうお判りの方も多いと思いますが、取りあえず、「ディミター」のp157から引用してみます。
このときにも、燃えているランドローヴァーとガソリンポンプしか見えなかった。ランドローヴァーにはだれも乗っていなかったし、運転手の姿も見あたらなかった、と妻は供述している。しかし、夫の供述は少し異なっていた。
答 ふたりめの男がいたよ。
問 まちがいありませんか?
答 まちがいない。ただし、わかってほしいが、この目で姿を見たわけじゃないぞ。ベッドから出なかったからね。足のせいで。ただ、音はきこえた。
なんと、自動車事故の現場に〈第二の男〉が!
次いで、「ディミター」のp281から引用します。
「約束するとも。さてと、ディミターと初めて会ったいきさつを話してくれ」
「ある晩、あの男はヤッフォ門のすぐ近くにある〈パズ〉のガソリンスタンドで、悲惨な交通事故を起こしたんです」
メラルは思わず目を見ひらいた。
「きみが〝ふたりめの男〟だったのか!」
いやぁ、興奮しますね。
先日のエントリー『「ディミター」講義 第一講』でお話ししたように、ウィリアム・ピーター・ブラッティは映画に対する思い入れが人一倍強く、自らの作品には映画に対する言及や暗喩が非常に多い。
先日は「カサブランカ」に関する言及が「ディミター」に含まれている話をしたが、今日はなんと「第三の男」への暗喩である。
これは映画ファンならずとも興奮するのではないだろうか。
余談だけど、「第三の男」の音楽はアントン・カラス(Anton Karas)。
カラスと言えば、「エクソシスト」のカラス神父(Father Karras)のことを思い出すよね。スペルは違うけど。
そんな「ディミター」は2013年1月26日(土)開催予定のネタバレ円卓会議【ディミター】のお題になっています。
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