「パシフィック・リム」がラブクラフトの影響を!?
さて、今日は全ての事象は翻訳小説の影響を受けている、と言うホンヤクモンスキーの妄想的エントリー。
今日、俎上に乗せるのは、ギレルモ・デル・トロ監督作品「パシフイック・リム」 。
「パシフィック・リム」は、2013年8月9日に日本公開となったSF怪獣映画。
「パシフィック・リム」
監督:ギレルモ・デル・トロ
脚本:トラヴィス・ビーチャム、ギレルモ・デル・トロ
出演:チャーリー・ハナム、菊地凛子、イドリス・エルバ、チャーリー・デイ、バーン・ゴーマン、マックス・マルティーニ、ロバート・カジンスキー、クリフトン・コリンズ・Jr、ロン・パールマン、ディエゴ・クラテンホフ、芦田愛菜あらすじ:太平洋の深海から突如巨大な生命体が出現した。“KAIJU”と名付けられた巨大な生命体は大都市を次々と襲撃し、容赦ない破壊を繰り返す。
滅亡の危機を迎えた人類は世界中の英知を結集し、人型巨大兵器“イェーガー”を開発する。当初は優勢を誇ったイェーガーだったが、出現するたびにパワーを増していくKAIJUたちの前に次第に苦戦を強いられていく。
そんな中、かつてKAIJUとの戦いで兄を失い、失意のうちに戦線を離脱した名パイロット、ローリーが復帰を決意する。彼が乗る旧式イェーガー“ジプシー・デンジャー”の修復に当たるのは日本人研究者の森マコ。彼女は幼い頃にKAIJUに家族を殺された悲しい記憶に苦しめられていた。やがて彼女はローリーとの相性を買われ、ジプシー・デンジャーのパイロットに大抜擢されるのだったが・・・・。
本作「パシフィック・リム」は8月9日に日本公開されたばかりの作品であるから、詳細は控えるが、どう考えても映画史に残るような素晴しい作品に仕上がっている。もちろん怪獣映画としてではなく、映画としてである。
ところで、ときどきだが、この世にはスタッフもキャストも自分の力量を遥かに超えた結果をフィルムに定着させたような、言わば奇跡のような作品が出てくるのだが、本作「パシフイック・リム」も、それらの作品と同様に悪いところが全くない奇跡みたいな作品の一本だと言える。
いつものくせで、映画を観ると、あれは《ルビーの靴》のメタファーで、これは「オズの魔法使い」でいうところの《竜巻》で、とか、いろいろとくだらない解釈をしてしまうところなのだが、本作「パシフイック・リム」は、そんなスノッブな解釈をするのが恥ずかしくなるような、解釈なんかしている場合ではないほどの素晴しさに感涙ものの作品である。
わかっている奴らが作品に真摯に向かい合い、そんな奴らの怪獣に対する深い愛情を溢れんばかりに作品に注ぎ込んだ、その結果がこの「パシフイック・リム」なのだ。
しかし、当ブログとしては「パシフイック・リム」と言う作品は、翻訳作品の影響を受けている、と言う方向に持って行きたいと思います。
まぁ実際のところは、今日のエントリーはそんな話をするのが目的ではなく、取りあえずすぐ劇場に行け、と言うこと。
さて、「パシフイック・リム」のどの辺が翻訳作品の影響を受けているか、と言う話なのだが、「パシフイック・リム」は、H・P・ラブクラフトの作品から派生する「クトゥルフ神話体系」の一つの作品だと思えてならない。
と言うのは「パシフイック・リム」に登場するKAIJUの出自が「クトゥルフ神話体系」によるところの《古きもの》(旧支配者)の眷属として描かれているのだ。
「パシフィック・リム」本編のセリフや設定でそのあたりも描かれているのだが、前述の通り公開直後と言う事もあり詳細は割愛する。
ここで考えられるのは、ギレルモ・デル・トロの「パシフィック・リム」以前の頓挫した「狂気の山脈にて」(H・P・ラブクラフト)の映画化企画の設定を「パシフィック・リム」に取り込んだのではないか、と言う事。
事実、「パシフィック・リム」のKAIJUは、物理法則を超えた手法で、われわれの地球に来ているのだ、と言う描写がある。つまり「パシフィック・リム」は一見するとSF怪獣映画に見えるのだが、その背景にはコズミック・ホラーの側面をも持っている、と言えるのだ。
ここまで来て、一体何が言いたいかと言うと、さっきも言ったように、取りあえず劇場に走れ、と言う事だけである。
ラブクラフトがどうしたとか、コズミック・ホラーがどうしたとか、ルビーの靴がどうしたとか、そんなのどうでも良い話なのだ。
ところでだが、「パシフィック・リム」に登場する日本の女優陣は凄い。
菊地凛子のヒロイン振りは世界を魅了しているだろうし、芦田愛菜は完全に女優をしている。
彼女等は、日本のドラマや何かで普段見られるような演技からは考えられない素晴しい演技を見せている。
また、「パシフィック・リム」は日本の特撮やアニメの影響下にある作品である。
アメリカ人が侍にあこがれ侍になる映画である「ラストサムライ」(2003)の後、侍と言う馬鹿げた生き方を止める(描く)映画を、山田洋次(「隠し剣 鬼の爪」(2004))、行定勲(「北の零年」(2005))、是枝裕和(「花よりもなほ」(2006))らがそれぞれ撮っていることを考えると、今後、日本映画界が「パシフィック・リム」に対してどんなアンサーを出すのか非常に楽しみです。
また、「パシフィック・リム」で描かれている怪獣やロボットとの戦いについても、現在望みうる最高の形態ではあるとは思うけど、もう少しゴニョゴニョと言う気もしますけど。
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