新訳版「千の顔を持つ英雄」ハヤカワ文庫より刊行
2015年12月18日、ジョーゼフ・キャンベルの「千の顔を持つ英雄」の新訳版が早川書房より刊行された。
ルーカスに多大な影響を与えた『千の顔をもつ英雄〔新訳版〕』 (2015/12/18)
世界中のファンが待ち望んでいた「スター・ウォーズ」シリーズの最新作、「フォースの覚醒」がいよいよ日本でも公開になりますが、シリーズ生みの親、ジョージ・ルーカスがこの壮大な物語のインスピレーションの源となったと公言する本があるのをご存じでしょうか?
それは、神話学者ジョーゼフ・キャンベルが1949年に発表した『千の顔をもつ英雄』。初版刊行から60年以上経った現在も、ルーカスだけでなく映画、小説、ゲーム、音楽など多岐にわたるジャンルのクリエイターたちに多大な影響を与え続けている同書の[新訳版]が、12月18日、文庫上下巻として刊行されます。
キャンベルは、ギルガメシュやオデュッセウス、ブッダなど古今東西の神話や民話に登場する「英雄」たちの冒険を分析・比較し、それらに共通する基本構造(出立→イニシエーション→帰還)を明らかにしていきます。
平凡な青年ルーク・スカイウォーカーが伝説のジェダイの騎士と出会い、故郷を離れて帝国軍に捕らわれたレイア姫の救出に向かう――。あまりにも有名な「スター・ウォーズ」のルークの冒険譚も、この基本構造をそっくり踏襲していることが本書を読むとよくわかります。さらにキャンベルは、私たちがなぜこのような物語に魅了されるのか、フロイトやユングの精神分析論を用いながら人間の心に潜む普遍的欲求をも説明していきます。
「マトリックス」、「ダ・ヴィンチ・コード」、「マッドマックス」など、キャンベルの影響を受けた映画や小説は数知れず。これを読めば「物語」の理解がもっと深まること請け合いです。
「千の顔を持つ英雄」
著者:ジョーゼフ・キャンベル
訳者:倉田真木、斎藤静代、関根光宏
わたしは随分前に「千の顔を持つ英雄」を人文書院のハードカバーで読んだが、若干読みにくい印象を受けており、その新訳が出ることは非常に喜ばしい出来事である。
この度、「フォースの覚醒」公開の2015年に新訳版が出るというのは、本書を「スター・ウォーズ」研究のためのひとつの関連書籍として考えた場合、素晴らしいことだと思いますし、もちろん出版業界のマーケティングを考えた場合、素晴らしいタイミングだと考えることができる。しかも随分と安いし。
しかしながら、先に引用したハヤカワ・オンラインの新着ニュースには、早川書房として残念ながら足りない部分がある。
と言うのも、実はこのジョーゼフ・キャンベルの「千の顔を持つ英雄」は、映画「2001年宇宙の旅」(1968)の準備段階に、スタンリー・キューブリックがアーサー・C・クラークに資料として贈り、クラークはそれを一読し「きわめて刺激的」とコメントしているのだ。
この辺りについては、アーサー・C・クラークの「失われた宇宙の旅2001」(ハヤカワSF文庫)に詳しい。
「千の顔を持つ英雄」がジョージ・ルーカスに影響を与えたことは誰でも知っているような有名なエピソードなので、ハヤカワ・オンラインとしては、キューブリックとクラークのエピソードを紹介するべきだったと思う。
何しろ、クラークはキューブリックから「千の顔を持つ英雄」を贈られるまで、その存在を知らなかったのだから。
1964/09/26 スタンリーがジョゼフ・キャンベルの神話分析書「千の顔を持つ英雄」を研究用によこす。きわめて刺激的。(「失われた宇宙の旅2001」より)
これこそ、きわめて刺激的。興奮がやまない。
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