« 文庫本が高いです | トップページ | 「ルーム ROOM」をめぐる冒険 »

2016年2月 7日

「センター18」をめぐる冒険

センター18 ウィリアム・ピーター・ブラッティの「センター18」を読了した。

「エクソシスト」(1971)はともかく、2012年に翻訳が刊行された「ディミター」(2010)が素晴らしかったので「センター18」には期待をしていたのだが、あまりも薄い本だったので、おいおい大丈夫かよ、と思いながら読みはじめた。

「センター18」
著者:ウィリアム・ピーター・ブラッティ
訳者:大瀧啓裕
出版社:東京創元社

内容紹介:一九六〇年代後半、ヴェトナム戦争の時代。妄想に取りつかれた合衆国軍の将校たちは、仮病と疑われながら秘密収容所に送りこまれ、治療と研究の対象となっていた。最後の収容所となったセンター18には、元宇宙飛行士のカットショー大尉を始め、様々な強迫観念に囚われた兵士たちが収容されていた。

新たに配属された海兵隊の精神科医ハドスン・ケイン大佐は、収容者たちの話を聞き続ける中で、かつての患者が見ていた悪夢に繰り返し苛まれる── 館に蔓延する狂気と悪夢。そして〝奇蹟〟の顕現。『エクソシスト』の鬼才が贈る傑作。訳者あとがき=大瀧啓裕

「センター18」は小説なのだが戯曲のような印象を受ける。

物語の前半部分は、所謂精神病院の患者と医師が散文的に会話をしているだけで、あまり大きな出来事は起きない。

その会話は、精神病院を舞台とした多くの作品と同様に暗喩と引用に満ちている。

しかも、その引用されている固有名詞がわれわれが知っている固有名詞と少しずつ異なっているのだ。

これは後に、日本語の表記を英語の発音に近づけただけだ、と言うことがわかるのだが、わたしはこの手法から、この物語はわれわれが知っている世界と別の、つまりパラレルワールドか、異なった世界線上の物語なのだろうと想像しながら読んでしまった。

そちらの方向に意識が向いていたため、「センター18」の物語に素直に没入できなかったことが残念である。わざわざ一般的な日本語と異なる表記をするのは翻訳としてはいささか問題だと思った。

本作は翻訳でわずか175ページの作品だが、129ページあたりまでは、前述のような患者と医師の会話が続くのだが、129ページから物語の本質が見えてくる。

そこからは俄然面白くなって行く。

わずか175ページの物語だが、読了後もう一度最初から読みたくなる、そんな感じの小説である。

The Ninth Configuration 余談だが本作「センター18」("The Ninth Configuration")は、1966年の "Twinkle, Twinkle, "Killer" Kane" を書き直した作品らしく、1980年には "The Ninth Configuration" と言うタイトルで映画化もされている。制作・監督・脚本はウィリアム・ピーター・ブラッティ。

この "The Ninth Configuration" のポスターが格好いい。

これも機会があれば観てみたいと思う。

@tkr2000
@honyakmonsky

|

« 文庫本が高いです | トップページ | 「ルーム ROOM」をめぐる冒険 »

●tkr」カテゴリの記事

■ミステリー」カテゴリの記事

ウィリアム・ピーター・ブラッティ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 「センター18」をめぐる冒険:

« 文庫本が高いです | トップページ | 「ルーム ROOM」をめぐる冒険 »