「秘密の知識 巨匠も用いた知られざる技術の解明」
デイヴィッド・ホックニーの「秘密の知識 巨匠も用いた知られざる技術の解明」を読んだ。
そもそもはこうだ。
藤田新策氏の絵本「ちいさなまち」がフランスで「Le long d’un reflet」として出版される事を記念した原画展において、2017年11月25日に行われたトークショーに衝撃を受けたのだ。
わたしの人生が変わる程の衝撃を。
当日のトークショーの概要は次の通り。
1. 「秘密の知識」
最初は美術史における発見としてBBCなどでも放映された、デイヴィッド・ホックニーの「Secret Knowledge」からアングルやフェルメールが使っていたカメラルシーダやカメラオグスキュラなどの光学機械について話します。2. 「土と釉薬」「土性絵の具とニス」
次は「土と釉薬」「土性絵の具とニス」というテーマで陶芸と絵画の類似点について。3. 「美術と美顔術」
ルネサンス期から皮膚の下地として使われたテルベルト(イタリアのVerona(ベローナ)近くの緑土)が現代でも泥パックとして美顔術に使用されていることについて話します。4. 「鏡のゲーム」
一つのデッサンが反転されて左右(上下)対象に作図される構図は、現代ではフォトショップなどで行われています。 しかし、実はすでに15世紀頃からフレスコ画で行われていました。
「秘密の知識 巨匠も用いた知られざる技術の解明」
著者:デイヴィッド・ホックニー
訳者:木下哲夫
出版社:青幻舎
ここ最近日本では、漫画家のトレパク問題が顕在化している。
これは商業誌において連載を持っているような漫画家が、権利上問題があるインターネット上の画像等をトレースし、自作の漫画に使用しているような問題である。
わたしはこのトレパク問題に関心を持っていたのだが、その状態で藤田新作氏の「秘密の知識 巨匠も用いた知られざる技術の解明」に関するトークを聴いたのである。
画家のデイヴィッド・ホックニーは、過去600年間の西洋絵画を精査・比較検討しひとつの結論に達する。
西洋絵画における多くの巨匠たちは、当時最新の科学技術であった光学装置を使用し、現実の風景を人物を、つまり絵画の題材自体を光学的にトレースしていたと言うのだ。
なんと言う事だろう。
今まで信じていた事が文字通り瓦解していく。
ホックニーがどのように過去600年間の西洋絵画を精査・比較検討しこの結論に達したかは割愛する。
ここからはわたしの所見だが、当時の画家は工房を持っていたのではないか、とわたしは想像している。
そして、どこかの工房が光学装置を使用した写実的な絵画を発表し始める。工房の優位性が重要だと考える工房はその《知識を秘密》にする。
しかし当然ながらその作品を見た他の工房がその《秘密の知識》を探り始める。
従ってその門外不出の《秘密の知識》は現代まで伝わっていないのだ。と想像していた。
しかし、ロジャー・ベーコンの引用が出てくるあたりで考えが変わってくる。
もしかしたら科学技術を使用した絵画は《悪魔の仕業》ということで宗教上の弾圧を受ける可能性があったため、その技術は《秘密の知識》にせざるを得なかったのではないか。
「薔薇の名前」や「ロバート・
関心がある方は是非。
デイヴィッド・ホックニーは、「秘密の知識 巨匠も用いた知られざる技術の解明」の後、美術批評家のマーティン・ゲイフォードと共に「絵画の歴史 洞窟壁画からiPadまで」を著している。
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