「あおいちゃんパニック!」は「火星のプリンセス」の影響を!?
絶賛公開中の映画「ジョン・カーター」(2012)だが、その原作はご承知のようにエドガー・ライス・バローズの「火星のプリンセス」(1917)である。
今日は、その「火星のプリンセス」とその影響下にある竹本泉の漫画「あおいちゃんパニック!」に関する余談。
つまり、翻訳小説は国内の様々なメディアに影響を与えているよ、と言う妄想話。
講談社コミックスなかよし版「あおいちゃんパニック!」全3巻
さて「あおいちゃんパニック!」のどのあたりが「火星のプリンセス」の影響を受けているか、というところであるが、いくつかの観点からその影響を考察していきたい。
■怪奇!バッタ人間の逆襲
「あおいちゃんパニック!」の主人公である〈早川あおい〉は、宇宙人のパパと地球人のママのハーフ。
以前住んでいた高重力の惑星からパパの転勤で地球に引っ越してきたあおいちゃんは地球では力持ちになってしまうし、ただ単に歩こうとしただけでもバッタのようにぴょ〜んぴゅ〜んぴゃ〜んしてしまう。
また、ソフトボールの打球は放物線を描かず、自衛隊機を撃墜してしまったり、叩いただけで机を壊してしまったり、街灯を折り曲げてしまったりする。
ご存じのように「火星のプリンセス」のジョン・カーターも地球から、地球と比較して重力が低い火星に行ってしまった関係で、当然のごとく力持ちになってしまい、これまた歩こうとしているだけで、ぴょ〜んぴゅ〜んぴゃ〜んしてしまう。
映画「ジョン・カーター」でも、そのぴょ〜んぴゅ〜んぴゃ〜んは見事に再現されている。
■プロポーズ
あおいちゃんがパパの転勤で地球に来る前に住んでいた惑星では「いっしょに絵をかこう」と言う言葉や「絵をかくのを手伝う」と言うような言葉は、「結婚しよう」と言うような意味で、プロポーズの言葉として知られている。
あおいちゃんの同級生の森村ひろしは美術の授業中、それを知らずにあおいちゃんに「(絵をかくのを)手伝ったろうか?」とプロポーズしてしまう。
ご承知のように「火星のプリンセス」でも、ジョン・カーターはバルスームでの習慣を知らないため、いつのまにかヘリウムの王女デジャー・ソリスにプロポーズしてしまったり、プロポーズしたにも関わらずデジャー・ソリスを冷たくあしらってしまったりする。
一方デジャー・ソリスはデジャー・ソリスで、そのジョン・カーターの不躾なプロポーズの一件から、あろうことかジョン・カーターに対するツンデレ属性を発揮し、どこのラブコメだよ、と言うようなジョン・カーターとデジャー・ソリスのツンデレの展開が楽しめる。
エドガー・ライス・バローズの「火星のプリンセス」は驚くべき事に1917年の作品である。
つまり、1917年からツンデレ属性は存在していたのだ。
■カオール
カオールとは「火星のプリンセス」シリーズの舞台であるバルスームのあいさつ。
ところで、竹本泉の「あおいちゃんパニック!」は1983〜1984年に「なかよし」に連載された作品である。
「火星のプリンセス」以外にも、画像の左から「地上最強の美女バイオニック・ジェミー」(1976〜1978)や「Dr.スランプ」(1980〜1984)の影響がみてとれる。
時代ですね。
■SF作品の影響
「あおいちゃんパニック!」は、「火星のプリンセス」以外にも様々なSF作品のパロディが含まれている。
例をあげてみると、
「スーパーマン」ソフトボール
「E.T.」植物学者のトーオリ先生、その他
「スタートレック」フワフワ←トリブル
「グレムリン」フワフワ
等のパロディが楽しめる。
これは興味深い事に、全て1980年代頃のSF映画ですよね。
「なかよし」の読者とSF映画の観客との関係が興味深い。
おそらくはあまりかぶってはいなかったのではないか、と思えるけどね。
■早川あおい
「あおいちゃんパニック!」は、前述のように様々なSF作品の影響を受けている。
もちろん作者の竹本泉が大のSFファンであることからそうなっているのだと思うが、その中でも意味があるのは、本作「あおいちゃんパニック!」の主人公の名前が〈早川あおい〉である、と言うこと。
この〈早川あおい〉の名前はもちろん〈ハヤカワ文庫SFの青背〉をあらわしているに違いない。
つまり〈早川あおい〉は〈SF〉のメタファーなのだ。
そして〈早川あおい〉はご存じ「今日の早川さん」の〈早川量子〉と同様に、〈SF〉の権化だと言えるのだ。
おそるべし早川さん。
そんな訳で映画「ジョン・カーター」は絶賛公開中だよ。
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (0)
最近のコメント