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2012年3月 7日

「ユゴーの不思議な発明」

エイサ・バターフィールド(左)、原作本「ユゴーの不思議な発明」を持つマーティン・スコセッシ(中央)、クロエ・グレース・モレッツ(右)
エイサ・バターフィールド(左)、ブライアン・セルズニックの「ユゴーの不思議な発明」を持つマーティン・スコセッシ(中央)、クロエ・グレース・モレッツ(右)

2012年3月1日 ブライアン・セルズニックの「ユゴーの不思議な発明」の映画化作品 「ヒューゴの不思議な発明」が日本公開された。監督はマーティン・スコセッシ。 

3月1日(映画の日) わたしは本作「ヒューゴの不思議な発明」の内容をほとんどと言うか全く知らない状態で鑑賞することになった。

この辺りについては先日のエントリー「ヒューゴの不思議な発明」をご参照いただきたい。

今日はその原作である「ユゴーの不思議な発明」について。

しかし、今日のエントリーでも、物語の内容には触れないつもりです。

 「ユゴーの不思議な発明」
著者:ブライアン・セルズニック
翻訳:金原瑞人
出版:アスペクト
あらすじ:舞台は1930年代のパリ。主人公はパリ駅の時計台に隠れ住む12歳の孤児ユゴー。彼は、父が遺したからくり人形に隠された秘密を探っていくうちに、不思議な少女イザベルに出会う。からくり人形には二人の運命をも変えていく秘密が隠されていたのだ。……からくり人形のぜんまいが動き始めるとき、眠っていた物語が動き出す!(オフィシャル・サイトより引用)

映画「ヒューゴの不思議な発明」の圧倒的な面白さに打ちのめされたわたしは、当然のごとく、その原作であるブライアン・セルズニックの「ユゴーの不思議な発明」に関心を持った。

と言うのも、わたしの意識の中には、そもそも原作である「ユゴーの不思議な発明」はどのような物語だったのか、はたして「ヒューゴの不思議な発明」はその原作に忠実な作品なのか、それとも映画は原作を過分に脚色しているのか、つまり脚色が素晴らしかったのか、と言う疑問が湧いていたのだ。

と言うのも、映画「ヒューゴの不思議な発明」の物語は、非常にトリッキーで、素晴らしいサプライズに満ちていた。

つまり、その サプライズ自体を考えると、それは原作に含まれているのではなく、映画の製作過程の中で、つまり原作を脚色する過程で生まれたのではないだろうか、と思えてならなかったのである。

しかし、原作「ユゴーの不思議な発明」を一読して驚いた。

映画「ヒューゴの不思議な発明」は原作である「ユゴーの不思議な発明」に非常に忠実な作品だった。

もちろん映画は素晴らしいのだが、映画が素晴らしい、と言うよりは原作が素晴らしかったのだ。

そして、その「ユゴーの不思議な発明」の形態が異彩を放っている。

と言うのも、本書「ユゴーの不思議な発明」は、文字ではなく300枚近いイラストで物語が描写されているのだ。

全544ページに約300点のイラスト。

例えば、第一章「盗み」は全60ページのうち、文字で物語が描写されているのはわずか6ページ。

同様に、第2章「時計」は全17ページで、文字のページはわずか4ページ。

「ユゴーの不思議な発明」は、このような作風で物語を描いているのだ。

そして、最大のサプライズは、本書「ユゴーの不思議な発明」を著したのは一体誰だったのか、と言う点である。

これは映画では絶対に味わえない、書籍ならではの素晴らしいサプライズだと言える。

本書を手に取って、それを是非確かめていただきたい。

あぁ、しかし本書「ユゴーの不思議な発明」のブライアン・セルズニックの発想は素晴らしい。

これは正に、天啓のような、奇跡のようなアイディアだったのだと思わざるを得ない。

本当に素晴らしい。

余談だが、ブライアン・セルズニックは、ハリウッドの名ブロデューサー、デヴィッド・O・セルズニックの遠縁にあたる。

@tkr2000
@honyakmonsky

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2012年3月 4日

「ヒューゴの不思議な発明」

「ヒューゴの不思議な発明」 2012年3月1日 マーティン・スコセッシ監督作品「ヒューゴの不思議な発明」が日本公開された。原作はブライアン・セルズニックの「ユゴーの不思議な発明」

3月1日(映画の日) わたしは本作「ヒューゴの不思議な発明」の内容をほとんどと言うか全く知らない状態で鑑賞することにした。

もちろんわたしは、本作が第84回アカデミー賞において11部門もノミネートされ、そのうち5部門で受賞を果たした話題の作品であることは当然知っていたし、この時期劇場で観たい作品の一つでもあった。

しかしわたしは、本作の内容にあまり関心を持っていなかったのも事実である。
わたしの予告編を観る限りの想像だが、本作の物語は1930年代のパリを舞台に、父親から残された機械人形の修復を通じて少年が何らかの成長をする物語だと思っていたのだ。

しかし、実際に観て驚いた。「ヒューゴの不思議な発明」の物語は、こんなにもとんでもない物語だったのか、と。

そう考えた場合、本作を鑑賞する上で一番嬉しかったのは、この作品の内容を全く知らない状態で劇場に向かうことが出来たことである。

あぁ、本当に内容を知らなくて良かった。

と言う状況だったので、本日のエントリーでは「ヒューゴの不思議な発明」の内容にはあまり触れないでおく。

「ヒューゴの不思議な発明」
監督:マーティン・スコセッシ
脚本:ジョン・ローガン
原作:ブライアン・セルズニック 「ユゴーの不思議な発明」(アスペクト文庫)
出演:ベン・キングズレー(パパ・ジョルジュ)、エイサ・バターフィールド(ヒューゴ・カプレ)、クロエ・グレース・モレッツ(イザベル)、サシャ・バロ ン・コーエン(鉄道公安官)、レイ・ウィンストン(クロードおじさん)、エミリー・モーティマー(リゼット)、ヘレン・マックロリー(ママ・ジャンヌ)、 クリストファー・リー(ムッシュ・ラビス)、マイケル・スタールバーグ(ルネ・タバール)、フランシス・デ・ラ・トゥーア(マダム・エミール)、リチャー ド・グリフィス(ムッシュ・フリック)、ジュード・ロウ(ヒューゴのお父さん)

物語:1930年代のフランス、パリ。父を火事で失ったヒューゴは駅の時計台に隠れ住み、駅の時計のネジを巻いて毎日を過ごしていた。
ひとりぼっちのヒューゴの唯一の友達は、亡き父が遺した壊れたままの〈機械人形〉。
その秘密を探るうちに、ヒューゴは機械人形の修理に必要な〈ハート型の鍵〉を持った少女イザベルと、過去の夢を捨ててしまった老人ジョルジュに出逢う。
機械人形に導かれ、ヒューゴの冒険が今、始まる。
(オフィシャル・サイトより引用)

本作「ヒューゴの不思議な発明」は、感覚的に非常にプライベートな作品に思えた。まるでマーティン・スコセッシが、わたし個人のために制作してくれた作品のように。

もちろんそれはわたしの妄想であろう。
しかしながら、それが単なる妄想だとは感じさせない〈何か〉がこの作品に含まれていたと思えるのだ。

事実、何人かの知り合いが、これは自分のために作られた作品だと、わたしと同じような印象を抱いていた。

わたしに対する〈何らか〉のメッセージが。
わたしたちのような人たちに対する〈何らか〉のメッセージが。

世界中のわたしたちのような人たちのため、一本一本の映画ではなく、映画と言うメディア自体を愛している人たちのためにマーティン・スコセッシが「ヒューゴの不思議な発明」を制作してくれたのではないか、と。

そして、本作「ヒューゴの不思議な発明」が暗示的に描いているのは、近代的に〈演出された映画〉の誕生である。

記録としての映画ではなく娯楽としての映画の誕生。

つまり、ある意味ヒューゴの冒険なんかどうでも良いのだ。
そう思える程の映画そのものへの愛情が本作「ヒューゴの不思議な発明」に詰め込まれている。

キャストは、ベン・キングズレーにしろ、エイサ・バターフィールドにしろ、クロエ・グレース・モレッツにしろ、みんなそれぞれ素晴らしいのだが、一番印象的だったのはサシャ・バロン・コーエン。

不思議なことに、「アリ・G」「ボラット 栄光ナル国家カザフスタンのためのアメリカ文化学習 」「ブルーノ」等、サシャ・バロン・コーエン自身が企画した作品と比較し、他人が制作し、サシャ・バロン・コーエンをキャスティングした作品のサシャ・バロン・コーエンは凄く良い。

ジョン・ローガンの脚本は原作と比較してメリハリが出ていて、非常にわかりやすく、また脇を固めるキャラクターの役割が増大し、物語に膨らみを与えている。そのため複数のキャラクターの物語が平行に走る感覚が感じられる。
構成や脚色は上手く行っていると思う。

ハワード・ショアのスコアは若干鳴らしすぎのような印象を受けるが、ある重要なシークエンスでの静寂感は素晴らしく、そのための、つまりその静寂感を際立たせるために他のシーンで少し多めに鳴らしているのかな、と言う印象を受けた。

1930年代を再現するダンテ・フェレッティの美術も素晴らしい。もちろんCGIによる部分も大きいのだと思うが、とある重要なセットや、図書館や駅、書店やおもちゃ屋、もちろん時計や機械人形等のギミックも良い。

まだ公開されたばかりですし、前述のように本筋に触れる辺りについては書かないつもりなので、今日はこの辺りにしておきますが、「ヒューゴの不思議な発明」は、映画史に残るような素晴らしい作品だと思います。

是非劇場で映画の誕生を追体験していただきたい。

余談だけど原作のブライアン・セルズニックは、ハリウッドの名ブロデューサーであるデヴィッド・O・セルズニックの遠縁にあたるそうです。

@tkr2000
@honyakmonsky

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