「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」
2013年3月20日 ユナイテッド・シネマとしまえんで「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」を観た。
「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」は、英国ブッカー賞を受賞したヤン・マーテルの「パイの物語」を原作にアン・リーが映画化した作品。
「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」
監督:アン・リー
脚本:デヴィッド・マギー
原作:ヤン・マーテル 「パイの物語」(竹書房刊)
出演:スラージ・シャルマ(パイ・パテル/青年)、イルファン・カーン(パイ・パテル/壮年)、アディル・フセイン(サントッシュ・パテル/パイの父)タブー(ジータ・パテル/パイの母)、レイフ・スポール(カナダ人ライター)
実はわたし「ライフ・オブ・パイ」を見逃しかけていました。
と言うのも、なんとなく観る気がしなかったのです。
それは「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」のタイトルや予告編を見る限り、映画の尺の大半を漂流後の物語が占めていると思っていたから。
クジラが出たり、トビウオが出たり、雨が降ったり、凪ったり、漂流シーンは予告編で散々見せられていたし、個人的には漂流後よりは、漂流前のパイの少年時代を見たいと思っていたからです。
と言うのも、原作であるヤン・マーテルの「パイの物語」は、漂流するまで結構時間がかかるのですが、その漂流前のページで語られるエピソードが大変興味深いのです。
そしてそんな「ライフ・オブ・パイ」を観るきっかけとなったのは、友人宅のホームシアターでいろんな作品を観た後の飲み会でした。
「なんでおまえが観ていないのよ」
その人にとっては、「ライフ・オブ・パイ」はわたしが観るべき作品だと思えたのでしょう。わたしは心を入替えました。
で、東京都内ほぼラストチャンス、3月20日(祝)の9:20の回の「ライフ・オブ・パイ」を観るべくユナイテッド・シネマとしまえんに向かった。
ユナイテッド・シネマとしまえんに行った事がある方はご存知だと思うのですが、豊島園駅を降りてすぐ右側にユナイテッド・シネマとしまえんのエントランスがあり、チケット売り場まではエントランスから結構距離があるのですが、なんとその日はチケット売り場の列はエントランスまで延びていたのです。
この時点で時刻は9:00。
万事休す。おいらは「ライフ・オブ・パイ」を劇場で観ることが出来ないのか。
スタッフの人に、開映間近の作品の特設チケット売り場は作らないのかよ、と軽くクレームを入れながら列に並ぶ。しかし、列は遅々として進まず、背に腹は代えられず、スマートフォンでチケットを購入する事にした。
本来はその日は1,200円の割引チケットで観ようと思っていたのですが、結局は1,800円の当日券をスマホでおさえることにする。
予告編が始まっているとチケットが取れない可能性があるらしく、列から離れずスタッフに頼んで発券してもらう。
スマホ万歳!
チケットを発券してもらい、クラブスパイスカードのポイントもプラスしてもらい、なんとか予告編中に座席につく事が出来ました。
ユナイテッド・シネマとしまえんのスタッフの皆さんありがとう。
皆さんのおかげで「ライフ・オブ・パイ」を劇場で観ることが出来ました。
さて「ライフ・オブ・パイ」本編。
冒頭、3Dを意識した動物園の風景。
インドの彩度が高い素晴しい映像。
パリのスイミングプール。
見た事がない動物たちの動き。
あまりにも発色の良い素晴しい映像におじさん涙が出ちゃったよ。
そして、少年時代のパイの物語。
これが抜群に面白い。
そもそも、本作の原題は"Life of Pi"。
物語が描いているのは、トラがどうしたこうしたではなく、《パイの人生》そのものなのだ。
つまりパイにとってはトラと漂流した事は人生の大きなページに違いないが、パイの長い人生から見ると、人生の1ページに過ぎないのである。
念の為だけどπの、つまり無理数の長い人生のね。
つまり、自分の名前がどうして名付けられたのか、宗教に傾倒する少年時代、動物園の生活、父母と兄との人生、そういった部分が、物語の、つまり《パイの人生》の中で重要な部分なのである。
だからわたしにとって、「ライフ・オブ・パイ」のトラと漂流している部分はそんなに印象深いものではなかった。
トラも海もCGIだし。
だからといって、冒頭のインドの風景がCGIだったらおじさんショックだけどね。
さて、物語は最近観た「テッド」(2012)と同様に自分の外にいる自分との出会いと別れを描いている。
だから、ラスト直前の作家との会話の中で語られるもう1つの物語のメタファーの部分は全く不要である。
何故なら、その台詞があるために、テーマがあまりにも明確になり過ぎてしまうから。少しは考えさせてくれよ。
そして魔法が解ける瞬間。
どっちの物語が良い?
なんと恐ろしい台詞なんだろうか。
自分の信じていたものが音を立てて崩れて行く。
あぁ「ライフ・オブ・パイ」はなんと恐ろしい映画なんだろうか。
「パイの物語」
著者:ヤン・マーテル
訳者:唐沢則幸
出版社:竹書房
あらすじ:1977
年7月2日。インドのマドラスからカナダのモントリオールへと出航した日本の貨物船ツシマ丸は太平洋上で嵐に巻き込まれ、あえなく沈没した。たった一艘し
かない救命ボートに乗り助かったのは、動物たちを連れカナダへ移住する途中だったインドの動物園経営者の息子パイ・パテル16歳。ほかには後脚を骨折した
シマウマ、オランウータン、ハイエナ、そしてこの世で最も美しく危険な獣―ベンガルトラのリチャード・パーカーが一緒だった。広大な海洋にぽつりと浮かぶ
命の舟。残されたのはわずかな非常食と水。こうして1人と4頭の凄絶なサバイバル漂流が始まった…。2002年度ブッカー賞受賞作。
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