カテゴリー「フランツ・カフカ」の3件の記事

2014年9月30日

カフカの「変身」の翻案が凄い

アンドロイド版「変身」 平田オリザによるカフカの「変身」の翻案が凄い。

と言うのも、不安な夢から覚めたグレゴール・ザムザは大きな毒虫ではなく、アンドロイドに変わってしまっていることに気付くのだ。

青年団+大阪大学ロボット演劇プロジェクト アンドロイド版『変身』

原作:フランツ・カフカ
作・演出:平田オリザ
アンドロイド開発:石黒 浩(大阪大学&ATR石黒浩特別研究所)
翻訳:マチュー・カペル、小柏裕俊

城崎公演:2014年10月4日(土)-10月5日(日) 2ステージ
横浜公演:2014年10月9日(木)-10月13日(月・祝) 6ステージ

新型アンドロイドによる、
アンドロイド演劇最新作。
世界初演。

私たち人間は、明日、虫になっているかもしれない不条理な存在である。 私たち人間は、自らアンドロイドとの区別を証明することもできない不条理な存在である。

新型アンドロイド「リプリーS1」とフランス映画・演劇界のスターたちが競演を果たす、 異色のアンドロイド演劇最新作。 不条理の極北、カフカの世界を志向し続ける平田オリザと石黒浩が、 新しい他者との出会いを明晰に突きつける。 (フランス語上演/日本語字幕付き)

これは観たい。

@tkr2000
@honyakmonsky

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014年3月 8日

カフカの新訳版「The Metamorphosis」のカリグラフィーがグッド

「The Metamorphosis」 2014年1月20日にW W Norton & Co Inc から出版されたフランツ・カフカの新訳版「The Metamorphosis」(「変身」)の表紙のカリグラフィーが美しい。ついでにカリグラフィー部分のインクが盛り上がっているのよ。

なお、新訳と言うのはドイツ語から英語への新訳のこと。

ところで、この「The Metamorphosis」の表紙については、2014年1月30日の@postermantoruさんのツイートが爆発的にリツイート(2014年3月8日現在 6,678RT)されているので、多くの方もご存知だと思う。

ついでにこの新訳版の「変身」、ただの新訳版ではなく、なんとデヴィッド・クローネンバーグの序文付き。

そのクローネンバーグの序文はカフカの「変身」のパロディにもなっています。

ところで、このクローネンバーグの序文自体は、1月30日時点でWEBで公開されていたんですが、今見ると削除されているようですね。

わたしはその時点でAmazon.comに注文して、2月23日に届いていました。

@tkr2000
@honyakmonsky

今なら、Amazon.co.jpで829円で買えますよ。
読めなくても買いは買いだと思います。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012年5月27日

「兄が部屋から出てきません。」をめぐる冒険

今日は翻訳作品に関する余談。

先ずは、YOMIURI ONLINE発言小町のトピック兄が部屋から出てきません。を読んでみてください。

兄が部屋から出てきません。

トピ主の発言を引用します。

兄が部屋から出てきません。
グレーテ

私の兄が部屋から出てきません。 我が家は、両親の借金と私の学費を兄のお給料で賄っている状況です。

兄がこのまま部屋から出てこないで仕事を辞めてしまうと、 私の音大も続けられませんし、それどころか借金の担保に家を 引き渡さなくてならなくなるかもしれません。

がさごそした音は聞こえてきますのでいるのは確かです。 食事は食べにきませんので、私が部屋の前に置いておくようにしています。 (いつもの兄なら好き嫌いせず何でも食べるのに、残していました。)

兄が働いているアパレルの会社からも無断欠勤ということで昨日は電話がかかってくるし、 兄にはちゃんと立ち直ってもらいたいのですが、どうしたらいいでしょうか。

なお、両親は病弱で働けませんし、私自身は大学での勉強に忙しいため、 私たち家族が働くということは考えられません。 兄が一人で頑張っているのは感謝しています。 しかし、大変だとは思いますが、兄には働いてもらわないと困るのです。

いかがですか。

これに対するレスも450本以上ありますので、そちらも眺めてみてください。

トピ主に対する暖かいレスや、叱咤激励するレス、罵詈雑言のレス、いろいろなレスがついています。

続いて、トピ主のレスがついていますので、そちらもみてください。

トピ主のレスのみ

沢山のご返信ありがとうございます。
グレーテ

沢山のご返信ありがとうございます。

ただ、最初に書いてあるとおり、両親や私が働くことはできないので、 両親が働くとか、私が働くというアドバイスをいただいても困ります。 また、奨学金は難しいです。

とりあえず、部屋から出てきてもらわないと困るので、 食事を部屋まで運ぶことは止めようと思います。 (残しているぐらいだし、勿体無いし。)

それと、仕事を辞職させられると困るので、 家族と相談して、月曜に兄がしばらく病欠することを 両親から会社の人には伝えてもらうことにしました。 (幸い、これまであまり休んでいなかったので、 有休?が利用できるようです。)

どうやったら兄が働いてくれるか、アドバイスを貰えると助かります。

ごめんなさい、読み切れません。
グレーテ

ありがたいのですが、 こんなに短時間で沢山書かれても読み切れません。

私の書き方が悪くて私が非難されるのはいいです。 でも、両親まで非難されるのは辛いです。

どうして兄が部屋から出てこないかは分かりません。 今の仕事が海外出張が多く、彼女と会えないという不満は聞いたことがあります。

何人かの方が仰っているように、 このまま兄が部屋から出てこず、 医師の診断書?を会社に提出しないと、 仕事を辞めさせられる可能性があるんですよね?

私たち家族が声を掛けても反応してくれないので、 遠方で医師をしている叔父を呼ぶことも両親に話してみます。 (兄がとても慕っています。)

兄の部屋に入りました。
グレーテ

母が、音が静まった頃合いを見て、 兄の部屋に入ったところ部屋は汚れ、 兄はベッドの台の下で寝ていました。

一部の家具が壊されていたので、 ガラスの額に入った兄のデッサン画も含めて、 怪我をする可能性があるものを母と運び出すことにしました。

私がデッサン画を片付けようとしたところ、 兄が突然暴れ出したため、母が父に助けを呼び、 兄に夏みかんを投げ牽制し、父は兄をベッドに押さえ付けました。

暴れた兄の顔は見慣れた顔とは全く違ってとても恐ろしく、 私たち家族ではどうしようもないと絶望感を感じました。

兄は今は大人しくしていますが、 叔父に電話で相談して一旦叔父に面倒を見てもらうという話が出ています。

皆さんのアドバイスにもありましたように、 兄がこんな状況ではこれ以上兄の収入に頼れないかもしれません。 両親も私も働くことを考えます。

さて、皆さんはどうお感じになりましたか。

一体何が起きているのでしょう。

既に何が起きているのか察している方もいらっしゃると思うのですが、この発言小町で何が起きているかと言うと、フランツ・カフカの「変身」に登場するグレーゴル・ザムザの妹であるグレーテが、兄のグレーゴルが部屋に閉じこもって出てこなくなってしまったことを心配して、あろうことか発言小町に助けを求めているのです。

しかし、レスをつけている人達は全くそれに気付きません。

そして、レス主は自らのレスにより、文学作品をグレーテ視点の「変身」を完成させてしまいました。

これは恐ろしくも悲しい、そして驚くべき作品に仕上がっている、と言えるのではないでしょうか。

レスをつけてくれた人達には大変失礼な話ですが、トピ主:グレーテの発想と文学作品を再構築してしまうその手腕に舌を巻く思いです。

(以下2012年5月31日追記)

ブログのアクセス解析をのぞいてみると、このエントリーは結構人気のエントリーのようなので、発言小町のトピック「兄が部屋から出てきません。」のどのあたりがカフカの「変身」なのか考察していきたいと思います。

考察とかなんとか言ってますが、実際はトピ主のグレーテさんが残したヒントの解説と言うことです。基本的にすべてがヒントだと言えるので、印象的なヒントだけ紹介したいと思います。

1.グレーテ

まあ、これは解説の必要はないと思いますが、カフカの「変身」に登場するグレーゴルの妹の名前はグレーテです。彼女は音楽の勉強をしていてヴァイオリンを上手に弾きます。

2.両親の借金

これもそのままですね。両親は商売に失敗して多額の借金を抱えています。

3.食事

これもそのままです。グレーテはグレーゴルのための食事を彼の部屋の前まで運びます。

4.アパレルの会社/海外出張

グレーゴルは布地の販売の仕事をしており、いつも出張をしています。

5.部屋の状況

まあ、グレーゴルは毒虫になってますから、部屋は汚れ放題です。
また、グレーテが部屋の掃除をするようなとき、グレーゴルは寝椅子の下に隠れます。彼が眠る場所も寝椅子の下です。

6.家具を持ち出す

グレーゴルは壁や天井を這い回り始め、グレーテは母親と一緒に家具を部屋から外に出そうとします。
壁に貼ってあった雑誌の切り抜きや何かをはがそうとするとグレーゴルは暴れだします。

7.夏みかん

グレーゴルの父親はグレーゴルにリンゴをぶつけます。リンゴはグレーゴルの身体にめりこんでしまい、グレーゴルは満足に動けなくなってしまいます。

8.兄の顔

兄の顔は見慣れた顔とは全く違ってとても恐ろしく、

ここの表現が非常に巧みな部分ですね。

前述のように、トピ主のグレーテが書いた全ての表現がカフカの「変身」を指し示していますよね。

@tkr2000
@honyakmonsky

| | コメント (0) | トラックバック (0)

その他のカテゴリー

A・E・ヴァン・ヴォークト C・S・ルイス E・E・スミス E・L・ジェームズ F・スコット・フィッツジェラルド Gary L. Stewart H・G・ウェルズ J・D・サリンジャー J・G・バラード J・K・ローリング J・R・R・トールキン Matthew De Abaitua P・D・ジェームズ P・G・ウッドハウス S・J・ボルトン S・S・ヴァン・ダイン ■SF ■コメディ ■ノンフィクション ■ファンタジー ■ホラー ■ミステリー ■児童書 ■冒険小説 ■叙事詩 ■幻想 ■文芸 ■漫画 ■美術 ■詩歌 ●tkr ●unyue 「ピパの唄」 はじめに アイザック・アシモフ アイラ・レヴィン アガサ・クリスティ アゴタ・クリストフ アニメーション アラン・グレン アルフォンス・ドーテ アルフレッド・ウーリー アルフレッド・ベスター アンソニー・ドーア アンソニー・バージェス アンディ・ウィアー アンデルセン アントニイ・バークリー アンネ・フランク アン・ライス アーサー・C・クラーク アーサー・コナン・ドイル アーナルデュル・インドリダソン アーネスト・ヘミングウェイ イアン・フレミング イアン・マクドナルド イーユン・リー ウィリアム・ギブスン ウィリアム・シェイクスピア ウィリアム・ピーター・ブラッティ ウィリアム・ボイド ウィリアム・リンク ウォルター・ウェイジャー ウォルター・テヴィス ウラジミール・ソローキン エドガー・アラン・ポー エドガー・ライス・バローズ エドワード・D・ホック エド・ファルコ エマ・ドナヒュー エミリー・ブロンテ エラリー・クイーン エリザベス・ビショップ エリック・シーガル エルモア・レナード オースン・スコット・カード カズオ・イシグロ カレル・チャペック カート・ヴォネガット カート・ヴォネガット・ジュニア ガレス・L・パウエル キャロル・オコンネル ギャビン・ライアル ギレルモ・デル・トロ クリストファー・プリースト グレアム・グリーン ケイト・アトキンソン ケイト・モートン ケン・キージー コニー・ウィリス コーマック・マッカーシー サルバドール・プラセンシア シャルル・ボードレール シャーリイ・ジャクスン シャーロット・ブロンテ ジェイムズ・P・ホーガン ジェイムズ・エルロイ ジェイン・オースティン ジェニファー・イーガン ジェフリー・ディーヴァー ジェフ・キニー ジェラルディン ・ブルックス ジェームズ・クラベル ジェームズ・パターソン ジェームズ・マクティーグ ジム・トンプスン ジャック・ケッチャム ジャック・フィニィ ジャック・フットレル ジャネット・イバノビッチ ジュディ・ダットン ジュール・ヴェルヌ ジョイス・キャロル・オーツ ジョナサン・キャロル ジョナサン・サフラン・フォア ジョナサン・フランゼン ジョン・クリストファー ジョン・グリシャム ジョン・スコルジー ジョン・スラデック ジョン・ル・カレ ジョン・W・キャンベル・ジュニア ジョージ・A・エフィンガー ジョージ・オーウェル ジョージ・ルーカス ジョーゼフ・キャンベル ジョーン・G・ロビンソン ジョー・ヒル ジル・マーフィ ジーン・ヘグランド スコット・ウエスターフェルド スコット・スミス スコット・トゥロー スタンリー・キューブリック スティーグ・ラーソン スティーヴン・キング スティーヴ・ハミルトン スーザン・D・ムスタファ スーザン・オーリアン スーザン・コリンズ スーザン・ヒル セス・グレアム=スミス ダグラス・アダムス ダシール・ハメット ダニエル・キイス ダニエル・スティール ダフネ・デュ・モーリア ダンテ・アリギエーリ ダン・ブラウン チャイナ・ミエヴィル チャック・ホーガン チャールズ・M・シュルツ チャールズ・ディケンズ テオ・オブレヒト テレビムービー ディミトリ・フェルフルスト ディーン・クーンツ デイヴィッド・ゴードン デイヴィッド・ピース デイヴィッド・ホックニー デイヴィッド・ミッチェル デニス・ルヘイン デヴィッド・セルツァー トマス・H・クック トマス・ハリス トマス・ピンチョン トム・クランシー トム・ロブ・スミス トーベ・ヤンソン トーマス・マン ドナルド・E・ウェストレイク ドン・ウィンズロウ ナーダシュ・ペーテル ニコライ・ゴーゴリ ニール・スティーヴンスン ネビル・シュート ネレ・ノイハウス ノーマン・メイラー ノーラ・ロバーツ ハリイ・ケメルマン ハワード・フィリップス・ラヴクラフト ハンナ・ジェイミスン ハーマン・メルヴィル バルガス=リョサ バーナード・マラマッド パオロ・バチガルピ パトリシア・ハイスミス ビバリー・クリアリー ビル・S・バリンジャー ピエール・ブール フィリップ・K・ディック フィリップ・プルマン フィリップ・ロス フェルディナント・フォン・シーラッハ フランク・ハーバート フランツ・カフカ フリオ・リャマサーレス フリードリヒ・ニーチェ フレデリック・フォーサイス フレドリック・ブラウン ブライアン・セルズニック ブラム・ストーカー ホンヤクモンスキー ホンヤクモンスキーの憂鬱 ポール・オースター マイクル・コナリー マイケル・クライトン マイケル・コックス マザー・グース マックス・バリー マックス・ブルックス マック・レナルズ マリオ・バルガス=リョサ マリオ・プーゾ マーセル・セロー マーティン・スコセッシ メアリー・シェリー モーパッサン ヤン・マーテル ユッシ・エーズラ・オールスン ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト ライオネル・シュライバー ライマン・フランク・ボーム ライヤード・キップリング ラジオ ラッキー・マッキー ラムジー・キャンベル リチャード・スターク リチャード・バック リチャード・マシスン リチャード・レビンソン リリー・ブルックス=ダルトン リー・チャイルド ルイス・キャロル ルシアン・ネイハム レイモンド・チャンドラー レイ・ブラッドベリ レオ・ペルッツ レビュー ロアルド・ダール ロバート・A・ハインライン ロバート・B・パーカー ロバート・ブラウニング ロバート・ラドラム ロベルト・ポラーニョ ローレンス・ブロック ヴィクトル・ユーゴー 吾妻ひでお 図書館 手塚治虫 文学賞 映画 村上春樹 栗本薫 池井戸潤 湊かなえ 瀬名秀明 竹本泉 米澤穂信 翻訳作品の影響 舞台 董啓章 読書会 貫井徳郎 越前敏弥 黒史郎