貫井徳郎の「後悔と真実の色」はジェフリー・ディーヴァーの影響を!?
貫井徳郎のツイートによると、2012年10月に幻冬社により文庫化された「後悔と真実の色」はジェフリー・ディーヴァーの影響を受けている模様。
「後悔と真実の色」
著者:貫井徳郎
出版社:幻冬社(幻冬社文庫)
内容:"悪"を秘めた女は駆除する――。若い女性を殺し、人差し指を切り取る「指蒐集家」が社会を震撼させていた。捜査一課のエース西條輝司は、捜査に没頭するあまり一線を越え、窮地に立たされる。これは罠なのか? 男たちの嫉妬と裏切りが、殺人鬼を駆り立てる。挑発する犯人と刑事の執念。熾烈な攻防は驚愕の結末へ。第23回(2010)山本周五郎賞受賞作。
それでは、冒頭で紹介した、気になるツイートを引用してみましょう。
貫井徳郎 @tokuro_nukui
『後悔と真実の色』文庫発売記念に、裏話をひとつ。主人公の西條が冒頭で読んでいるペーパーバックはこれ。(画像)
グアム空港で買ったけど読まずに置いてあるうちに邦訳が出ちゃった、というのは実話です。
つまり冒頭で、今回の話はディーヴァーですよと宣言していたつもりでした。実際には、あんまりディーヴァーに似てないけど。古典的な本格ミステリーを現代風にリファインする、というところだけが共通点ですね。
だからこの年の「本格ミステリベスト10」にランクインしたのは嬉しかった。理解してくれる人はいるんだな、と。
本格ミステリーの読者って、せいぜい4000人くらいだろうというのがぼくの見積もり。でもぼくは幸いにも、それよりずっと多くの人に読んでいただいているのだけど、大半の人は本格に対する知識も理解もない(別にそれが悪いわけではない)。
ただ、作者は本格として書いているつもりなのにそうは読まれず、「犯人が簡単にわかる」と言われるのには参った。いや、登場人物の誰かが犯人なんだから、当てずっぽうでもそりゃあ当たることはあるよ。「なぜその人が犯人なのか」を考えるのがミステリーなのに。
『微笑む人』でもそうだけど、ぼくは本来ニッチなネタを扱うタイプの小説家なのに、ありがたいことにマスに読まれるので、そのギャップに戸惑われることが多々ある。だからといってマス向けの話を書く気はないので、これはもうぼくの個性を理解してもらうしかないのだよな。
最近の『微笑む人』の感想と、『後悔と真実の色』を出したときの反応には共通の根っこがあると思ったので、こんなことを考えてみました。
因みに冒頭のツイートで紹介されたのはジェフリー・ディーヴァーの短篇集「Twisted」。
同書の翻訳は文藝春秋社より「クリスマス・プレゼント」と言う邦題で刊行されている。
さて、この貫井徳郎の一連のツイートで個人的に興味深いと思ったのは次の点。
・「後悔と真実の色」はジェフリー・ディーヴァーをやろうとした作品であり、そのコンセプトは、古典的な本格ミステリーを現代風にリファインする、と言う事。
・貫井徳郎は本格ミステリーの国内の読者は4,000名程度だと考えている。
・本格ミステリーと言うサブジャンルを理解していない読者が多い。
・貫井徳郎は本格ミステリーを書いているつもりである。
・貫井徳郎が本格ミステリーを書く上で重要だと考えているのは、誰が(フーダニット/Who (had) done it)、ではなく何故(ホワイダニット/Why (had) done it)である。
ミステリー作家にも、やはりいろいろな悩み事があるようですね。
ところで余談ですが、映画業界では一般的に、3,000部〜5,000部の限定版を出せば、国内でその作品を欲しがっている人のほぼ全員に行き渡ると言われているようです。
つまりコアなユーザー数は3,000〜5,000名だと言う事でしょう。
そう考えた場合、出版業界も大体同じような規模のマーケットだと考える事が出来ますね。
(敬称略)
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