カテゴリー「エリック・シーガル」の1件の記事

2012年11月29日

「ディミター」講義 第三講

ここ最近、ウィリアム・ピーター・ブラッティの「ディミター」を読んでいる。
「エクソシスト」で有名なウィリアム・ピーター・ブラッティのミステリーである。

「ディミター」
著者:ウィリアム・ピーター・ブラッティ
訳者:白石朗
出版社:東京創元社(創元推理文庫)
あらすじ:1973年、宗教弾圧と鎖国政策下の無神国家アルバニアで、正体不明の人物が勾留された。男は苛烈な拷問に屈することなく、驚くべき能力で官憲を 出し抜き行方を晦ました。翌年、聖地エルサレムの医師メイヨーと警官メラルの周辺で、不審な事件や〈奇跡〉が続けて起きる。謎が謎を呼び事態が錯綜する中 で浮かび上がる異形の真相とは。『エクソシスト』の鬼才による入魂の傑作ミステリ!

まだわたしは「ディミター」を最後まで読んだ訳ではないのだが、なんとなく、次の映画のお話をしなくてはいけないような気がする。

「ある愛の詩」
監督:アーサー・ヒラー
原作・脚本:エリック・シーガル
音楽:フランシス・レイ
出演:ライアン・オニール(オリバー・バーレット四世)、アリ・マッグロー(ジェニー)、レイ・ミランド(オリバー・バーレット三世)、ジョン・マーリー(フィル)、キャサリン・バルフォー(オリバー夫人)、ラッセル・ナイプ(トンプソン)、トミー・リー・ジョーンズ(ハンク)、ウォーカー・ダニエルズ(レイ・ストラットン)

あらすじ:オリバーが最初にジェニーに出会ったのは大学の図書館だった。名家の四世とイタリア移民の娘という余りにも身の上の違う2人だったが、彼らは次第に惹かれ 合っていった。父の反対を押し切ったオリバーは、ハーバードの法律学校へ入る少し前にジェニーと結婚。送金は中止されるが、学費や生活費の為にジェニーは 働き、貧しいながらも幸せな日々を送っていた。やがてオリバーは優秀な成績で卒業、法律事務所へ勤めるため、2人はニューヨークへ移る。そんな新しい生活 が始まろうとしていたその時、オリバーは突然医者からジェニーが余命短い事を知らされる……。

さて、なぜこんな話をしているか、と言うと、「ディミター」のp322にとっても気になる一文があるのだ。

サミアはキッチンの小さな丸テーブルを前にすわり、慎重な手つきで日記を書いていた。明るい青インクをつかい、小さいが丸みを帯びた優美な文字で、《愛とは本当のところなんなのか?》と書きつける。体は疲れ、気分はふさいでいた。

《愛とは本当のところなんなのか?》

この問いの答えは、どう考えても《愛とは決して後悔しないこと》("Love means never having to say you're sorry")だろう。

そう、これは皆さんご承知のように映画「ある愛の詩」(1970)の名台詞である。

因みにこの訳文《愛とは決して後悔しないこと》は、《君の瞳に乾杯》("Here's looking at you, kid.")や、《お楽しみはこれからだ》("You ain't heard nothin' yet!")等で有名な高瀬鎮夫の訳。

そして、そんな訳で「ディミター」には、前述の問い《愛とは本当のところなんなのか?》から派生する「ある愛の詩」への言及だと思えるシーンが何ケ所かあるのだが、個人的にはp344あたりの描写が興味深い。

ちょっと違うと思うけど、「ある愛の詩」のオリバーとジェニーが雪の中で戯れているシーンを思い出した。

ところで、先日のエントリー『「ディミター」講義 第一講』『「ディミター」講義 第二講』でお話ししたように、ウィリアム・ピーター・ブラッティは映画に対する思い入れが人一倍強く、自らの作品には映画に対する言及や暗喩が非常に多い。

「カサブランカ」(1942)、「第三の男」(1949)ときて「ある愛の詩」(1970)とは、映画ファンならずとも興奮しますよね。

「ディミター」講義 第一講
「ディミター」講義 第二講
「ディミター」講義 第四講
「ディミター」講義 第五講

そんな「ディミター」は2013年1月26日(土)開催予定のネタバレ円卓会議【ディミター】のお題になっています。

@tkr2000
@honyakmonsky

| | コメント (0) | トラックバック (0)

その他のカテゴリー

A・E・ヴァン・ヴォークト C・S・ルイス E・E・スミス E・L・ジェームズ F・スコット・フィッツジェラルド Gary L. Stewart H・G・ウェルズ J・D・サリンジャー J・G・バラード J・K・ローリング J・R・R・トールキン Matthew De Abaitua P・D・ジェームズ P・G・ウッドハウス S・J・ボルトン S・S・ヴァン・ダイン ■SF ■コメディ ■ノンフィクション ■ファンタジー ■ホラー ■ミステリー ■児童書 ■冒険小説 ■叙事詩 ■幻想 ■文芸 ■漫画 ■美術 ■詩歌 ●tkr ●unyue 「ピパの唄」 はじめに アイザック・アシモフ アイラ・レヴィン アガサ・クリスティ アゴタ・クリストフ アニメーション アラン・グレン アルフォンス・ドーテ アルフレッド・ウーリー アルフレッド・ベスター アンソニー・ドーア アンソニー・バージェス アンディ・ウィアー アンデルセン アントニイ・バークリー アンネ・フランク アン・ライス アーサー・C・クラーク アーサー・コナン・ドイル アーナルデュル・インドリダソン アーネスト・ヘミングウェイ イアン・フレミング イアン・マクドナルド イーユン・リー ウィリアム・ギブスン ウィリアム・シェイクスピア ウィリアム・ピーター・ブラッティ ウィリアム・ボイド ウィリアム・リンク ウォルター・ウェイジャー ウォルター・テヴィス ウラジミール・ソローキン エドガー・アラン・ポー エドガー・ライス・バローズ エドワード・D・ホック エド・ファルコ エマ・ドナヒュー エミリー・ブロンテ エラリー・クイーン エリザベス・ビショップ エリック・シーガル エルモア・レナード オースン・スコット・カード カズオ・イシグロ カレル・チャペック カート・ヴォネガット カート・ヴォネガット・ジュニア ガレス・L・パウエル キャロル・オコンネル ギャビン・ライアル ギレルモ・デル・トロ クリストファー・プリースト グレアム・グリーン ケイト・アトキンソン ケイト・モートン ケン・キージー コニー・ウィリス コーマック・マッカーシー サルバドール・プラセンシア シャルル・ボードレール シャーリイ・ジャクスン シャーロット・ブロンテ ジェイムズ・P・ホーガン ジェイムズ・エルロイ ジェイン・オースティン ジェニファー・イーガン ジェフリー・ディーヴァー ジェフ・キニー ジェラルディン ・ブルックス ジェームズ・クラベル ジェームズ・パターソン ジェームズ・マクティーグ ジム・トンプスン ジャック・ケッチャム ジャック・フィニィ ジャック・フットレル ジャネット・イバノビッチ ジュディ・ダットン ジュール・ヴェルヌ ジョイス・キャロル・オーツ ジョナサン・キャロル ジョナサン・サフラン・フォア ジョナサン・フランゼン ジョン・クリストファー ジョン・グリシャム ジョン・スコルジー ジョン・スラデック ジョン・ル・カレ ジョン・W・キャンベル・ジュニア ジョージ・A・エフィンガー ジョージ・オーウェル ジョージ・ルーカス ジョーゼフ・キャンベル ジョーン・G・ロビンソン ジョー・ヒル ジル・マーフィ ジーン・ヘグランド スコット・ウエスターフェルド スコット・スミス スコット・トゥロー スタンリー・キューブリック スティーグ・ラーソン スティーヴン・キング スティーヴ・ハミルトン スーザン・D・ムスタファ スーザン・オーリアン スーザン・コリンズ スーザン・ヒル セス・グレアム=スミス ダグラス・アダムス ダシール・ハメット ダニエル・キイス ダニエル・スティール ダフネ・デュ・モーリア ダンテ・アリギエーリ ダン・ブラウン チャイナ・ミエヴィル チャック・ホーガン チャールズ・M・シュルツ チャールズ・ディケンズ テオ・オブレヒト テレビムービー ディミトリ・フェルフルスト ディーン・クーンツ デイヴィッド・ゴードン デイヴィッド・ピース デイヴィッド・ホックニー デイヴィッド・ミッチェル デニス・ルヘイン デヴィッド・セルツァー トマス・H・クック トマス・ハリス トマス・ピンチョン トム・クランシー トム・ロブ・スミス トーベ・ヤンソン トーマス・マン ドナルド・E・ウェストレイク ドン・ウィンズロウ ナーダシュ・ペーテル ニコライ・ゴーゴリ ニール・スティーヴンスン ネビル・シュート ネレ・ノイハウス ノーマン・メイラー ノーラ・ロバーツ ハリイ・ケメルマン ハワード・フィリップス・ラヴクラフト ハンナ・ジェイミスン ハーマン・メルヴィル バルガス=リョサ バーナード・マラマッド パオロ・バチガルピ パトリシア・ハイスミス ビバリー・クリアリー ビル・S・バリンジャー ピエール・ブール フィリップ・K・ディック フィリップ・プルマン フィリップ・ロス フェルディナント・フォン・シーラッハ フランク・ハーバート フランツ・カフカ フリオ・リャマサーレス フリードリヒ・ニーチェ フレデリック・フォーサイス フレドリック・ブラウン ブライアン・セルズニック ブラム・ストーカー ホンヤクモンスキー ホンヤクモンスキーの憂鬱 ポール・オースター マイクル・コナリー マイケル・クライトン マイケル・コックス マザー・グース マックス・バリー マックス・ブルックス マック・レナルズ マリオ・バルガス=リョサ マリオ・プーゾ マーセル・セロー マーティン・スコセッシ メアリー・シェリー モーパッサン ヤン・マーテル ユッシ・エーズラ・オールスン ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト ライオネル・シュライバー ライマン・フランク・ボーム ライヤード・キップリング ラジオ ラッキー・マッキー ラムジー・キャンベル リチャード・スターク リチャード・バック リチャード・マシスン リチャード・レビンソン リリー・ブルックス=ダルトン リー・チャイルド ルイス・キャロル ルシアン・ネイハム レイモンド・チャンドラー レイ・ブラッドベリ レオ・ペルッツ レビュー ロアルド・ダール ロバート・A・ハインライン ロバート・B・パーカー ロバート・ブラウニング ロバート・ラドラム ロベルト・ポラーニョ ローレンス・ブロック ヴィクトル・ユーゴー 吾妻ひでお 図書館 手塚治虫 文学賞 映画 村上春樹 栗本薫 池井戸潤 湊かなえ 瀬名秀明 竹本泉 米澤穂信 翻訳作品の影響 舞台 董啓章 読書会 貫井徳郎 越前敏弥 黒史郎