「チャイルド44 森に消えた子供たち」
「チャイルド44 森に消えた子供たち」を観た。
「チャイルド44 森に消えた子供たち」
監督:ダニエル・エスピノーサ
脚本:リチャード・プライス
原作:トム・ロブ・スミス 「チャイルド44」(新潮文庫刊)
製作:リドリー・スコット、マイケル・シェイファー、グレッグ・シャピロ
出演:トム・ハーディ(レオ・デミドフ)、ゲイリー・オールドマン(ネステロフ将軍)、ノオミ・ラパス(ラミーサ・デミドフ)、ジョエル・キナマン(ワシーリー)、バディ・コンシダイン(ヴラド)、ジェイソン・クラーク(ブロツキー)、ヴァンサン・カッセル(クズミン少佐)あらすじ:1953年、スターリン政権下のソ連で、子供たちの変死体が次々と発見される。年齢は9歳から14歳、全裸で胃は摘出され、山間にもかかわらず死因は溺死。だが、“殺人は国家が掲げる思想に反する”ため、すべて事故として処理される。秘密警察の捜査官レオは親友の息子の死をきっかけに、事件解明に乗り出す。捜査が進むほどに、国家に行く手を阻まれ、さらに、愛する妻にも不当な容疑が。真実が容易に歪められるこの国で、レオは真犯人に辿り着けるのか──?
本作「チャイルド44 森に消えた子供たち」は、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」で大変なことになっているトム・ハーディが、旧ソ連の秘密警察官を演じている。「怒りのデス・ロード」と違うトム・ハーディが楽しめる素晴らしい作品。
原作は「このミステリーがすごい!」で2009年版海外編第一位に輝いたトム・ロブ・スミスのレオ・デミトフ三部作の最初の一作「チャイルド44」。チカチーロ連続殺人事件を題材にした「チャイルド44」は、CWAのスチール・ダガー賞をとったり、ロシアで発禁本となった問題作。
脚本は原作と比較して直線的でわかりやすくなっている。その分、ミステリー部分の謎解きや犯人の登場シーンの唐突さは否めない。だからと言って作品として問題がある訳ではなく、非常に素晴らしいサスペンス映画に仕上がっている。チカチーロ事件が題材となっていることもあり、当然ながらサイコホラー的な側面もあるし。
特にスターリン政権下の旧ソ連を舞台としていることから、「犯罪は資本主義の病。理想国家では殺人はあり得ない」と言うスターリンの言葉を受け、殺人事件は事故として処理されてしまう。
従って、連続殺人犯は、連続殺人事件そのものが起きていないのだから、野放しになってしまうのである。
中国では、犠牲者が35人以上の事故死は存在しない、と言うのと似ているのかも知れない。
さて、本作「チャイルド44 森に消えた子供たち」だが、脚本は前述のように原作より非常にわかりやすく、スターリン政権の恐さや、権力を持った悪い奴の恐さがよく出ていた。
キャストは一件ぼくとつな印象を与えるトム・ハーディが、周りを上手にコントロールする様が興味深いし、本作をレオ・デミドフ三部作の第一作目として考えた場合、非常に興味深い役柄を演じているゲイリー・オールドマンが楽しい。なんとも「ダークナイト」三部作のジム・ゴードンを彷彿とさせる。
今後のシリーズ化に期待である。
ネタバレになるのであれだが、恐い役、悪い役に良い役者を使ってます。恐いですね。
この辺りになると、トム・ハーディは前述のぼくとつな印象ではなく、老獪で全てを自分の思い通りに利用する、恐い奴や、恐い奴を知っている奴の妄想をも利用し、思い通りに操るキャラクターに見えてくる。これも恐いですよね。
演出もツボを押さえて実直な印象を受ける。
犯人が子どもに声をかける部分や、疑心暗鬼なシーン、駅のサスペンスとか良いシーンが多い。
美術や衣装、ロケーション効果も良い印象。
そして考えなければならないのは、いわゆる全体主義的な世界の恐さ。
もしかしたら日本もそうなってしまうのではないか、と言う恐さもあるしね。
そんな訳で本作「チャイルド44 森に消えた子供たち」は是非劇場で。
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