「殺しのリハーサル」
2013年9月14日 中目黒キンケロシアターで、舞台「殺しのリハーサル」を観た。
「殺しのリハーサル」
演出:三田康二
脚本:リチャード・リビンソン&ウィリアム・リンク
脚色:D・D・ブルック
翻訳:保坂磨理子
出演:中野誠也、夕貴まお、志村史人、荒木真有美、真京孝行、濱田和幸、原貴紀、村田有香、佐々木志保、大部恭平、松浦豊和、村田美佐子あらすじ:ブロードウェイのとある劇場。誰もいない寂しさ漂う客席に姿を現す、劇作家アレックス。
丁度その日は、恋人であった女優、モニカの一周忌であった。一年前の今日、彼女は結婚発表を目前に、自らの主演舞台初日に謎の死を遂げた。
彼女の死後行方をくらましていたアレックスは、この日、昔からの仕事仲間であり、あの舞台の関係者であったプロデューサー、演出家、舞台監督、男優、女優等をこの劇場に招集していた。次々と登場するかつての芝居仲間たちとの再会。
しかし皆、実は今日ここに呼び出されたことを訝しんでいた。自殺と処理された女優の死を、殺人事件だったと確信するアレックス、 真犯人は必ずこの中にいる、これは、それを暴くための「殺しのリハーサル」であった。
「殺しのリハーサル」は大変素晴しい舞台だった。
プロット的には、ミステリーとして考えると弱いと感じられる部分があったが、それが許容できれば「殺しのリハーサル」は大変素晴しい、大変楽しい、そして大変感動的な舞台に仕上がっていた。
登場するキャラクターは、脚本家、プロデューサー、演出家、舞台監督、俳優たち。
それぞれのキャラクターは見事にカリカチュアライズされており、アメリカのショービジネス、特に初演翌日の劇評が全てを決定するブロードウェイに関する描写が非常に楽しい。
それぞれのキャラクターは、役柄によってステレオタイプな印象を受けるが、もちろんわれわれ観客は、そのステレオタイプなキャラクターに、そこからくる業界の裏話的なリアリティにグッとくる訳である。
わたしは舞台には、映画等では体験できないもの、制限された舞台だからこその、時間的または空間的制限を超えたミラクルな体験を求めているので、セリフ劇になってしまいがちで、ミラクルな体験から縁遠いと個人的に思っていたミステリーの舞台を敬遠していた。
しかし、舞台で観るミステリーも良いものだなあ、と今回の舞台で気付かされた。
これはもちろん、先日観た「ストリッパー物語」と同様に、本物の舞台を、舞台で描かれる舞台として利用している部分がたまらないし、現在と過去の時制を見事にジャンプする展開も素晴しい。
キャストは脚本家のアレックス・デニソンを演じた中野雅也が素晴しかった。
特にラスト、「別れのワイン」のラストにも似た感動的な印象を受けた。
また、ヒロイン役モニカ・ウェルズを演じた夕貴まおも良かった。
所謂ファム・ファタール。
そして一番印象的だったのは、プロデューサーのべラ・ラムを演じた村田美佐子。
わたしのイメージするプロデューサーそのものだった。
余談だけど、舞台なので少し違いますが、舞台の雰囲気としては、海外ドラマを吹替えで観ているような感じを受けました。
ウィットに富んだセリフだとか、日本ではあまりない事象を普通の一般的な事象として描いていたり、とか。
とにかく、舞台「殺しのリハーサル」は、ミステリーファン、「刑事コロンボ」ファン、海外ドラマファン、ブロードウェイファン必見の楽しい舞台に仕上がっている。
公演は残念ながら9月16日まで、当日券も出ているようなので、関心がある方は是非劇場へ。
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