カテゴリー「ライマン・フランク・ボーム」の1件の記事

2014年1月 3日

「ゼロ・グラビティ」は「オズの魔法使い」の影響を!?

「ゼロ・グラビティ」 さて、今日は全ての事象は翻訳小説の影響を受けている、と言うホンヤクモンスキーの妄想的エントリー。

今日、俎上に乗せるのは、アルフォンソ・キュアロン監督作品「ゼロ・グラビティ」

「ゼロ・グラビティ」は、2013年12月13日に日本公開となったSF・ヒューマン・サスペンス映画。

「ゼロ・グラビティ」"Gravity"
監督:アルフォンソ・キュアロン
脚本:アルフォンソ・キュアロン、ホナス・キュアロン
撮影:エマニュエル・ルベツキ
出演:サンドラ・ブロック(ライアン・ストーン)、ジョージ・クルーニー(マット・コワルスキー)、エド・ハリス(ミッション・コントロール)

本作「ゼロ・グラビティ」は、みなさんお気付きのように、どう考えても様々なSF作品への暗喩や言及に満ちていると思えてならない。
作品名をあげるならば「2001年宇宙の旅」「猿の惑星」「アポロ13」「バーバレラ」「エイリアン」「アビス」等々。

しかし、当ブログ『ホンヤクモンスキーの憂鬱』としては「ゼロ・グラビティ」と言う作品は、翻訳作品の影響を、その中でも特にライマン・フランク・ボームの「オズの魔法使い」の影響を受けている、と言う方向にお話を持って行きたいと考えている。

わたしが最初に「オズの魔法使い」の影響を感じたのは、サンドラ・ブロック演じるライアン・ストーン博士が、事故死した娘の赤い靴を見つけた話をするシーン。
赤い靴は当然ながら「オズの魔法使い」の《ルビーの靴》のメタファーである。

そして、赤い靴を見つけた、ということは、我が家(Home)への、つまり地球への帰還の方法を見つけた、ということに他ならない。

ライアンが赤い靴を見つけた話をする背景には、ジョージ・クルーニー演じるマット・コワルスキーが、宇宙を漂流するライアンを元気づけるため、家族の話をしたことに端を発するのだが、そのマットはジョークやほら話が好きなキャラクターとして設定されており、いい加減なことを常々つぶやいている。

「ゼロ・グラビティ」より
命綱で繋がれたライアンとマットはマットのMMUを使ってISSに向かう。

赤い靴の発見までの「ゼロ・グラビティ」のストーリーは概ね次の通り。

ライアン・ストーン博士はミッション・スペシャリストとしてスペースシャトル・エクスプローラー号に乗り込み、地上約600kmの衛星軌道上を周回するハッブル宇宙望遠鏡(HST)の修理を行っていた。そこにロシアが破壊した人工衛星の大量の破片がスペースデブリとなり高速で接近しつつある、という通信が地球のミッション・コントロールから入る。

エクスプローラー号に避難しようとするライアンとマットだったが、大量のスペースデブリがエクスプローラー号を直撃、ライアンとマットは宇宙空間に別々に放り出されてしまう。

離ればなれになった二人は、有人機動ユニット(MMU)を装着しているマットの機転と行動力でなんとか合流し自分たちを命綱で繋ぎ、一時はエクスプローラー号に帰還する。しかし被害状況が芳しくなく二人は国際宇宙ステーション(ISS)に向かう決断をする。

MMUの燃料不足もあり、不可抗力からISSに衝突してしまった二人はその反動でISSからはじき飛ばされてしまいそうになる。ライアンは辛うじてISS上の宇宙船ソユーズのパラシュートのロープに引っかかるが、マットの命綱に引かれてライアンもソユーズから離れそうになってしまう。マットはライアンを助けるため、自ら命綱を切断する。

「ゼロ・グラビティ」より

辛くもISSに入ったライアンだったが、ISS内部で発生した火災のため宇宙船ソユーズに避難する。しかしソユーズは燃料切れのためエンジンが作動せず、ライアンは死を覚悟し船内の酸素供給を停止させる。

しかし、マットが突然ソユーズのハッチの向こう側に現れ、船外活動の新記録だ、とかなんとか言いながらソユーズに入ってくる。

マットは、ソユーズの燃料がなくても、自動制御の着陸時の逆噴射システムによりソユーズをISSから離脱させ、中国の宇宙ステーション天宮へ向かう推進力に使えるのではないか、と示唆する。つまり、マットはライアンに機械を騙す方法を考えろ、と言う訳だ。

しかしマットはライアンが見た幻に過ぎなかった。

そこで、ライアンは赤い靴を見つけた話をする。

亡くなった娘が生前探していた赤い靴を自宅で見つけたわよ、とライアンは亡き娘に独り言で報告するのだ。

「ゼロ・グラビティ」における赤い靴は前述のように「オズの魔法使い」に登場する《ルビーの靴》のメタファーであり、我が家(Home)に帰るための唯一の方法のメタファーである。

《ルビーの靴》
《ルビーの靴》 映画「オズの魔法使」より

ここで、ジョージ・クルーニー演じるマット・コワルスキーはオズの大魔王の役柄を振られている事が明らかになる。

マットがジョークやほら話が好きな理由はそういう訳なのである。

というのも、オズの大魔王は魔法使いでもなんでもなく、ただのほら吹きのペテン師で、機械装置で大魔王の威厳や魔法を演出していただけなのである。

ソユーズに入ってくるマットがライアンの幻に過ぎないのは、マットがオズの大魔王であり、その存在自体がいかさまであることを明示している。

《オズの大魔王》
《オズの大魔王》 映画「オズの魔法使」より

しかし、ここで考えなければならないのは、もしライアンの娘が事故に遭う前に赤い靴を見つけていたら、ライアンの娘はおそらくは事故死せず、我が家(Home)に帰る事が出来たであろう、ということ。その場合、つまり娘が生きていた場合はライアンは赤い靴を見つけられずに、地球(Home)へ帰る事が出来なかった、と推測することが出来る。

ライアンは亡き娘の代わりに、我が家(Home)へ帰る手段である《ルビーの靴》を見つけたのである。

つまり、娘の代わりに生き延びる事が出来た、娘の命の代わりに命を得た、と言う解釈が出来る。

ところで「オズの魔法使い」の物語の中で、ドロシーと旅をするブリキの木こりは《知恵》を、かかしは《心》を、臆病ライオンは《勇気》を手に入れる事を願っている。

「ゼロ・グラビティ」の物語は端的に要約すると、ライアンが《知恵》《心》《勇気》を取り戻し、オズの大魔王の助言で《ルビーの靴》を見つけ、《我が家》に帰る物語なのである。

そして、ハッブル宇宙望遠鏡(HST)、スペースシャトル・エクスプローラー号、国際宇宙ステーション(ISS)、宇宙船・ソユーズ着陸船、宇宙ステーション天宮、宇宙船・神船、地球へと続く道は、スペースデブリで出来たイエロー・ブリック・ロードに他ならない。

どうだろう、「ゼロ・グラビティ」「オズの魔法使い」の影響を受けている事にはガッテンしていただけただろうか。

There is no place like home!

※ 実際の「オズの魔法使い」の物語では《ルビーの靴》は《銀の靴/スリッパ》であり、ドロシーに《銀の靴》を使ってカンザスに戻る方法を教えるのは、《南の魔女・グリンダ》。「ゼロ・グラビティ」では、《オズの大魔王》と《グリンダ》のキャラクターを統合し、マット・コワルスキーのキャラクターとしていると解釈できます。

@tkr2000
@honyakmonsky

| | コメント (0) | トラックバック (0)

その他のカテゴリー

A・E・ヴァン・ヴォークト C・S・ルイス E・E・スミス E・L・ジェームズ F・スコット・フィッツジェラルド Gary L. Stewart H・G・ウェルズ J・D・サリンジャー J・G・バラード J・K・ローリング J・R・R・トールキン Matthew De Abaitua P・D・ジェームズ P・G・ウッドハウス S・J・ボルトン S・S・ヴァン・ダイン ■SF ■コメディ ■ノンフィクション ■ファンタジー ■ホラー ■ミステリー ■児童書 ■冒険小説 ■叙事詩 ■幻想 ■文芸 ■漫画 ■美術 ■詩歌 ●tkr ●unyue 「ピパの唄」 はじめに アイザック・アシモフ アイラ・レヴィン アガサ・クリスティ アゴタ・クリストフ アニメーション アラン・グレン アルフォンス・ドーテ アルフレッド・ウーリー アルフレッド・ベスター アンソニー・ドーア アンソニー・バージェス アンディ・ウィアー アントニイ・バークリー アンネ・フランク アン・ライス アーサー・C・クラーク アーサー・コナン・ドイル アーナルデュル・インドリダソン アーネスト・ヘミングウェイ イアン・フレミング イアン・マクドナルド イーユン・リー ウィリアム・ギブスン ウィリアム・シェイクスピア ウィリアム・ピーター・ブラッティ ウィリアム・ボイド ウィリアム・リンク ウォルター・ウェイジャー ウラジミール・ソローキン エドガー・アラン・ポー エドガー・ライス・バローズ エドワード・D・ホック エド・ファルコ エマ・ドナヒュー エミリー・ブロンテ エラリー・クイーン エリザベス・ビショップ エリック・シーガル エルモア・レナード オースン・スコット・カード カズオ・イシグロ カレル・チャペック カート・ヴォネガット カート・ヴォネガット・ジュニア ガレス・L・パウエル キャロル・オコンネル ギャビン・ライアル ギレルモ・デル・トロ クリストファー・プリースト グレアム・グリーン ケイト・アトキンソン ケイト・モートン ケン・キージー コニー・ウィリス コーマック・マッカーシー サルバドール・プラセンシア シャルル・ボードレール シャーロット・ブロンテ ジェイムズ・P・ホーガン ジェイムズ・エルロイ ジェイン・オースティン ジェニファー・イーガン ジェフリー・ディーヴァー ジェフ・キニー ジェラルディン ・ブルックス ジェームズ・クラベル ジェームズ・パターソン ジェームズ・マクティーグ ジム・トンプスン ジャック・ケッチャム ジャック・フィニィ ジャック・フットレル ジャネット・イバノビッチ ジュディ・ダットン ジュール・ヴェルヌ ジョイス・キャロル・オーツ ジョナサン・キャロル ジョナサン・サフラン・フォア ジョナサン・フランゼン ジョン・クリストファー ジョン・グリシャム ジョン・スコルジー ジョン・スラデック ジョン・ル・カレ ジョン・W・キャンベル・ジュニア ジョージ・A・エフィンガー ジョージ・オーウェル ジョージ・ルーカス ジョーゼフ・キャンベル ジョーン・G・ロビンソン ジョー・ヒル ジル・マーフィ ジーン・ヘグランド スコット・ウエスターフェルド スコット・スミス スコット・トゥロー スタンリー・キューブリック スティーグ・ラーソン スティーヴン・キング スティーヴ・ハミルトン スーザン・D・ムスタファ スーザン・オーリアン スーザン・コリンズ スーザン・ヒル セス・グレアム=スミス ダグラス・アダムス ダシール・ハメット ダニエル・キイス ダニエル・スティール ダフネ・デュ・モーリア ダンテ・アリギエーリ ダン・ブラウン チャイナ・ミエヴィル チャック・ホーガン チャールズ・M・シュルツ チャールズ・ディケンズ テオ・オブレヒト テレビムービー ディミトリ・フェルフルスト ディーン・クーンツ デイヴィッド・ゴードン デイヴィッド・ピース デイヴィッド・ホックニー デイヴィッド・ミッチェル デニス・ルヘイン デヴィッド・セルツァー トマス・H・クック トマス・ハリス トマス・ピンチョン トム・クランシー トム・ロブ・スミス トーベ・ヤンソン トーマス・マン ドナルド・E・ウェストレイク ドン・ウィンズロウ ナーダシュ・ペーテル ニール・スティーヴンスン ネビル・シュート ネレ・ノイハウス ノーマン・メイラー ノーラ・ロバーツ ハリイ・ケメルマン ハワード・フィリップス・ラヴクラフト ハンナ・ジェイミスン ハーマン・メルヴィル バルガス=リョサ バーナード・マラマッド パオロ・バチガルピ パトリシア・ハイスミス ビバリー・クリアリー ビル・S・バリンジャー ピエール・ブール フィリップ・K・ディック フィリップ・プルマン フィリップ・ロス フェルディナント・フォン・シーラッハ フランク・ハーバート フランツ・カフカ フリオ・リャマサーレス フリードリヒ・ニーチェ フレデリック・フォーサイス フレドリック・ブラウン ブライアン・セルズニック ブラム・ストーカー ホンヤクモンスキー ホンヤクモンスキーの憂鬱 ポール・オースター マイクル・コナリー マイケル・クライトン マイケル・コックス マザー・グース マックス・バリー マックス・ブルックス マック・レナルズ マリオ・バルガス=リョサ マリオ・プーゾ マーセル・セロー マーティン・スコセッシ メアリー・シェリー モーパッサン ヤン・マーテル ユッシ・エーズラ・オールスン ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト ライオネル・シュライバー ライマン・フランク・ボーム ライヤード・キップリング ラジオ ラッキー・マッキー ラムジー・キャンベル リチャード・スターク リチャード・バック リチャード・マシスン リチャード・レビンソン リー・チャイルド ルイス・キャロル ルシアン・ネイハム レイモンド・チャンドラー レイ・ブラッドベリ レオ・ペルッツ レビュー ロアルド・ダール ロバート・A・ハインライン ロバート・B・パーカー ロバート・ブラウニング ロバート・ラドラム ロベルト・ポラーニョ ローレンス・ブロック ヴィクトル・ユーゴー 吾妻ひでお 図書館 手塚治虫 文学賞 映画 村上春樹 栗本薫 池井戸潤 湊かなえ 瀬名秀明 竹本泉 米澤穂信 翻訳作品の影響 舞台 董啓章 読書会 貫井徳郎 越前敏弥 黒史郎