「ギリシャに消えた嘘」
2015年4月12日 シネ・リーブル梅田で「ギリシャに消えた嘘」を観た。
「ギリシャに消えた嘘」
監督・脚本:ホセイン・アミニ
原作:パトリシア・ハイスミス 「殺意の迷宮」創元推理文庫刊
出演:ヴィゴ・モーテンセン(チェスター)、キルステン・ダンスト(コレット)、オスカー・アイザック(ライダル)、デイジー・ビーヴァン(ローレン)1962年、ギリシャのアテネでツアーガイドをしている米国人青年ライダル(オスカー・アイザック)が、パルテノン神殿で優雅なアメリカ人紳士チェスター(ヴィゴ・モーテンセン)とその妻コレット(キルスティン・ダンスト)とめぐり合う。
リッチで洗練された夫妻にたちまち魅了されたライダルは、彼らのガイドを務め、楽しい夕食のひとときを共にする。ところがその夜、チェスターがホテルの部屋に現れた探偵を殺害し、ライダルがその後始末を手助けしたことから3人の運命は激変。
実はチェスターは大勢の投資家を欺き、大金を奪った詐欺師だったのだ。船とバスを乗り継ぎ、偽造旅券が届くクレタ島へ向かう道中、ライダルはコレットと親密な関係となり、嫉妬心に駆られたチェスターは平常心を失っていく。やがて警察の捜査網にも追いつめられた3人は、もはや後戻りできない破滅への道を突き進んでいくのだった…。
大変上質なサスペンス映画。
先ずは脚本が素晴らしい。もちろんそこにはパトリシア・ハイスミスの原作「殺意の迷宮」がある訳だが、脚本は、個人的に高く評価している「47RONIN」(2013)や、みんな大好きな「ドライヴ」(2011)の脚本を務めたホセイン・アミニ。
本作「ギリシャに消えた嘘」は、そんな「ドライヴ」の脚本家の初監督作品と言うこと。
そして、物語のテイストはヒッチコック作品や1980年代に爆発的にヒットしたクリスティ原作の映画化作品をモダンにした印象。
と言うのも、ブロンドのキルステン・ダンストのヒロイン像はヒッチコック作品へのオマージュだろうし、風光明媚な観光地をめぐるロケーションは一連のクリスティ原作の豪華絢爛デラックスな作品を彷彿とさせる。
しかしながら、大時代な1980年代テイストの作品か、と言うとそうではなく、21世紀の観客にもしっかりと伝わる映像文法が心地よい。
そして、汗ひとつかかないクリスティの映画化作品ではなく、キャラクターがもう汗まみれでデロデロになってしまうところが違っていて格好いい。
また、プロップや神話の使い方が非常に巧い。
詳しくは書かないけど、非常に暗喩的。
舞台は1962年のギリシャ。
その世界観を再現する美術や衣装が素敵。
シックからデロデロまで。その全てが素晴らしい。
物語の構造が、パトリシア・ハイスミス原作の「太陽がいっぱい」と似ている事もあり、アイザックはおそらくアラン・ドロンを念頭に置いているのだと思うが、ヴィゴ様もダンストも食い尽くす程の素晴らしい演技を見せている。
エンド・クレジットのキャストのカードの出し方も、
Viggo Mortensen
Kirsten Dunst
and
Oscar Isaac
となっていて、この and に泣ける。
ヴィゴ・モーテンセンはなんとなく、エド・ハリスに似て来た印象。
本作ではヒーローではなくぶざまなヴィゴ様も楽しめる。
キルステン・ダンストはなんとも美しい。
一時の悪評が嘘だったように美しく魅力的である。
オスカー・アイザックではなくとも、ダンストにやられてしまう。そんな感じ。
本作「ギリシャに消えた嘘」は、サスペンス映画のお手本のような素晴らしい作品。
是非、劇場で。96分と尺が短いのも嬉しいよ。
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