「PARKER/パーカー」
2013年2月10日 東京板橋《ワーナー・マイカル・シネマズ板橋》で、ドナルド・E・ウェストレイクがリチャード・スターク名義で発表した「悪党パーカー/地獄の分け前」の映画化作品「PARKER/パーカー」を観た。
「PARKER/パーカー」
監督:テイラー・ハックフォード
原作:リチャード・スターク
脚本:ジョン・J・マクロクリン
出演:ジェイソン・ステイサム(パーカー)、ジェニファー・ロペス(レスリー・ロジャース)、マイケル・チクリス(メランダー)、ウェンディ・ピアース(カールソン)、クリフトン・コリンズ・Jr.(ロス)、ニック・ノルティ(ハーレー)、エマ・ブース(クレア)あらすじ:犯行の為だけに集められた4人と組み、大金が集まるステート・フェアを襲撃したパーカー(ジェイソン・ステイサム)。見事強奪に成功するも4人組はパーカーに瀕死の重傷を負わせ分け前を奪って逃走。なんとか一命を取り留め報復計画を企てたパーカーは、4人組を追跡し始めるが・・・・
「悪党パーカー/地獄の分け前」
著者:リチャード・スターク
訳者:小鷹信光
出版社:早川書房(ハヤカワ・ミステリ文庫)あらすじ:新しい仲間三人と組んで銀行を襲撃したパーカーは、見事千二百万ドルの強奪に成功する。しかし三人組はパーカーの分け前を奪って逃走。どうやら次の大がかりな襲撃の資金にしようとしているらしい。裏切者は地獄へ落ちろ!復讐に燃えたパーカーは、大胆不敵、奇想天外な報復計画を企てるが、その矢先、正体不明の刺客に襲われ瀕死の重傷を負ってしまう…冷酷非情な犯罪者パーカーが最大の危機を迎える、シリーズ注目作。
先ずは本作「PARKER/パーカー」は大変面白い娯楽作品に仕上がっていた。
先日公開された、リー・チャイルド原作、トム・クルーズ主演、クリストファー・マッカリー監督作品「アウトロー」もそうだったが、本作「PARKER/パーカー」の物語も非常にストレート。
しかしながら、テイラー・ハックフォードの演出のおかげか、キャラクターは見事に生き生きとしおり、行動原理が明確である。とは言うものの、2013年現在のキャラクター設定としてどうかと言うと、原作が2000年の発表、と言う事もあるのか、それぞれのキャラクター設定が案外ストレートで、言わばステレオタイプ的な印象をも受けてしまう。
とは言うものの、実の際「悪党パーカー」シリーズは言ってみれば「水戸黄門」みたいな予定調和的な物語なので、それはそれで良いのだろう。シリーズ化もし易そうだし。
そんな訳で、本作「PARKER/パーカー」は、勧善懲悪の、--まあもちろんパーカーも悪なのだが--、物語を楽しみ、クライマックスで爽快感を感じ、エピローグでハッピーな気持ちになって劇場を後にするのには最適な素晴しい作品だと言えよう。
脚本は、概ね良い。しかしジェニファー・ロペス演じるレスリーのキャラクターはコメディリリーフの役柄を振られている訳だが、その自分勝手な行動でパーカーの作戦に支障を来してしまっている。
このようなおバカキャラの存在によって主人公が危機に陥り、物語が転がる、と言う脚本はそろそろやめてはいかがかな、と思った。
もし「PARKER/パーカー」が、もうちょっとビッグバジェッドな作品だったら、ジェニファー・ロペスはラジー賞候補になっちゃったんじゃないのかな、とも思える程のキャラクターだった。パーカーにもマイケル・チクリス演じるメランダーにも、何度も「黙れ!」と怒鳴られる程の空気が読めないキャラクターになってしまっている。
冒頭、ステート・フェアの売上強奪シークエンスから、瀕死の重傷を負うパーカーを描く部分までは、予告編で何度も観ている部分なのだが、知っているのにも関わらず緊迫感溢れる印象で、またパーカーの人質に対する対応と、陽動作戦の失敗に対する対応で、パーカーのキャラクターをオープニングシーンだけで、観客に伝える事に成功している。
そこからはほぼ一本調子なのだが、ジェニファー・ロペス演じるレスリーの登場シーン、起床からカフェそしてオフィスへの流れが、あまりにも唐突で違和感を感じた。「おまえ一体何者なんだよ!」と言う感じで。
また残念な事に、レスリーを仲間に引き込む部分の脚本が弱く、犯罪のプロフェッショナルであるはずのパーカーがレスリーの前では素人みたいな行動を取ってしまっている、と言う印象を観客に与えてしまっている。
病院からパームビーチまでのパーカーや、クライマックスに向けての用意周到なパーカーと比較すると、レスリーが登場する部分とのパーカーギャップが大きいように感じられてならない。
キャストとしてはニック・ノルティが自身のフィルモグラフィを利用した、言わば映画的記憶を利用した部分が良かった。つまり、いろんな映画で悪事を働き、その上で、引退してまるくなった悪い奴を見事に演じているのだ。
ジェイソン・ステイサムはいつも通り。
ただ、リチャード・スターク作品の今後のシリーズ化については前向きに取組んでいただきたいと思った。
また、脚本上の問題なのか、本作「PARKER/パーカー」の悪役に小物感が付きまとう。一応は、脚本上決着を見るのだが、少し残念な印象を受けた。
ところで、冒頭の強奪シーンは原作では銀行だったのだが、ステート・フェアの売上を強奪することにしたのは映画的には成功だったと思う。
まあ、おわかりだと思うが冒頭のステート・フェアは所謂《移動式遊園地》である。
アメリカの小説によく出てくる《移動式遊園地》だけど、あんなに大規模な絶叫マシンが期間限定で街にやってくるなんて、日本人からすると結構な驚きですよね。
ラストのエピローグも、パーカーのキャラクターを描く上で素晴しいですよね。
ところで、シーン転換の際に画面上にでっかい赤い3Dの文字が出るのは「北北西に進路を取れ」のソウル・バスの影響を受けた、カイル・クーパーの「パニック・ルーム」の影響を受けている感じですね。
とにかく、本作「PARKER/パーカー」は、非常に面白い娯楽作品に仕上がっているので、関心がある方は是非劇場へ!
なお、本作「PARKER/パーカー」は、2008年に亡くなったドナルド・E・ウェストレイクに捧げられている。
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