2012年1月17日 驚くべきニュースが日本中を駆け巡った。
第146回芥川賞を受賞した円城塔は、伊藤計劃の遺作となった未完の長編「屍者の帝国」を引き継ぎ、完成させる意向を明らかにしたのだ。
この件については2012年1月18日に「WEB 本の雑誌」で公開された大森望の記事「伊藤計劃の遺稿を円城塔が書き継ぐ」が詳しい。
伊藤計劃の遺稿を円城塔が書き継ぐ
記録のため重要な部分を引用する。
1月17日に選考会が行われた第146回芥川賞は、円城塔「道化師の蝶」と田中慎弥「共喰い」の2作が受賞した。
東京會舘で開かれた記者会見の席上、次回作に関する質問を受けた円城塔は、伊藤計劃の遺作となった未完の長編「屍者の帝国」を引き継ぎ、完成させる意向を明らかにした。
いわく、
「わたくしはデビューして今年で5年目になるんですけれど、ほぼ同時期にデビューして、3年前に亡くなった、伊藤計劃というたいへん力のある作家がいました。その伊藤計劃が残した冒頭30枚ほどの原稿があります。それを書き継ぐ----といっても、彼のように書くことは無理なんですが、自分なりに完成させるという仕事を、この3年間、ご家族の了承を得てやってきました。そろそろ終わりそうです。『なぜおまえが』という批判は当然あるでしょうが、次の仕事として、やらせていただければと思っています」
伊藤計劃「屍者の帝国」は、河出書房新社編集部の求めに応じて伊藤計劃が病床で執筆していた書き下ろし作品。完成すれば第四長編となるはずだったが、冒頭部分(400字詰原稿用紙にして約30枚分)だけを残して、著者は2009年3月20日に死去した。
今回の「屍者の帝国」は、伊藤計劃が残した遺稿とプロットを円城塔が引き継ぐかたちになる。
伊藤計劃と円城塔。現代SFを代表するふたつ才能の融合がどんな長編に結実したのか、「屍者の帝国」を読む日が待ち遠しい。
Project Itoh goes on. (大森望)
なんとも胸熱な展開だろうか。
「屍者の帝国」については、「虐殺器官」「ハーモニー」を読んでいたわたしは、2009年12月に河出書房新社から出版される大森望責任編集「書き下ろし日本SFコレクション NOVA1」に伊藤計劃の新作が掲載される、と言う話を聞き、大喜びで「NOVA1」を購入したものの、なんと冒頭の一部しか掲載されておらず、--わたしは伊藤計劃の新作短篇が全文掲載されていると思い込んでいたのだ--、非常に残念な思いをした記憶がある。
あぁ、やはり伊藤計劃の新作はもう読めないのだな、と。
その期待の作品が近いうちに読めるとは、何と素晴らしいことであろうか。
楽しみで仕方がない。
ところで、折角なので、わたしの広大なアーカイブ(嘘)から、ちょっとしたお宝グッズを紹介しようと思う。
これは「東京ゲームショウ2007」のKONAMIブースで配付されていた「METAL GEAR SOLID 4: GUNS OF THE PATRIOTS」のパンフレットである。
何故こんなものを紹介しているのか、と言う話なのだが、なんと伊藤計劃がこのパンフレットに寄稿しているのだ。
題して「小島秀夫---我ら神亡き時代の神の語り手として」。
この文章の伊藤計劃の紹介文がふるっている。
いとう けいかく
Project - Itoh
1974年東京都生まれ。武蔵野美術大学卒。Webディレクター兼作家。
著書にポスト9.11の内戦と民族虐殺を描いた「虐殺器官」(早川書房)。
中学より二十年間、リアルタイムに小島秀夫監督作品の洗礼を受けてきた「小島秀夫原理主義者」。
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