映画

2013年12月16日

「ゼロ・グラビティ」をめぐる冒険

2013年12月14日 ユナイテッド・シネマとしまえん「ゼロ・グラビティ IMAX 3D」を観た。

今日のエントリーは、わたしがどのように「 ゼロ・グラビティ 」を観たか、と言う一映画ファンの妄想じみたお話。

と、言うのも本作「ゼロ・グラビティ」は、どうみても様々な作品への暗喩に満ちている、と思えてならないのだ。

まずは、冒頭。
やけに平板じみた地球。その地球はどうみてもマットペイントに見えた。
そして、画面の右上端に登場し、中央に流れてくるスペースシャトル。

これはどう見ても「 2001年宇宙の旅」のマットペイントで描かれた地球と人工衛星の再現に見えてならない。
尤も、わたしの席が最前列に近かったせいで、地球が平板っぽく見えたのかも知れないけど、冒頭の地球だけは妙に平板っぽい印象を受けた。

この冒頭の地球。
CGI全盛の時代になぜマットペイントっぽい地球をわざわざ出すのか。
これは同考えても、本作の制作者たちが敬愛する先人たち、スタンリー・キューブリックやダグラス・トランブルらへのオマージュに他ならない。

ところで、「2001年宇宙の旅」つながりで言うと、国際宇宙ステーション(ISS)内に浮いているペンは、「2001年宇宙の旅」のヘイウッド・フロイド博士のペンに造形が似ているような気がした。

また、その流れで言うと、サンドラ・ブロック演じるライアン・ストーンと別れ、一人になった直後のジョージ・クルーニー演じるマット・コワルスキーのセリフにびっくりする。

My GOD,

まさか! 

My GOD, It's full of stars.

が来るか、と思ったらガンジス川だってよ。

でも、MY GOD, の後の数秒の間には、多くの映画ファンの頭の中には、It's full of stars. と言うセリフが、再生されてたと思う。

あと、晴れときどきデブリ、とか言うセリフがあったけど「くもりときどきミートボール」はワーナーですか。ソニーですね。

ところで、サンドラ・ブロック演じるライアン・ストーン博士だけど、Stoneと言うラスト・ネームに引っかかるよね。

これは、どう考えても、重力に惹かれる名前だよね。

で重力の話。

本作の原題は「Gravity」
邦題はなぜか「ゼロ・グラビティ」になってしまった。
公開前は、トゥースレスが大人の事情でトゥースになってしまったように、全く逆の意味じゃん、と言う程度の思いしかなかったのだが、本作を観ると、この「Gravity」と言うタイトルの意味が非常に重いことに気が付く。

「ゼロ・グラビティ」と言う邦題を付けた奴は映画観ていないのか、それとも映画から「GRAVITY」の意味をつかみ取れない奴なのか。

例えるならば、本作のタイトル「GRAVITY」は、ヘレン・ケラーが、水を、水と言う言葉Waterを認知した瞬間のように、ストーン博士はGravityを感じているのだ。

そして不思議なことに本作「ゼロ・グラビティ」では、「GRAVITY」と言うタイトルと言うか文字が2回画面に登場するのだ。

1回目は映画のタイトルではなく、先ほどの例えのように、つまりヘレン・ケラーにとってのWATERのように、観客に衝撃を与える言わば字幕として「GRAVITY」の文字が登場する。そして2回目は本作のタイトル「GRAVITY」として、映倫マークと一緒に画面に登場するのだ。

気付けよ、配給会社の人よ。

ところで、ストーン博士が「GRAVITY」を感じる場所はどう見ても「猿の惑星」でチャールトン・ヘストンが落っこちたところでしょ。

本来ならばしばらく浮いているはずのカプセルが水浸しになるのも「猿の惑星」へのオマージュでしょ。

カプセルのシークエンスでは地上の明かりが電気の灯りではなく、炎のように見えたのは気のせいかな、本気で「猿の惑星」をやろうとしたのか、と思ったけど、無線で、大気圏突入を確認した、とか言ってるので、これは妄想でしたね。

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この地上の灯りは電気の灯りじゃなくて炎の灯りのよう。

ところで、ストーン博士が、国際宇宙ステーション(ISS)で着替える宇宙服には、ロシア語と英語で、L・デミトフのネームタグが付いていた。

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この宇宙服にロシア語と英語でL・デミトフのネームタグが付いている。

L・デミトフってあなた、トム・ロブ・スミスの「チャイルド44」シリーズの主人公の名前じゃないですか。

「チャイルド44」の映画化にアルフォンソ・キュアロンは関係しているのかな、と思っちゃう。

ついでに、国際宇宙ステーション(ISS)で宇宙服を脱ぐストーン博士は「エイリアン」のリプリーを絶対意識してるよね。

で、今回気付いたんだけど、ジョージ・クルーニーのクルーニーって、Clooneyなのね。

マービン・ザ・マーシャン スペースシャトルエクスプローラー号に、ワーナーの「ルーニー・チューンズ」("Looney Tunes")のキャラクターのマービン・ザ・マーシャンが、「アビス」のときのガーフィールドみたいに出てきてたけど、ClooneyからCをとったらLooneyで、もうひとつeをとったらLoonyで、Lunaticみたいで面白いよね。

まあマービン・ザ・マーシャンって火星人なんだけどね。

で、再登場するマット・コワルスキーのシーンで、ストーン博士が赤い靴を見つけた話をするんだけど、これは「オズの魔法使」のルビーの靴の暗喩。

赤い靴を見つけた、と言うことは、我が家に帰る方法を見つけた、と言う意味。

そう考えた場合、冒頭からほら話を続けているマット・コワルスキーは、どう考えてもオズの大魔王の役柄を振られており、ドロシーをカンザスへ、つまりストーンを地球へ戻す手助けをしている訳。

これは興味深いよね。

まあ今日はここまで。

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2013年9月20日

「マン・オブ・スティール」をめぐる冒険

2013年9月15日、109シネマズ川崎でザック・スナイダーの「マン・オブ・スティール IMAX 3D」を観た。

大昔、わたしが少年だった頃。

クリストファー・リーヴがタイトルロールを演じたリチャード・ドナーの「スーパーマン」(1978)を観た時の話。

ジョー=エル(マーロン・ブランド)が自分の息子であるカル=エルをトゲトゲのカプセルに入れて惑星クリプトンから地球へと送ったのを観て、これ「十戒」(1956)じゃねえの、と思ってから幾星霜。

「スーパーマン」(1978)より「十戒」(1956)指数が高いスーパーマン物語「マン・オブ・スティール」(2013)が公開された。

先ずは予告編を観て驚いた。

と言うのも、この「マン・オブ・スティール」の予告編には「十戒」的に興味深いセリフがあったのだ。

ジョー=エル:さらばだ 息子よ お前に希望を託す
ララ・ロー=ヴァン:恐れられ 殺されるわ
ジョー=エル:いや 救世主になるよ

Jor-El: Goodbye, my son. Our hopes and dreams travel with you.
Lara Lor-Van: He will be an outcast. They'll kill him.
Jor-El: How? He'll be a god to them.

これは驚きである。
死から逃れ、籠に乗せられて地球に流された赤ん坊が地球で救世主になる、とジョー=エルは言っているのだ。

さて、ご承知のように「十戒」では、と言うか本来は「旧約聖書」では、と言うべきなのだが、こんな物語が語られている。

ヘブライ人がエジプトの奴隷とされていた時代、一人のヘブライ人の男の子が生まれる。ファラオは救世主の誕生を恐れたため、ヘブライ人の男の幼児をすべて殺すように命令する。難を逃れるため、その子は籠に入れられ、ナイル川に流されたが、沐浴していたエジプトの王女ベシアに拾われる。ベシアはその子をモーセと名付け、自分の子として育てる。

後にモーセは神の啓示を受け、エジプトからヘブライ人を解放するため、王ラメセスと交渉する。

一時はそれを許したラメセスだったが、エジプト軍を率いてヘブライ人を紅海まで追い詰める。

そしてモーセは紅海をふたつに割るのである。

さて、そこまで考えた上で、「マン・オブ・スティール」を考えてみる。

冒頭、惑星クリプトンの壊滅のシーンは予告編で描かれている通りであるが、描かれていない部分で、ジョー=エルは息子カル=エルにコデックスを託す。

このコデックスが実は曲者で、コデックスには惑星クリプトンの全人類の遺伝子コードが記録されているのだ。そしてそのコデックスに内包されている遺伝子コードを活用し、惑星クリプトンの全人類が、一種のクローンとして誕生している訳なのだ。

そんな中、惑星クリプトンでは数百年の間、自然分娩の子どもは産まれていないのだが、ジョー=エルはララ・ロー=ヴァンとの間に、クローンではなく自然分娩で息子カル=エルをもうける。

そして、ジョー=エルは息子カル=エルにコデックスを託すのだが、これは何を表現しているのか、と言うと、当然ながらモーセがヘブライ人を率いてエジプトから脱出することのメタファーとなっている。

つまり、カル=エルは幼くしてクリプトンの全人類を率いてクリプトンから脱出したことを描いている。カル=エルは、遺伝子コードの民を率いる預言者(救世主)なのだ。

ゾッド将軍/「マン・オブ・スティール」より
「マン・オブ・スティール」のゾッド将軍(マイケル・シャノン)。エジプトの王に見える。

更に、それを追うゾッド将軍(マイケル・シャノン)は王ラメセスのメタファーであり、そのルックスもエジプト王のように見えるではないか。

モーセ/「十戒」より
「十戒」
のモーセ(チャールトン・ヘストン)。預言者モーセはスーパーマンなのか。

それでは、「十戒」の紅海をふたつに割るシーンはどこで描かれているか、と言うと、もうそれは「スーパーマン」シリーズのお約束、海上を飛ぶスーパーマンはソニックブームで海をまっぷたつに割っているではないか。

余談だが、「スーパーマン」シリーズの設定では、クラーク・ケントでいる間は強烈なグリースで頭髪をオールバックに固めているのだが、いざスーパーマンになるとそのスーパーパワーでグリースがはじけ飛び、前髪がちょうどSの形に、いわゆるアホ毛のような状態になってしまう。

因みにモーセは、神の啓示を受けると角が生えるのだが、「十戒」の映画では髪の色が変わり、髪が固まったように表現されている。

「マン・オブ・スティール」では従来のスーパーマンのような、アホ毛と言うよりは、胸毛が顔を出しているのだけども。

クラーク・ケント/「マン・オブ・スティール」より
「マン・オブ・スティール」
のクラーン・ケント(ヘンリー・カヴィル)。「十戒」のモーセ(チャールトン・ヘストン)に酷似している。

また「マン・オブ・スティール」の成長したクラーク・ケントの髭面は「十戒」のモーセ(チャールトン・ヘストン)とそっくりですよね。

まあそんなことを考えながら「マン・オブ・スティール」を観た訳ですよ。

まあ「マン・オブ・スティール」はそんな訳で大変素晴しい映画に仕上がっているので、関心がある方は是非。

わたしが一番グッときたのは、次のセリフ。

Welcome to The Planet.

ダブルミーニングが利いた良いセリフですよね。

余談だけど、ゾッド将軍の副官ファオラ=ウル(アンチュ・トラウェ)は八極拳使ってますよ。鉄山靠とか。

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2013年9月 1日

「風立ちぬ」をめぐる冒険

「風立ちぬ」パンフレット裏表紙より 宮崎駿の「風立ちぬ」を観た。

いろいろと思うところはあるのだが、購入したパンフレットの裏表紙を見て腑に落ちる。

と言うのも「風立ちぬ」の英タイトルは「The Wind Rises」のようなのだ。

つまりここで「The Wind Rises」のタイトルが表現しているのは、《風はすでに起きている、もう誰にも止められない》と言う事である。

因みに、堀辰雄の「風立ちぬ」の英タイトルは「The Wind Has Risen」

宮崎駿は、時間や、通り過ぎるもののメタファーとして《風》を使っている堀辰雄の「風立ちぬ」とは、タイトルは同様でも、全く異なった《風》を描いているのだ。

宮崎駿が描く《風》は《時代のうねり》なのである。

もちろん、本作「風立ちぬ」で描かれている時代背景は、ご承知の通り、日本が戦争へと向かう時代。

主人公の堀越二郎は《美しいもの》以外には何の関心も持たないキャラクターとして描かれている。

その時代の流れに無関心なキャラクター設定はどう考えても、われわれ現代日本人のメタファーだと言える。

物語の中盤、軽井沢のホテルに登場するドイツ人カストルプは「ドイツは破裂する、この国も破裂する」と嘯く。

この、クレソンを狂ったように食べるドイツ人は当然ながら悪魔のメタファーに他ならない。

しかし、本作「風立ちぬ」で宮崎駿が描こうとしたのは、戦争へ突き進む日本とそれに無関心な堀越二郎を描きながら、2011年の東日本大震災と福島第一原子力発電所事故とそれの影響、そしてその影響に無関心な日本人を描いている。

そう、宮崎駿が言いたいのは、《風はすでに起きている、もう誰にも止められない》と言う事なのだ。

「風立ちぬ」
監督・原作・脚本:宮崎駿
製作:鈴木敏夫
制作:スタジオジブリ
音楽:久石譲
主題歌:荒井由美 「ひこうき雲」
声の出演: 庵野秀明(堀越二郎)、瀧本美織(里見菜穂子)、西島秀俊(本庄季郎)、西村雅彦(黒川)、スティーブン・アルパート(カストルプ)、風間杜夫(里見)、竹下景子(二郎の母)、志田未来(堀越加代)、國村隼(服部)、大竹しのぶ(黒川夫人)、野村萬斎(カプローニ)

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2013年3月17日

「マトリックス」のバレットタイムの元ネタはタツノコアニメですか!?

2013年3月15日に日本国内で公開された「クラウド アトラス」の共同監督であるウォシャウスキー姉弟(ラナ・ウォシャウスキー、アンディ・ウォシャウスキー)は、おそらく「マトリックス」(1999)の監督として知られていると思うし、「マトリックス」と言えば、みなさんあの《バレットタイム(Bullet-time)》の映像を思い出す事だろう。

Bullet time

「マトリックス」では複数の《バレットタイム》技術を使用したカットが使われているが、これは「マトリックス」で一番有名だと思われる《バレットタイム》技術を使用したカット。

公式には、《バレットタイム》技術を開発したジョン・ゲイターは大友克洋の「AKIRA」(1988)とミシェル・ゴンドリーが制作したローリング・ストーンズのPV「Like a Rolling Stone」(1995)がイメージの源になっていると公言しているようである。

「Like a Rolling Stone」(「ライク・ア・ローリング・ストーン」)/ローリング・ストーンズ

しかし、ウォシャウスキー姉弟(当時はウォシャウスキー兄弟)の「スピード・レーサー」(2008)が公開されると、その《バレットタイム》の元ネタが揺らいでくる。

と言うのも、ウォシャウスキー兄弟(当時)が愛した「スピード・レーサー」の原作であるタツノコプロのアニメーション作品「マッハGoGoGo」(1967-1968)のオープニングに既に《バレットタイム》が登場しているのだ。

「マッハGoGoGo」オープニング

いかがだろう。
「マッハGoGoGo」のオープニングのラストのカットは《バレットタイム》そのものだと言えよう。

と言うのも、「スピード・レーサー」は、驚く程「マッハGoGoGo」への愛情に満ちている作品なのだ。


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2012年12月11日

「007 スカイフォール」をめぐる冒険 その3

2012年12月1日 ユナイテッド・シネマとしまえんで「007 スカイフォール IMAX」を観た。

先ずはこちらを、ご覧ください。

「007 スカイフォール」をめぐる冒険 その1
「007 スカイフォール」をめぐる冒険 その2

繰り返しになるが、

わたしは熱心な「007」ファンではない。
しかしながら比較的熱心な映画ファンなので、「007」シリーズは全作観ているし、一般知識として「007」の事をいろいろと知っている。

一番好きなアクション・シーンは「007 ムーンレイカー」のオープニング・アクションだが、作品としては「女王陛下の007」「007 カジノ・ロワイヤル」以降のダニエル・クレイグ版が好きである。

世代的には、「007 黄金銃を持つ男」の予告編を劇場で観た記憶はあるが、初めて劇場で観た「007」「007 私を愛したスパイ」である。

わたしの大学時代の映研の友人に熱心な「007」ファンがいて、ことあるごとに「007」について熱く語っていたのだが、わたしは結構冷めた雰囲気でその話を聞いていた。

「007」のアクションは素晴しいと思っていたのだが、オープニング・アクション後のMI-6のオフィスにリアリティが感じられないし、だんだんと大人になるにつれ、「007」の荒唐無稽でファンタジックなプロットについていけなくなってきていた。

ロジャー・ムーア、ティモシー・ダルトン、ピアース・ブロスナン。

そしてダニエル・クレイグ登場である。

わたしは「007 カジノ・ロワイヤル」のダニエル・クレイグ演じるボンドに狂喜乱舞した。

わたしが求めていたジェームズ・ボンドはダニエル・クレイグだったのだ。

と言うか、「007 カジノ・ロワイヤル」以降のダーク&シリアス路線がツボにはまったのだ。

しかし、その友人はダーク&シリアス路線に批判的だった。

彼は荒唐無稽&ファンタジーの「007」を愛していたのだ。

ところで、アメリカン・コミックスの映画化、特にヒーローものの映画化について考えてみよう。

「007」との対比として考えると、クリストファー・リーヴの「スーパーマン」(1978)シリーズが、好例だと思うのだが、ティム・バートンの「バットマン」(1989)が登場するまでのヒーロー像は、荒唐無稽なファンタジー世界における、世界の恋人的なヒーロー像だったと思う。

ティム・バートンの「バットマン」は、物語自体は荒唐無稽ではあるもののダークな世界観を全面に押し出し、ヒーローにしろ敵役にしろ、全ての登場人物が病んでいる、言わばフリークスとして描いていた。

それ以降、アメコミ・ヒーローはどんどんと屈折し悩むキャラクターになって行き、そのダーク&シリアス路線は「ダークナイト ライジング」(2012)においてひとつの頂点を極める。

あの能天気だったクリストファー・リーヴの「スーパーマン」のリブート的な続編「スーパーマン リターンズ」(2006)でもダーク路線に乗り換え、新たなリブート作「マン・オブ・スティール」(2013)もおそらくはダーク&シリアス路線になると思われる。製作はクリストファー・ノーランだしね。

「007」に引いて考えると、荒唐無稽なファンタジー作品としての「007」シリーズへのアンチテーゼとして、レン・デイトンやジョン・ル・カレが存在するが、映画として「007」シリーズの方向性を変えたのは、トム・クランシーの存在だと思う。

仮に、ショーン・コネリー主演の「レッド・オクトーバーを追え!」(1990)が、「007」の方向転換の原因と考えるとなんとも感慨深いものがある。

その後、ロバート・ラドラム原作の「ボーン・アイデンティティー」(2002)シリーズが、「007」シリーズにある種の引導を渡すことになり、ジェームズ・ボンドは、ピアース・ブロスナンの「007 ダイ・アナザー・デイ」(2002)からボンドはダニエル・クレイグに代変わりし、「007 カジノ・ロワイヤル」(2006)までなんと4年間もかかってしまっている。

参考までに「ボーン」シリーズの製作年を見てみよう。

「ボーン・アイデンティティー」(2002)
「ボーン・スプレマシー」(2004)
「ボーン・アルティメイタム」(2007)

折角なので、ダニエル・クレイグのボンドの製作年は次の通り。

「007 ダイ・アナザー・デイ」(2002/ピアース・ブロスナン)
「007 カジノ・ロワイヤル」(2006)
「007 慰めの報酬」(2008)
「007 スカイフォール」
(2012)

本来、アクションの最前線を突っ走るべき「007」シリーズなのだが、アクションについてそもそも「007」の影響を受けている「ボーン」シリーズの影響を一回り回って「007」が受けている、と言う複雑な関係になってしまっているのだ。

つづく
「007 スカイフォール」をめぐる冒険 その1
「007 スカイフォール」をめぐる冒険 その2

 

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2012年12月 9日

「007 スカイフォール」をめぐる冒険 その2

2012年12月1日 ユナイテッド・シネマとしまえんで「007 スカイフォール IMAX」を観た。

先ずはこちらを、ご覧ください。

「007 スカイフォール」をめぐる冒険 その1

舞台は再びイギリスへ。

MI-6によるシルヴァの取扱いは「羊たちの沈黙」の影響でしょうか。
ちょっとチープな印象を受けます。

それにしても、シルヴァのPCに平然とLANケーブルを刺してしまうQにしろ、ちょっと前に痛い目にあったはずなのに、懲りずにまたクリックしちゃうMにしろ、MI-6の皆さんはネットリテラシーが低いと言うか、なんというか。
まあ多分脚本上の問題なんでしょうね。これはおそらく。

地下鉄に乗るの乗らないの。これはやはり「フレンチコネクション」でしょうか。

さて、公聴会。

ボンドが、実戦経験のないただの書類屋だと思っていたマロリー(レイフ・ファインズ)の活躍と、Mの腹心ビル・タナー(ロリー・キニア)の活躍が嬉しいですね。

ラストに向けて、良い伏線になっていると思いました。

そして、スカイフォール。

アストンマーチンDB5の登場は個人的には違和感を感じました。

おそらくはなんらかの作戦のために、Qの前任者から支給されたアストンマーチンDB5をボンドが何らかの理由で維持していた、と言うことなのだろうが、モノに頓着しない性格のボンドにとってアストン・マーチンとは一体何だったのか、論理的な解釈が難しい。

キンケイド(アルバート・フィニー)。
当初は、ここはロジャー・ムーアかショーン・コネリーのカメオだろ! と思ったけれど、仮にロジャー・ムーアかショーン・コネリーがキンケイドを演じたとすると、意識が完全にそっちに飛んでしまいそうなので、結局はアルバート・フィニーで正解だったと思います。

スカイフォールの部分、つまりボンドの出自は重要な部分だけに、脚本上弱いのが残念です。

このあたりは「ダークナイト・ライジング」を意識して、物語に無理矢理突っ込んだ感が強く、違和感を感じてしまいます。

ところで、ボンドがプロパンガスを使うのは、「ノーカントリー」でアントン・シガーを演じたハビエル・バルデムへのある種のセルフ・オマージュでしょうね。

それにしても、脚本上のキンケイドの処理が巧くないですね。

教会のシーンで、シルヴァに威嚇射撃をされた後、おそらく無傷のキンケイドは何をしていたのか、また教会に到る道のりでの懐中電灯の使用も脚本上の問題だろうね。

そして舞台はイギリスMI-6へ。

もうニヤニヤ笑いが止まらない。

終わりよければ全てよし。正にその通り。

エンド・クレジットはびっくりすることに、いちいち「全ての○○スタッフに感謝」と言うクレジットが入っていた。

わたしの記憶では、「007」シリーズではそんなエンド・クレジットを見た記憶はない。もしかしたらサム・メンデス作品の恒例なんだろうか。

つづく
「007 スカイフォール」をめぐる冒険 その1
「007 スカイフォール」をめぐる冒険 その3

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2012年12月 8日

「007 スカイフォール」をめぐる冒険 その1

2012年12月1日 ユナイテッド・シネマとしまえんで「007 スカイフォール IMAX」を観た。

わたしは熱心な「007」ファンではない。
しかしながら比較的熱心な映画ファンなので、「007」シリーズは全作観ているし、一般知識として「007」の事をいろいろと知っている。

一番好きなアクション・シーンは「007 ムーンレイカー」のオープニング・アクションだが、作品としては「女王陛下の007」「007 カジノ・ロワイヤル」以降のダニエル・クレイグ版が好きである。

さて、そんな中わたしは「007 スカイフォール」を観た訳である。

期待の新作だった事もあり、「スカイフォール」のオープニング・アクションでわたしは既に涙を流していた。

多くのオールドファンはオープニング・タイトルが始まった瞬間に感極まっていたようなのだが、わたしは一足先に行かせていただいていた。

オープニング・アクションは、カーチェイス、バイクチェイス、トレインチェイスと盛沢山で、掴みはOKだった。

しかしながら、バイクチェイスについては「ブラックレイン」「さらば愛しきルパンよ」の、トレインチェイスのシークエンスにはゲーム「アンチャーテッド」シリーズの影響を感じ、少し残念な印象を受けた。

尤も「アンチャーテッド」シリーズは「007」シリーズや「インディ・ジョーンズ」シリーズの影響を受けているので、一回り回ってはいるものの、「アンチャーテッド」の影が見えるのは残念である。

これは「007 カジノ・ロワイヤル」「007 慰めの報酬」で、「ボーン」シリーズかよ、と思えるようなアクション・シーンの構成が批判されたことも記憶に新しい。

やはり「007」シリーズは世界に先駆ける最先端のアクションを期待してしまう。

また、イヴ役のナオミ・ハリスが最高にキュートで堪らなかった。
役回り的には所謂ボンド・ガールではないのだが、「スカイフォール」で、と言うか「007」シリーズ中で一番魅力的に見えた女性はナオミ・ハリスだと思う。

そんなイヴの台詞「Agent Down」でオープニング・アクションは終了し、オープニング・タイトルが始まる。

驚いたのは、本編カットが直接オープニング・タイトルに繋がる構成である。
つまり、水の底からいきなり手が出てきてボンドの足を掴んだところに驚愕したのだ。

誰もが言うように、「スカイフォール」のオープニング・タイトルは素晴しい。
「これだよ! これ、これが007だよ!」と言う具合である。

舞台はイギリスMI-6へ。

ジュディ・デンチ演じるMは、他のMと比較すると外出の頻度も高いし、海外にも出張したりする。

今回のMも外出するのだが、そのおかげ、でもないけど、難を逃れる。

こんな調子だといつまで経ってもラストに辿り着かないので、少し話をすすめる。

Where the hell have you been?
Enjoying death. 007 reporting for duty.

でボンド再登場。

心理テストのシーンは「時計じかけのオレンジ」ですか?

「解体のため錨泊地に向かう戦艦テメレール号」ジョセフ・マロード・ウィリアム・ターナー
「解体のため錨泊地に向かう戦艦テメレール号」ジョセフ・マロード・ウィリアム・ターナー

Qと出会うのは、ウィリアム・ターナーの「解体のため錨泊地に向かう戦艦テメレール号」の前。

ところで、ターナーの「解体のため錨泊地に向かう戦艦テメレール号」は、最新鋭の戦艦だったテメレール号が、様々な任務の後、最終的に任を解かれ破棄されるために曳航されている姿を描いている。

映画を観終わった後は、MI-6やボンドの生家のことを暗喩しているのかな、と思っていたのだが、戦艦と言うか艦船の代名詞は "She" なので、Mの暗喩なのかな、と思っている。

または、大きくなり過ぎた「007」シリーズの暗喩なのか、と。

若いQの気持ちの表れである、老兵は去れ、だけではないと思います。

Qとの出会いは非常に印象的で、素晴しいシーンだと思うが、LEDが光るワルサーPPKはいかがなものかと思う。

舞台は上海へ。

「扇子を持つ女」モディリアーニ 狙撃シーンに登場するモディリアーニの「扇子を持つ女」

パトリス(オラ・ラパス)が狙撃した男の正面には「扇子を持つ女」が。銃弾が当たったんじゃないかと心配になりました。

しかももしかしたら劣化ウラン弾かも知れないし。

ところで、この「扇子を持つ女」は2010年に実際にパリ市立近代美術館から盗まれているんですね。

つまり、シルヴァ(ハビエル・バルデム)一味は絵画を強奪し転売をも行っている、と言う印象を観客に与えることを制作サイドは狙っている、と言う事。

これは巧いですね。

舞台はマカオへ。

小舟に乗ってカジノに入るシーンは堪りません。

イヴとの絡みも格好良いですよね。

さて、セヴリン(ベレニス・マーロウ)とのシーン。

一番良かったのは、カジノのバーのバーテンダーがシェイクしてカクテル・グラスにマティーニを注ぎ、ボンドにサーヴするシーン。

ボンドは「Perfect!」とバーテンダーに声をかける。

この台詞は素晴しい。

つまり、「スカイフォール」本編では描いていないが、ボンドはバーテンダーに、マティーニの作り方をオーダーしていた、と言う事なのですよ。

これは嬉しいシーンでした。

舞台はデッド・シティへ。

一応、デッド・シティは長崎県端島(軍艦島)をモデルにしているのですが、セット自体は日本というよりは、中国のようですね。

「007」シリーズでは珍しく、ボンドガールが物語の中盤で退場します。

またアクション・シーンのラストに、軍用ヘリがたくさんやってきますが、これも「007」シリーズでは珍しいですね。大抵の危機はボンドが自力で乗り切りますから。

ところで、ボンドが拘束されているシーンですが、予告編を観る限りは、シルヴァとの絡みがもっと長いと思っていたのですが、非常にあっさりとしていて残念でしたね。

「スカイフォール」より シルヴァに拘束されるボンド
「スカイフォール」より シルヴァに拘束されるボンド

また、ボンドが拘束されていた部屋の両脇に並んでいたのは、サーバやネットワーク機器ではなく、森田芳光の「家族ゲーム」に登場した、ローラーコースターの玩具のような印象を受けましたよ。

つづく

「007 スカイフォール」をめぐる冒険 その2
「007 スカイフォール」をめぐる冒険 その3

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2012年11月25日

クリストファー・ロイドのサイン会をめぐる冒険

「BTTF3」のLDジャケットにサインするクリストファー・ロイド
「バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3」のLDジャケットにサインをするクリストファー・ロイド

2012年11月24日 Hollywood Collector's Gallery主催のクリストファー・ロイドのサイン会に行ってきた。

ハリウッドコレクターズコンベンション開催決定!!

日時:2012年11月24日 10:00〜18:00
会場:ホテル グランドパレス B1 イベントルーム四季 (東京九段下)

◆11月23日夜
同行する友人と当日の予定を決定する。

当日は8:30から会場で整理券が配付されることはわかっていたので、その前に集合するか、または、適当にゆっくり集合するか。

わたしは当日9:00に通院の予約が入っていたので、8:00に一旦集合し整理券をゲット、その後通院し、戻ってサインをもらう、と言う案もあったのだが、おそらくは10:00〜18:00の間に継続的にサイン会を実施するだろうと考えられたし、また失敗したら翌日、浦安のサイン会に行けば良いや、と言う事で11:00に会場で集合する事にした。

◆11月24日 11:00
会場で友人と落ち合う。
既に友人はわたしの分を含めて整理券をゲットしていてくれたのだが、その整理番号は516番だった。

その時点で集合がかかっていたのは整理番号150番台だったので、これは長くなるな、と言う事で食事に行くことにする。

会場ではホテルロビー、B1イベントルームへの階段、B1で営業中のレストラン前等の床に座り込むファンが多く、少なからずホテルに迷惑をかけていた。

また、ショップはイベントルーム四季内に15店舗ほどオープンしており、大盛況だったが、特に目を惹く商品の販売はなかった。個人的な印象では、在庫一斉処分のような様相を呈していた、と思った。

興味深かったのは、話題のSFバー神田FLUXのブースがあったこと。今度是非行きたいと思った。

◆11月24日 12:00
飯田橋のハンバーグ屋で食事をして会場へ戻る。

招集されている整理番号は230番台まで動いていた。つまり約1時間で50〜70番位動いている模様。

会場にはなぜか赤いダウンベストを着た人が多い。

またショップをめぐって大きな買物袋を抱えた人も増えてきている。

また、クリストファー・ロイドとツーショット写真を撮影し、それをデジタル出力したものにサインをもらおうと考えている人が非常に多い事に驚く。

これは個人的にはあまり理解できない行動だと思った。わたしはサインをもらう際に握手でもしてそのサイン取得時の写真とサインがあれば良いのではないか、と言う考えで、同行した友人もそう言った考えだった。

一般的にサイン会には転売目的やオークションへの出品を目的とする人も多く参加すると想像できるが、業者サイドからすると、ツーショット写真へのサインは、一般的に市場になかなか流出しないし、仮に流出したとしても一般人とのツーショット写真の市場価値は低いので、こんなサービスを企画したのかな、と邪推してしまう。

また、デロリアン等のトイにサインをもらおうとしている人も比較的多いと思った。

これもあまり理解できない行動だと思う。

もしデロリアンにサインを貰うとしたら、クリストファー・ロイドではなく、マイケル・J・フォックスからだろうと思うし、そのサイン入りのトイの展示や保管が大変だし、その際に紛失したり、破損してしまう可能性が高いと思うから。

まあ、わたしもR2-D2のブリスター・パック入りのフィギュアにケニー・ベイカーのサインが入ったものを持っているけどね。

まだまだ時間があるので散歩に出掛ける。

◆11月24日 14:00
神保町を散策して会場へ戻る。

神保町界隈のサブカルチャー関連の古書店でいろんなものを物色する。
九段下から神保町へ向かう右側の通りにサブカルチャー関係の古書店が並んでいるので、そのあたりはオススメ。

また、14:00から神保町の書店で小原乃梨子の絵本かなにかの読み聴かせイベントがあったようだが、当然ながら子ども向けのイベントで、大きなお友だち向けのイベントではないので今回は遠慮した。

招集されている整理番号は340番台。

床に座り込むファンが多いのが目につく。

ホテルの床に直に座り込むのは多分アジア人だけだよね、と言う話をする。

これはあまり見栄えが良いものではないし、ホテル側としては、イベントルームだけの費用で、イベントルーム外の階段やロビーに人があふれ、また、そのため一般客が入りにくい環境になってしまい、イベントルームに隣接するレストランへの集客が減っているのではないかと推測できる。

次回のコンベンションは、このホテルでは開催できないのではないかな、といらぬ心配をしてしまう。

◆11月24日 15:00
時間があったので、靖国神社を参拝して会場に戻る。

靖国神社も結構な人出。

真正面から神社を撮影してはいけないのだが、撮影する人が多く、注意をする警備員が大活躍である。

また併設されている遊就館では、大東亜戦争開戦七十年展が開催されていた。

靖国神社はご承知のように靖国神社問題の議論の対象となり、靖国神社はA級戦犯が合祀されているが、ただの神社であると言う議論があるが、実際に靖国神社のお土産物コーナーをみるといろいろと興味深いものがあるし、遊就館の大東亜戦争開戦七十年展と言う表現もなかなか凄いなと思った。

会場に戻るが、招集されている整理番号は430番台。

まだ時間があるので、お茶をすることに決める。

◆11月24日 16:00
お茶から戻ると整理番号は530番台。

わたしの整理番号は前述のように516番なので、あわてて列の最後尾につく。

映画の雑談、特にクリストファー・ロイドについての雑談をしながら時間をつぶす。

友人はトレッカーで、「スタートレック」シリーズの布教活動をしていることもあり、クルーグ艦長の「チョイ・チュー」で盛り上がる。

ところで、サインの料金は5,500円、ツーショット写真(デジタル出力)を撮影しそれにサインをもらう料金も5,500円、その写真の焼き増しは1,500円。

これを高いと考えるかどうかは人それぞれだが、クリストファー・ロイドとマネージャーの来日費用、日本国内での滞在費用、もちろんイベント費用の多くはこの中から出ていることを申し添えておく。

また、ハリウッド・スターのサインについては、スターの格により一般的な相場や本人へのサイン1点あたりの歩合率も決まっているようで、5,500円と言うのは個人的には良心的な料金設定だと思う。

また、サインをしてもらうモノを持ち込んでいない人向けには、クリストファー・ロイドのポートレイト、残念ながら写真ではなく印刷物だが、が無料で配付されていた。これも良心的だと思った。通常はポートレイトも販売されており、その代金は一般的には本人の直接の収入になる模様。

そこには、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズのポートレイトだけではなく「カッコーの巣の上をで」「スター・トレック3 ミスター・スポックを探せ! 」「アダムス・ファミリー」「ピラニア3D」等のものもあった。

前述のようになぜかツーショット写真の撮影を希望する人が圧倒的に多い。おそらく6〜7割の人はツーショット写真を希望していたのではないか、と思う。

総考えると、普段からサインをもらっている層ではなく、今回初めてサイン会に参加する一般客が多かったのではないか、と思った。

例えば、サインのコレクターは一般的にだが、サイン取得時の情報として、サインをもらっている状況の写真を撮ったり、もらったサインを持った状態でツーショット写真を撮りたがるから。

そして、転売目的ではないのだが、そのサインの市場価値が下がる事を嫌うから。

◆11月24日 17:00
無事サインをゲットした。

ところで、同行した友人と事前に、一体なににサインをもらうべきか、といろいろ考えていたのだが、結局2人ともLDのジャケットを持ち込むことにした。

しかも「バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3」のLDジャケットを。

何しろ「BTTF3」の主役はマーティではなく、ドクだからね。

因みにわたしはバラ売りの「BTTF3」のLDジャケットに、友人はLD-BOX仕様の「BTTF3」のLDジャケットにサインをもらった。

聞くところによると、LD-BOX用のLDは、表示される字幕のサイズが小さいらしい。またジャケット裏の情報も異なっていた。

クリストファー・ロイドのサイン入り「バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3」のLDジャケット
クリストファー・ロイドのサイン入り「バック・トゥ・ザ・フューチャー PART3」のLDジャケット

なんとも長い一日だった。

ハリウッド・スターは概してファンサービスに力を入れるが、今回のクリストファー・ロイドの対応には頭が下がる。

ほとんど休憩なしで、10:00〜18:00のサイン会に臨み、おそらく10:00前にスタートし、18:00以降もサイン会は続いたのではないか、と想像している。

因みに、Hollywood Collector's Galleryのfacebook情報によると、整理券は700枚以上出たようである。

クリストファー・ロイドの来日時のイベントや観光については、Hollywood Collector's Galleryのfacebookにアップされているので、そちらを参照いただきたい。

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2012年8月20日

【追悼】トニー・スコット

トニー・スコット
2012年8月19日(日本時間20日) トニー・スコットが亡くなった。

映画監督トニー・スコット氏、投身自殺か

【ロサンゼルス】「トップガン」「ビバリーヒルズ・コップ2」「デイズ・オブ・サンダー」などを手掛けた映画監督のトニー・スコット氏(68)が19日、ロサンゼルス郡の橋から飛び降り、死亡した。当局が明らかにした。

同郡検視官によると、警察は自殺として調べているという。

警察によると、現地時間午後0時35分頃、誰かがロサンゼルスのビンセント・トーマス橋から飛び降りたとの911番通報が複数あった。数時間後、現場に急行したロサンゼルス港湾警察のダイバーが遺体を収容した。

沿岸警備隊員が地元紙に明らかにしたところによると、橋の東方面レーンに停めてあった同氏のトヨタ・プリウスの車内には遺書が残されていた。

英国生まれのトニー氏は、映画プロデューサー兼監督のリドリー・スコット氏の弟。(AP通信)

わたしは世代がそうなので、トニー・スコット監督作品のほとんどをリアルタイムに観ている。

トニー・スコットの登場は、わたしが映画にのめり込むようになる時期とほぼ同時だったこともあり、わたしの映画ファンとしての成長は、トニー・スコットと彼の映画とともにあったと言って差し支えないだろう。

そんなわたしにとって彼の突然の死は、同世代を生きた、つまり彼のキャリアの全てを観てきた一映画ファンとして、何かが、わたしの中の何かが終わったような気がしてならない。

しかし、彼の映画は永遠に生き続けるだろう。

そんな訳で、トニー・スコット作品を、わたしの映画人生を、振り返ってみたいと思います。

「ハンガー」(1983)
トニー・スコットの名前は全く知らなかった。「地球に落ちて来た男」「戦場のメリー・クリスマス」のデヴィッド・ボウイ主演の吸血鬼映画、と言う印象。

「トップガン」(1986)
トニー・スコットの名前を認知した最初の作品。
一番好きなシーンは冒頭、オープニング・クレジットの空母の甲板員の格好良さ。
基地がある街で産まれ育った戦闘機好きのわたしにとっては、少し嘘が多かったと思うがやっぱ大好きな映画。
物語の構造が「愛と青春の旅立ち」と同じだったり、夕焼け空がフィルターだったり、スーパー35mmの上下を切ったスコープだったりするけど、ぼくは「トップガン」が大好きだ。

「ビバリーヒルズ・コップ2」(1987)
こんなもんつくってんじゃねーよ。

「リベンジ」(1990)
えっとつまり、トム・クルーズが退役してケヴィン・コスナーになったのね。

「デイズ・オブ・サンダー」(1990)
またトム・クルーズのアイドル映画かよ。
でもレースシーンはめちゃくちゃ燃えた。

「ラスト・ボーイスカウト」(1991)
後期のデンゼル・ワシントン路線が垣間見えるかも。

「トゥルー・ロマンス」(1993)
傑作。クエンティン・タランティーノの脚本が素晴らしい。
「まさかドレクセルを殺したの! なんて、なんてロマンティックなの」
本当に良い映画。
映画好きにはたまらないし、豪華絢爛デラックスなキャスト。
多分この映画「パルプ・フィクション」の原点ですよね。

「クリムゾン・タイド」(1995)
傑作。ノン・クレジットだけど、またもやタランティーノ節炸裂。
「スター・トレックを見た事あるか?」
・・・・・
「スコッティ?」
「アイ・キャプテン」
後期のデンゼル・ワシントンとのコラボの原点か。
当り前の事なんだけど、艦長と副長の対立が素晴らしい。日本の潜水艦ものでは艦長と副長が仲良いケースが多いけど、艦長と副長は対立してなんぼですよね。
ある意味トニー・スコットの社会派作品の原点かと。

「ザ・ファン」(1996)
おい、勘弁してくれよ。
デ・ニーロも仕事選べよ。

「エネミー・オブ・アメリカ」(1998)
ハイテク・スリラーのはしり。
でもどうでもいいや。

「スパイ・ゲーム」(2001)
大傑作。ある意味ロバート・レッドフォード的に「スティング」もびっくり。
この作品、実は、リドリー・スコットの「ワールド・オブ・ライズ」と類似点が多く、見事な姉妹作に仕上がってる。並べて観るととっても楽しい。
ロバート・レッドフォード+ブラッド・ピット=ラッセル・クロウ+レオナルド・ディカプリオ的な。物語もそうだけどね。

「マイ・ボディガード」(2004)
傑作。ダコタちゃんが誘拐されたら、デンゼル・ワシントンじゃなくても「燃える男」になっちゃうよ。
多分、ハードディスクに取り込んだ画面の中でカメラが細かくズームしたりパンしたりガチャガチャ動く最初のトニー・スコット作品じゃないかな。もしかして「スパイ・ゲーム」からだったかな。
ハードボイルドで社会派。

「ドミノ」(2005)
まあ良い映画なんだけど、最後の見せ場が「トゥルー・ロマンス」と同じ。
セルフ・オマージュかよ。
この辺りでトニー・スコット後期の撮影・編集スタイルが確立したんじゃないかな。

「デジャヴ」(2006)
あぁ、とっても良い映画。若干メロウだけど、好き。まるで「トゥルー・ロマンス」のような甘さが堪らない。SFマインドも素敵。
頑張るデンゼル・ワシントン。
予定調和的なラストも素晴らしい。

「サブウェイ123 激突」(2009)
もう、デンゼルくんはあきました。

「アンストッパブル」(2010)
大傑作。デンゼルくん、あきたって言ってごめんなさい。
暴走機関車上のくるくる回るリアリティのないカメラワークがちょっと笑えるけどね。
これが映画、って感じ。
いらないカットやシーンが全くないし、CGIに頼らず実写で頑張った傑作。

トニー・スコットとリドリー・スコット
あぁ、やっぱトニー・スコット監督作品は全部観てました。

あぁ、これからスコット・フリー・プロダクションはどうなるのかな。

まだわからないけど、自殺らしいって言うのが悲しいですね。

心よりご冥福をお祈りいたします。

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2012年4月 8日

「タイタニック〈IMAX 3D〉」

2012年4月7日 ユナイテッド・シネマとしまえんで「タイタニック 〈IMAX 3D〉」を観た。

「タイタニック」なんか3Dにしても仕方ねえじゃん、と思っていたわたしは「タイタニック 3D」に全く関心がなく、劇場公開はスルーするつもりだった。

しかし、公開初日である4月7日早朝、大学時代からの映画関係の友人から電話がかかってきた。

暇だったら「タイタニック〈IMAX 3D〉」を観ないか、と。

関心が全くない映画であっても、人に誘われたら、もしかしたら映画との凄い出会いがあるかも、と、断らずに観てしまうわたしは即座に「タイタニック〈IMAX 3D〉」を観ることにした。

劇場の選択肢として、近場のIMAXシアターとしては、109シネマズ川崎とユナイテッド・シネマとしまえんがあるのだが、109シネマズ川崎は評判が悪いのでユナイテッド・シネマとしまえんで観ることにした。

「タイタニック」
監督・脚本:ジェームズ・キャメロン
撮影:ラッセル・カーペンター
美術:ピーター・ラモント
出演:レオナルド・ディカプリオ(ジャック・ドーソン)、ケイト・ウィンスレット(ローズ・デウィット・ブケーター)、ビリー・ゼイン(キャル・ホックリー)、キャシー・ベイツ(モリー・ブラウン)、フランシス・フィッシャー(ルース・デウィット・プケーター)、ビル・パクストン(ブロック・ラベット)、バーナード・ヒル(エドワード・J・スミス船長)、ジョナサン・ハイド(J・ブルース・イズメイ)、ビクター・ガーバー(トーマス・アンドリュース)、デイヴィッド・ワーナー(スパイサー・ラブジョイ)、ダニー・ヌッチ(ファブリツィオ・デ・ロッシ)、グロリア・スチュアート(ローズ・カルバート)、スージー・エイミス(リジー)

■明るい3D映画
先ず観て驚いたのは、これは劇場のせいかも知れないが、「タイタニック〈IMAX 3D〉」は非常に明るい映画だったということ。

因みに、偏光方式の3D映画はスクリーンの光量低下を余儀なくされてしまう。
つまり、所謂3D映画は基本的に、一般の映画と比較して、暗く見えてしまうことが多いのだ。

ここからはあくまでも噂だが、基本的に映写機のランプの光量をあげるとスクリーンの光量低下は抑えられるのだが、映写機のランプの寿命を延ばすため、またはランプの価格が高いため、ランプの光量をあげなかったり、明るいランプを使用しない劇場があると言う話である。

実際に、体感的に暗い3D映画を観たことがある人は多いと思うし、わたしもそんな経験をしたことは比較的多い。
あまりにも暗い3D映画を見せられて頭にきて、3Dメガネをはずしてしまったことも何度もある。
ボケボケの映像の方が暗い3D映画よりはまし、と言うことである。

そんな状況下で観た、ユナイテッド・シネマとしまえんの「タイタニック 〈IMAX 3D〉」は個人的な経験上だが、今まで観た3D映画の中で一番明るい映画だった。
もちろん、前述のようにユナイテッド・シネマとしまえんの環境のせいかも知れないが。

つまり、ユナイテッド・シネマとしまえんが明るくみえる機材を使用している、と言うことね。

■浅い被写界深度
もうひとつ気になったのは、被写界深度の浅さ(薄さ)である。

例えば、近接する2人が並んで話しているカットがあったとして、それにも関わらず、スクリーン上では、話している1人にしかピントがあっていないのだ。

もちろんこれは当り前と言えば当り前のことなのだが、その状態が一般の映画と比較して顕著であった。

本作については、2D映画を3D映画に変換する過程でそうなったのかも知れないが、おそらく撮影時において、ワンカット毎に被写界深度が薄くなるような撮影がされていたのだろう、と言うことである。

その薄っぺらい被写界深度の映像に、ピントがあっている領域が狭い映像にうっとりとしてしまう。

■3D映画のウリは?
そしてもう1つ、これは重要だと思うのだが、本作「タイタニック〈IMAX 3D〉」は、3D映画であることをウリにした作品ではないと言うこと。

一般の3D映画は、3Dをウリにしている。

映画を通じて3D映像の凄さを体験させているのだ。

しかし、「タイタニック〈IMAX 3D〉」は、3D映画であることをウリにしていない。

素晴らしい物語を、ただ単に3D映像で観客にみせているに過ぎないのだ。

まるでそれは、カラーやサウンドが映画を構成する1要素でしかないように、3Dも「タイタニック〈IMAX 3D〉」にとっては映画を構成する1要素でしかないのである。

脇役に徹した3D効果がたまらない。

3Dであることをウリにした、例えばスクリーンから観客に向かって何かが飛んでくるような3D映画、または高速で障害物を避け続けるような3D映画、「タイタニック〈IMAX 3D〉」はそんなつまらない虚仮威しの3D映画ではないのだ。

これは、映画を3Dにしておけば観客はみんな騙されるのではないか、3Dにしておけば観客が入るのではないか、「タイタニック〈IMAX 3D〉」は、そんなことを考えるクリエイターやスタジオにはとうてい真似が出来ない素晴らしい3D映画に仕上がっている。

もしかしたら、スクリーンから観客に向かって何かが飛んでくるような3D映画を望む観客には「タイタニック〈IMAX 3D〉」は3D映画としては物足りないかも知れないが、わたしはこの「タイタニック〈IMAX 3D〉」こそが最高の3D映画に思えてならない。

方向性としては「アバター」すら超えていると思う。

今後、3D映画を製作するスタジオはどう考えるだろうか。

「タイタニック」の主人公は?
この映画「タイタニック」の主人公は一体誰なのか?

そう問われた多くの人々は「タイタニック」の主人公はローズであると答えるだろう。

しかしながら、わたしにとってこの映画の主人公はビル・パクストン演じるブロック・ラベットなのである。

そして、ブロック・ラベットはこの映画で描かれた出来事を通じて、唯一成長するキャラクターとして描かれている。

ところで、わたしがこの映画の中で一番素晴らしいと思うカットは、物語の中盤、ローズ(グロリア・スチュアート)のジャックとの思い出話をうっとりとした表情で聴いているブロック・ラべット率いるタイタニック号探索チームのカットである。

そしてこのカットが意味するところは、もちろんブロック・ラベットは観客の視点を担うキャラクターとして設定されていることもあり、劇場内でローズとジャックの物語、つまり「タイタニック」と言う映画を観ている観客がうっとりとしていることを描写しているのだ。

物語やキャスト、脚本や演出については割愛するが、折角の機会なので、関心がない方も、是非「タイタニック〈IMAX 3D〉」を観て欲しいと思う。

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