ブレット・ラトナー

2012年2月27日

「ペントハウス」

「ペントハウス」 2012年2月26日 東京有楽町「TOHOシネマズ有楽座」で「ペントハウス」を観た。

「ペントハウス」
監督:ブレット・ラトナー
脚本:テッド・グリフィン、ジェフ・ナサンソン
出演: ベン・スティラー(ジョシュ)、エディ・マーフィ(スライド)、ケイシー・アフレック(チャーリー)、アラン・アルダ(アーサー・ショウ)、マシュー・ブロデリック(Mr.フィッツヒュー)、マイケル・ペーニャ(エンリケ)、ティア・レオーニ(FBI捜査官クレア)、ガボレイ・シディベ(オデッサ)、ジャド・ハーシュ、スティーヴン・マッキンレー・ヘンダーソン、ジェリコ・イヴァネク、ロバート・ダウニー

マンハッタンの一等地にそびえる65階建てのビル〈ザ・タワー〉は、一握りの成功者だけが住むことのできる超高級マンション。そのセレブな居住者たちの日常生活をサポートするのが管理マネージャーのジョシュ率いる一流スタッフたち。

そんなある日、〈ザ・タワー〉のペントハウスに暮らす大富豪アーサーが、証券詐欺で逮捕されてしまう。しかも、ジョシュはじめスタッフ全員の年金運用を請け負っていたアーサーはその金も横領してしまっていた。

そこでジョシュは、アーサーが部屋に隠し持っているといわれる20億円を奪い取るべく、使用人たちによる素人犯罪チームを結成することに。そして、泥棒のスライドを助っ人に招き、難攻不落の〈ザ・タワー〉攻略作戦を練り上げていくのだが…。

いやぁ面白かったです。

実はわたし「ペントハウス」には食指があまり動かなかったのでスルーするつもりだったのですが、ツイッターでいろいろな人たちが、期待しないで観に行ったらすげえ面白かった、とか、無料鑑賞のポイント処分のつもりで観たら大当たり、とか言うつぶやきをみるにつれ、だんだんと観たくなってしまったのです。

さて、本作「ペントハウス」についてですが、先ずは脚本が良かったです。

素人犯罪チームの〈ザ・タワー〉の当初の攻略計画自体は若干ご都合主義的で、かつ気になる問題点があるのですが、良い意味で、そんな問題点なんてどうでも良いよ、と思える脚本に仕上がっています。
当初の攻略計画の重要性が低いと言うか、最早どうでも良いのです。プロット毎の優先順位があるんでしょうね。

その辺りについては、コメディなのに、と言ってはコメディに失礼ですが、脚本の論理的な部分に舌を巻きます。

特にトリックの部分。
ジョシュたちが隠したものが、FBIに見つかる見つからないは別にして、その隠す部分、言わばトリックの部分が、論理的に可能な構成になっているんです。

しかも、それは実際に可能なことなんですよ、と観客にわかるように、きちんと画面で伏線が描かれているんです。

コメディ映画では、おそらくおざなりにされてしまうことが多い部分にきちんと力を入れている事に好感をおぼえます。

そして、100ドル紙幣のベンジャミン・フランクリンの肖像画からのファーストカットのシーンも素晴らしいです。こからのシークエンスが前述の部分の見事な伏線になっているんですよ。まるで円環構造ですね。

コメディと言えば、コメディにも関わらず、と言ったらまたまたコメディにしつつ例ですが、スコープサイズだったのがたまらないです。
贅沢でゴージャス。良質な作品にきちんとお金をかけているのが素晴らしいです。

メインのプロットは搾取される側が、搾取する側をやっつける、と言う構図で、搾取する側のショウは白人として、ショウをやっつける搾取される側は、白人、黒人、ヒスパニック系、ジャマイカ系となっているのが興味深いですね。

ベン・スティラー演じるマネージャーは良いとしても、ドアマン、エレベータボーイ、メイド等のブルーカラーがショウをやっつけるところにカタルシスがあるのでしょう。

ところで、ちょっと気になったのは、ジョシュとショウのチェスは「ブレードランナー」ですね。
ジョシュが難攻不落の〈ザ・タワー〉に入るため、つまりショウを騙す為にチェスを使うところは、ロイ・バッティが部外者立入禁止のタイレル・コーポレーションに入るため、J・F・セバスチャンとタイレル社長とのチェスの試合を利用するところと同じですよね。

また、マシュー・ブロデリックが「ペントハウス」にキャスティングされていて、物語のひとつのキーとなるクラシックな赤いフェラーリが登場し、これが窓の近くに置いてあって、それが・・・・、と言う部分はマシュー・ブロデリックの出世作「フェリスはある朝突然に」ですよね。特に窓から・・・・と言う辺りが。

「フェリスはある朝突然に」を知っていると「ペントハウス」はより面白い作品に感じられるかも知れませんよ。

因みに、スティーブ・マックィーンのフェラーリ250(1962年)はブラウン(Chestnut Brown)だったようです。

また、「フェリスはある朝突然に」に登場するイタリアン・レッドのフェラーリは、フェラーリ250GT カリフォルニア・スパイダー(1961年)だそうです。

ところで、先日のスーパーボウルの際、「フェリスはある朝突然に」へのオマージュとなっているマシュー・ブロデリック主演のホンダCR-VのCMがありましたが、これは「ペントハウス」「フェリスはある朝突然に」へのオマージュをみて発想したんじゃないでしょうかね。

あとチームのメンバーをスカウトするあたりは「ブルース・ブラザーズ」を思い出しました。

またカーチェイスは「フレンチ・コネクション」でしょうか。

なんでこんな話をしているかと言うと、セリフの中にもいろいろな映画への言及があるので、この作品はさまざまな映画へのオマージュが、映画への愛に満ちているのだと思いました。

キャストはエディ・マーフィが抑え気味なのが良かったです。
これはエディ・マーフィが本作をプロデュースしているため、一歩ひいているのかな、と思いました。
エディ・マーフィはベン・スティラーとの絡み、特に保釈後の自動車内でのマシンガントーク合戦が良かったです。ベン・ステイラーも負けていないですね。

ところで、後半の感謝祭のパレードと、裁判所へのショウの護送と同時進行で行われるアクション・シークエンスの緊張感は「ゴースト・プロトコル」もびっくりですよね。

まあ「ペントハウス」はそろそろ終わりそうなのですが、機会があれば是非劇場へ。

「ペントハウス」はこの冬一番のコメディじゃないかな。

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