ジェームズ・キャメロン

2012年4月 8日

「タイタニック〈IMAX 3D〉」

2012年4月7日 ユナイテッド・シネマとしまえんで「タイタニック 〈IMAX 3D〉」を観た。

「タイタニック」なんか3Dにしても仕方ねえじゃん、と思っていたわたしは「タイタニック 3D」に全く関心がなく、劇場公開はスルーするつもりだった。

しかし、公開初日である4月7日早朝、大学時代からの映画関係の友人から電話がかかってきた。

暇だったら「タイタニック〈IMAX 3D〉」を観ないか、と。

関心が全くない映画であっても、人に誘われたら、もしかしたら映画との凄い出会いがあるかも、と、断らずに観てしまうわたしは即座に「タイタニック〈IMAX 3D〉」を観ることにした。

劇場の選択肢として、近場のIMAXシアターとしては、109シネマズ川崎とユナイテッド・シネマとしまえんがあるのだが、109シネマズ川崎は評判が悪いのでユナイテッド・シネマとしまえんで観ることにした。

「タイタニック」
監督・脚本:ジェームズ・キャメロン
撮影:ラッセル・カーペンター
美術:ピーター・ラモント
出演:レオナルド・ディカプリオ(ジャック・ドーソン)、ケイト・ウィンスレット(ローズ・デウィット・ブケーター)、ビリー・ゼイン(キャル・ホックリー)、キャシー・ベイツ(モリー・ブラウン)、フランシス・フィッシャー(ルース・デウィット・プケーター)、ビル・パクストン(ブロック・ラベット)、バーナード・ヒル(エドワード・J・スミス船長)、ジョナサン・ハイド(J・ブルース・イズメイ)、ビクター・ガーバー(トーマス・アンドリュース)、デイヴィッド・ワーナー(スパイサー・ラブジョイ)、ダニー・ヌッチ(ファブリツィオ・デ・ロッシ)、グロリア・スチュアート(ローズ・カルバート)、スージー・エイミス(リジー)

■明るい3D映画
先ず観て驚いたのは、これは劇場のせいかも知れないが、「タイタニック〈IMAX 3D〉」は非常に明るい映画だったということ。

因みに、偏光方式の3D映画はスクリーンの光量低下を余儀なくされてしまう。
つまり、所謂3D映画は基本的に、一般の映画と比較して、暗く見えてしまうことが多いのだ。

ここからはあくまでも噂だが、基本的に映写機のランプの光量をあげるとスクリーンの光量低下は抑えられるのだが、映写機のランプの寿命を延ばすため、またはランプの価格が高いため、ランプの光量をあげなかったり、明るいランプを使用しない劇場があると言う話である。

実際に、体感的に暗い3D映画を観たことがある人は多いと思うし、わたしもそんな経験をしたことは比較的多い。
あまりにも暗い3D映画を見せられて頭にきて、3Dメガネをはずしてしまったことも何度もある。
ボケボケの映像の方が暗い3D映画よりはまし、と言うことである。

そんな状況下で観た、ユナイテッド・シネマとしまえんの「タイタニック 〈IMAX 3D〉」は個人的な経験上だが、今まで観た3D映画の中で一番明るい映画だった。
もちろん、前述のようにユナイテッド・シネマとしまえんの環境のせいかも知れないが。

つまり、ユナイテッド・シネマとしまえんが明るくみえる機材を使用している、と言うことね。

■浅い被写界深度
もうひとつ気になったのは、被写界深度の浅さ(薄さ)である。

例えば、近接する2人が並んで話しているカットがあったとして、それにも関わらず、スクリーン上では、話している1人にしかピントがあっていないのだ。

もちろんこれは当り前と言えば当り前のことなのだが、その状態が一般の映画と比較して顕著であった。

本作については、2D映画を3D映画に変換する過程でそうなったのかも知れないが、おそらく撮影時において、ワンカット毎に被写界深度が薄くなるような撮影がされていたのだろう、と言うことである。

その薄っぺらい被写界深度の映像に、ピントがあっている領域が狭い映像にうっとりとしてしまう。

■3D映画のウリは?
そしてもう1つ、これは重要だと思うのだが、本作「タイタニック〈IMAX 3D〉」は、3D映画であることをウリにした作品ではないと言うこと。

一般の3D映画は、3Dをウリにしている。

映画を通じて3D映像の凄さを体験させているのだ。

しかし、「タイタニック〈IMAX 3D〉」は、3D映画であることをウリにしていない。

素晴らしい物語を、ただ単に3D映像で観客にみせているに過ぎないのだ。

まるでそれは、カラーやサウンドが映画を構成する1要素でしかないように、3Dも「タイタニック〈IMAX 3D〉」にとっては映画を構成する1要素でしかないのである。

脇役に徹した3D効果がたまらない。

3Dであることをウリにした、例えばスクリーンから観客に向かって何かが飛んでくるような3D映画、または高速で障害物を避け続けるような3D映画、「タイタニック〈IMAX 3D〉」はそんなつまらない虚仮威しの3D映画ではないのだ。

これは、映画を3Dにしておけば観客はみんな騙されるのではないか、3Dにしておけば観客が入るのではないか、「タイタニック〈IMAX 3D〉」は、そんなことを考えるクリエイターやスタジオにはとうてい真似が出来ない素晴らしい3D映画に仕上がっている。

もしかしたら、スクリーンから観客に向かって何かが飛んでくるような3D映画を望む観客には「タイタニック〈IMAX 3D〉」は3D映画としては物足りないかも知れないが、わたしはこの「タイタニック〈IMAX 3D〉」こそが最高の3D映画に思えてならない。

方向性としては「アバター」すら超えていると思う。

今後、3D映画を製作するスタジオはどう考えるだろうか。

「タイタニック」の主人公は?
この映画「タイタニック」の主人公は一体誰なのか?

そう問われた多くの人々は「タイタニック」の主人公はローズであると答えるだろう。

しかしながら、わたしにとってこの映画の主人公はビル・パクストン演じるブロック・ラベットなのである。

そして、ブロック・ラベットはこの映画で描かれた出来事を通じて、唯一成長するキャラクターとして描かれている。

ところで、わたしがこの映画の中で一番素晴らしいと思うカットは、物語の中盤、ローズ(グロリア・スチュアート)のジャックとの思い出話をうっとりとした表情で聴いているブロック・ラべット率いるタイタニック号探索チームのカットである。

そしてこのカットが意味するところは、もちろんブロック・ラベットは観客の視点を担うキャラクターとして設定されていることもあり、劇場内でローズとジャックの物語、つまり「タイタニック」と言う映画を観ている観客がうっとりとしていることを描写しているのだ。

物語やキャスト、脚本や演出については割愛するが、折角の機会なので、関心がない方も、是非「タイタニック〈IMAX 3D〉」を観て欲しいと思う。

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