P・G・ウッドハウス

2012年1月28日

【ウッドハウスさん、130回めの誕生日おめでとう!(前篇)】をめぐる冒険

先日のエントリー「ジーヴズの事件簿―才智縦横の巻」でP・G・ウッドハウスの紹介をしたら、それに呼応するように(嘘)、2012年1月28日、翻訳ミステリー大賞シンジケート公式ブログでウッドハウスに関するエントリー(全4回の第1回)が公開された。

【特別寄稿】ウッドハウス聖地巡礼記・第1回(執筆者・森村たまき)
第1回:ウッドハウスさん、130回めの誕生日おめでとう!(前篇)

現在、P・G・ウッドハウスの翻訳は、文藝春秋国書刊行会から出版されている。

先日のエントリーでは、

もしかすると、このままジーヴズシリーズが文春文庫で全部揃うんじゃねぇの、と言う希望的観測のもと、わたしは平積みの「ジーヴズの事件簿―才智縦横の巻」を購入することにした。

と書いたが、それは甘い考えだったようで、やはりジーヴズシリーズを読破するには、国書刊行会ウッドハウス・コレクションを揃えないといけない模様。なお、本コレクションの翻訳は前述のエントリーの執筆者である森村たまき。

まあ、全部揃えれば良いだけなのだが、全14冊、各2,100円〜2,310円と言うのは少し高いような気がする。

さて、先ほど紹介した、

【特別寄稿】ウッドハウス聖地巡礼記・第1回(執筆者・森村たまき)
第1回:ウッドハウスさん、130回めの誕生日おめでとう!(前篇)

だが、このエントリーは国書刊行会のウッドハウス・コレクションの翻訳者である森村たまきが、2011年10月に開催されたアメリカウッドハウス協会大会主催のウッドハウス生誕130周年を祝うイベントに参加した際のレポートである。

非常に興味深いレポートなので、是非ご一読をお勧めする。
市井のジーヴズファンによるアカデミックな考察が非常に楽しそうなコンベンションのようだ。

全くの余談だが、ジーヴズシリーズを読んでいると、テレビシリーズ「SOAP」の執事ベンソンを思い出す。
「SOAP」の執事ベンソンは、ロバート・ギヨームが演じており、エミー賞コメディー部門助演男優賞を受賞している。
また、そのベンソン人気により、スピンオフ作品「Benson」が制作されている。

ウッドハウス・コレクション第一巻「比類なるジーブス」

ウッドハウス・コレクション第14巻「ジーヴスとねこさらい」

当ブログでは、Jeevesを文藝春秋にならいジーヴズと表記しているが、国書刊行会ではジーヴスと表記されている。念の為。

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2012年1月10日

「ジーヴズの事件簿―才智縦横の巻」

「ジーヴズの事件簿―才智縦横の巻」 「ご同輩、あなたはついていらっしゃる」

例によっていつもの通り、有楽町の三省堂書店文庫コーナーを物色していたら、見慣れない表紙のバーティ&ジーヴズ(ジーヴス)シリーズが平積みされているのを発見した。

なんとジーヴズシリーズが文庫になっている!

驚きつつ手に取ってみると、本書「ジーヴズの事件簿―才智縦横の巻」は、文春文庫から2011年5月に第一刷が刊行され、現在までに第五刷まで版を重ねている、と言うことがわかった。

どうやら売れているらしいぞ。

ところで、わたしの記憶が正しければ、P・G・ウッドハウスのジーヴズシリーズは最近だと文芸春秋と国書刊行会からそれぞれハードカバーで刊行されているはずである。

もしかすると、このままジーヴズシリーズが文春文庫で全部揃うんじゃねぇの、と言う希望的観測のもと、わたしは平積みの「ジーヴズの事件簿―才智縦横の巻」を購入することにした。

さらにところで、いきなり私見で恐縮だが、ミステリー界には愛すべき執事が3人いる。

1人はアイザック・アシモフの「黒後家蜘蛛の会」シリーズのヘンリー、そしてもう1人は本シリーズ、P・G・ウッドハウスのジーヴズシリーズのわれらがジーヴズである。

もちろん日本にも、最近メキメキと名をあげている執事がいる。
そう、その通り。東川篤哉の「謎解きはディナーの後で」の影山である。

ここでわたしは文藝春秋のもくろみが、本書をわざわざ2011年5月に刊行した戦略的事由に思い当たる。

やるな、文藝春秋め、ジーヴズを「謎解きはディナーの後で」にぶつけて来たな!

そして、ようやく本書「ジーヴズの事件簿―才智縦横の巻」の帯に踊るキャッチコピーの周到なミスデレクションが見えてくるのだ。

「機略と手際」。これが紳士に仕える私のモットーです。
"スーパー執事"ジーヴズが活躍する小説傑作選!
「ご主人とは馬のようなもので、調教が肝心なのです」

いかがだろう、お気付きだろうか?

ジーヴズがスーパー執事!?

と言うのは、細かい話で恐縮だが、本文ではジーヴズを"従僕"だと紹介しているのに、帯では"スーパー執事"と表記している。

つまりジーヴズは"従僕"ではなく"執事"である、とミスデレクションしているのだ。

おそるべし文藝春秋。

ところでところで、このジーヴズシリーズは、トニー・リングのあとがき『「ジーヴズの事件簿」刊行によせて』によると、本シリーズは、ローマ時代、ひょっとするとそれ以前に端を発する"賢明な奴隷と間抜けな主人"を描いた小説のバリエーションであるらしい。

いかがだろう、日本のぽっと出の執事を描いた作品を読むのも良いが、その執事に影響を与えているであろうジーヴズシリーズを読んでみるのも面白いのではないかな、と思う。

本エントリー冒頭の一節「ご同輩、あなたはついていらっしゃる」は、1990年代前半に放送されたテレビシリーズ「ジーヴズ&ウースター」でジーヴズを演じたスティーヴン・フライがウッドハウスの短篇集「おや、どうした!ーよりぬきP・G・ウッドハウス」の序文冒頭で語った一節。

なお、アイザック・アシモフの「黒後家蜘蛛の会」シリーズのヘンリーは執事ではなく給仕です。念の為。


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